10. 異世界
ギーガはなす術もなく穴ぐらに吸い込まれていった。身はちぎれるほど振り回され、気を失い、やがて地面に叩きつけられた。
機能が停止したかと思ったが、どうやら意識を取り戻した。身体は無事だが、リードンとは通信できなかった。
落ちたところは不思議な場所だった。
『異世界』であることは明白だった。
その目――アナライズ・アイが直ちに辺り一帯を解析し始める。すると封印されていた過去の記憶データが蘇ってくる。
それは有機質の、〝生命〟あふれる世界。元素レベルで自分とは異なる『動植物』の存在。
水と湖。樹木に色鮮やかな花。
鳥や魚、馬に羊、猿やリスに小さな虫たち。
そして花……の〝匂い〟を嗅ぐ、〝ヒト〟という生き物。
二本足で立って歩く、繊細な肌のヒトという生き物二人が静かに過ごしている。静かに笑って時を過ごしている。
解析は記憶回路から無限に沸き起こって、直ちに個々の存在を認識させた。まるで想像もしなかった、異次元世界に身を置かれた。
そして知らされた。この世界にラモンがいることを。
「ギーガ。私がわかるか?」
耳に届くその声は、
「ラモンさま! あなたはラモンさま?」