こんな筈じゃなかった、でも後悔しても後戻りは出来ない
今更後悔しても遅いのは解っている。
でも、戻れるならあの頃に戻りたい。
普通の学校生活に戻りたい。
あの楽しかった頃に…苦しい…先生やめ…て、段々意識が遠のいて行く。お父さんお母さんごめんなさい。
私は高校二年の歩実、勉強はちょっと苦手だけど、バトミントン部に入って頑張っているの。
体を動かす事が好きで、今度他校とのバトミントンの試合が有るから、遅くまで練習に励んでいるの。
そして、バトミントンの顧問の相羽先生が若くてイケメンで生徒の中には、相羽先生目当てでバトミントン部に入部する子も沢山居るの。
でもね、実は私と相羽先生は内緒で付き合っているの。
遅くまで練習していた私が足を挫いてしまい、
先生が車で病院に連れて行ってくれたのが切っ掛け。
そこから、何となく距離が縮まり付き合うようになったのだけど、やっぱり先生と生徒の関係はまずいから内緒なの。
そして、部活に恋に青春真っ只中だった私が突然転落して行く事になるなんて。
ある日先生と私がホテルに入る所をクラスメイトに見られてしまったの。
そのクラスメイトは噂話しが好きで、学校中に広がるのに時間は掛からなかった。
そして、先生と私は校長に呼ばれ噂が真実か問いただされたのだ。
勿論二人とも否定したが、とてもじゃないけど学校にいれる状態ではなかった。
そして、両親にも問いただされた私は無視して部屋に閉じこもった。
そして、先生と連絡を取り駆け落ちをする事にしたのだ。
最小限の荷物を持ち夜中にこっそり家を出て、
待ち合わせの駅前に向かった。
駅前には先生の車が止まっていて、私を暖かく出迎えてくれた。
その時の私はドラマのヒロインになった気分でワクワクしていたのだ。
そして、車で二時間程走って取り敢えずビジネスホテルに泊まる事にした。
でも、両親から捜索願いが出されていたら、見つかってしまう可能性が有るから同じ場所に長居は出来ずビジネスホテルを転々としていた。
でも、あんなに輝いてカッコ良く見えていた先生は無精髭をはやし、昼間はフラフラとパチンコに出掛けて行き、何でこんな人と駆け落ちをしてしまったのだろうと思うようになっていたのだ。
バトミントンの素振りをして腕が筋肉痛になって嘆いてた時、友達と好きなアイドルの話で盛り上がった時、学校帰りにタコ焼きをフゥフゥしながら食べた時、どれもこれもが楽しい思い出だった。
戻れるなら又普通の学校生活に戻りたい。
何故私はこんな道を選んでしまったのだろうか?
お父さんとお母さんに会いたい。
ドラマのヒロインになった気分でいた時の自分が何てバカだったのだろう。
でも、もう戻れない。
パチンコから不機嫌そうな顔で帰って来た先生に「家に帰りたい」と言ったら、先生は言ったんだ。「俺はもう教師の職を捨てて出て来たんだ、もう何も残っていないんだ、戻る場所も、ないんだ」と言いながら、私を押し倒し私の首に手を伸ばして来た。
「次のニュースです、今朝○○県のビジネスホテルで男女の遺体が発見されました。女性は首を締められた跡が有り、男性は首を吊っていたのをホテルの従業員が発見し通報したとの事です。警察は無理心中の可能性を視野に身元の確認を急いでいるとの事です。次のニュースです…」