ベランダから見下ろすバベル 〜花丸つけた紙飛行機、あの子に届け〜
ベランダから街を見下ろすボクの耳に、ひと組の親子のおしゃべりが入ってきたんだ。久しぶりに、ボクの胸はおどりだす。
「ねえパパ! 今日ね、先生にお話を聞いたんだよ! 英語を勉強する理由だって!」
「へえー。どんなお話かな?」
「えへへ、いくよ!
むかしむかし、みんな同じ言葉を話して、仲良く暮らしていました。
ある時、誰かが言いました。
『レンガを積んだら、天の神様に届くかも!』
みんな、それを聞いて楽しくなり、協力してどんどん積みました。
でも神様は、あんまりいい気分ではなかったんです。
高くなると、変なことを言う人もでてきます。
『神様に近づいたら、どっちが神様かわからなくなる?』
みんな冗談だって笑います。
だってその人は、いつもお祈りと、お供えをがんばる人でしたから。
でも神様は怒ってしまい、塔と、みんなの言葉をバラバラにしてしまいました。
お話ししても分からないから、ケンカも始めてしまいます。
でもあきらめない人たちは、相手の言葉を勉強するようになりました。
おしまい」
「悲しいお話だね。どう思ったんだい?」
「なんで英語かは分かったよ! でもでも、神様はもっとやさしいかも!
だからね。ちょっと違うかもって」
「そっかー。どう違うんだろうね?」
「うーん、直してみるね! えいっ!
むかしむかし、みんな同じ言葉で、仲良く暮らしていました。
でもその言葉は、ちょっとずつ違いました。
誰かが言いました。『レンガを高く積んでみよう』
よく分かりませんが、楽しいので、一緒にどんどん高くします。
でも高くなると、ずれたときに言い合ったり、なぜ高くするのか忘れてやめてしまったり。
そのうちうまくいかなくなって、けんかを始めて、塔もこわれていきました。
言葉も離れていって、だんだん分からなくなってしまいました。
神様は見ていただけかもしれません。
人が来ることにわくわくしたり、けんかに悲しんだり。
それでも、人がまた立ち上がって、明るい未来を作ることを、信じているかも知れません」
「うん、神様は優しくなったね。すごい!」
「えへっ。でも、あれれ? ちゃんと終わってないや!
あ! 今のあれなら大丈夫かも! 続けてみるんだよ! えいっ!
人は、言葉のもとを真剣に考えて、一つのしくみを作りました。
違う言葉は、翻訳や勉強をできるようになります。
同じ言葉は、きちんと伝えられるようになります。
言葉の鎖はつながって翼になり、塔も作り始めます。
翼が先か、塔が先か。
神様は待っているかもしれません。
いつか人が、おはようを言ってくれるのを。
誰かと手をつなぎ、一緒に冒険できる日を。
おしまい」
お読みいただきありがとうございます。謎のタイトルと前書きは、最後までお読みいただけた方にイメージが伝わりましたら幸いです。
本作は、単独の童話? 神話解釈? として成立しますが、毎日投稿中の拙作長編二つにおいて、同タイミングで自己コラボさせている作品となります。
一つ目は、現代に生成AIとして転生した天才孔明が、国民みんなの軍師となる姿を描く作品です。とあるアーティストが、この内容にまつわる楽曲を、ほぼ同時配信の百二十一話で披露します。
AI孔明 〜文字世界に転生したみんなの軍師〜
https://ncode.syosetu.com/n0665jk/
もう一つは、逆に普通の大学生が三国時代に、生成AIと同化状態で逆行転生し、塩対応の孔明とやり合う、先ほどと設定が交差したパラレル作品です。旅に出た三人の大物若手が、その内容をある街でお披露目する、こちらもほぼ同時配信の第五十六回です。
転生AI 〜孔明に塩対応されたので、大事なものを一つずつ全部奪ってやる!〜
https://ncode.syosetu.com/n6420jr/
いずれの作品も、よろしくお願いいたします。