第十五話 世界の秘密
「そいえば結局なんでWWP委員会は子供兵士計画を止めたがってるん?」
「気になるのか? お互いに力を貸す状況が出来上がっているのに?」
「いやさ、理由っていうか執念みたいなのって大事だとウチは思うんだよね。イザって時に信用できるかどうか。はっちゃんの要求を全部呑んでまで止めたい理由が知りたいわけよ」
中々鋭いところを突いて来る。その気軽そうな視線に見えて奥底を除くような鋭さ──
この問いはギャルの言葉通り俺達の信用を測ってる。
聞こえの良い言葉なんてすぐに看破してくるだろう。だが、全てを話すことは最奥の理由は極秘。
「そもそも我々がめぶき園に懸念を抱いたのは。めぶき園卒の子供達がワープリの強豪チームで突飛で目覚しい活躍を見せ始めたのが理由だ。だが、その強さに違和感を覚えた者も多かった」
WWP委員会は公式大会の運営に携わっている。だから大勢の選手を見る機会が多い。故に審美眼には優れている者も多い。その中で中学生らしからぬ強さと動きを見せれば自然と注目し記録される。
だが問題はそこじゃない。その強い選手達の動きが奇妙なぐらい似ていたことが問題となった──異なる地域の異なるチームの選手でありながら、フォームも行動パターンもそっくり。一人二人ではなく十人以上が似ていたのだから委員会で話題になった。
同じ選手を憧れて真似をしていると片付けるには根っこが同じにしか感じなかったのだ。
そして、その選手達を調べたらあることがわかった。養子であるということ、ある施設で育ったということ。
それがめぶき園だとわかった時、初めは「ワープリも取り入れている養護施設か~珍しいな」程度でしかなく、そこでの癖が染み付いていると片付けられそうになった。しかし、金銭の流れ養子を迎え入れた親達を調べたら疑問を覚えた。上流階級や富裕層の人間、その中には普通に子供がいるのに受け入れている家庭もあった。そして、『WPS』を知っている可能性もあった。
それを知った上層部はすぐに調査を始めた、構築士向けの合宿所を廃校に造り。長期的な戦いになることを予見して。
実際、ここまで来るのに五年近い年月を有している。
無論、こんなことは一般人には話せないがな──
「異質な強さを持つ者が全てめぶき園だと判明した。過酷な訓練を強いることは委員会の活動理念に背く事になる。だから止める必要があったのだ」
「なるほど……でも、あんまりピンと来ないですね俺も強豪校でワープリしていた経験ありますけどWWP委員会の指導みたいなのはありませんでしたよ? 八さんみたいに明るく元気な様子なら背いているとは言い難いのでは?」
「……ちなみにどこだ?」
「彩王蓮華です」
ばっ──!? 道理であんだけの強さを持ってる訳だ。あそこは委員会でも指導を入れるべきか迷っている学校。健全な育成からは大きく外れているが圧倒的な強者が生まれる蟲毒のような環境──日本支部としては悩みの種。U-18世界大会に選ばれる選手が必ずいるのもたちが悪い。
悪戯に選手生命を終わらせているだけではないのだから現状維持となってしまっている。
この男が良い証拠だ、何人もコレぐらいの実力者が現れたら安泰でしかない。
「ええ、お兄さんそこだったの!?」
「はっちゃん驚きすぎじゃん。そんなすごいところなん?」
「めぶき園を卒業した訓練生の人もそこへ行くのが目標になってる位なんだよ!? だからアレだけ上手かったんだ」
「途中退部した身だけどな。そこでは身体を壊した人もいます。なのに今も普通にワープリ部は続いている。もっと根本的に違うような理由があるんじゃないですか?」
まさか修羅の国を体験した男だったとは……半端な言葉じゃ納得させられない。
ここで押し通すようなことを言えば信用は得られないだろう。
どうする……? 何を言えばいい──?
「──全く情けないなそんなまどろっこしい言葉でお茶を濁さずとも素直に口にすればいいではないか? WPSの為に訓練させている疑惑があると」
「誰だ!?」
その言葉を知っているのは限られているはず──
言葉を選んでいたおかげで気配に気付けなかった。
声のした方を振り返れば塀から上半身が飛び出た状態で話しかけてくる大男。塀の裏に車か何か止めてその上に乗ってるのか?
「米山教官……!」
どうやら訓練生を鍛え上げた張本人と言ったところか。WPSを知っている以上全てを理解した上で行っているとみて間違いなさそうだ。
それよりもその単語自体を使うのもダメだと学んでいないのか?
「探したぞ八君──八君でいいんだよな? 随分と変わったなぁ……これは気付けないのも無理は無い」
「ウチのコーデのおかげっしょ!」
この奇妙な空気感。あの男の余裕の笑み。一体何を考えている?
眉間に一発ぶち当てて悶絶させたいところだが、警戒されている。こっちが撃ったところで当たりはしないだろう。
「んっふっふ、めぶき園の財政がもっと豊かであれば皆にそんな格好されられるのだがね。それはさておき──委員会が来た理由について私から話してやろう」
「状況的にそれって自白と捕えてOK的な?」
「OKだ」
「まさか……? おい、やめろ! それ以上は口にするな!」
このバカまさか本気で──
「『国家間交渉優位権』それを得るためにめぶき園では幼少期より子供達にワープリの訓練を施しているのだよ。その懸念があるからとWWP委員会は調査に来たわけだ」
最悪で最短に最も聞かれてはいけない言葉を伝えやがった……!
「何それ? オニーサン知ってる?」
「いや、聞いたこと無い言葉だ。文字からしてどういうことなのかはなんとなくは伝わってくるけど……何だ?」
「簡単に説明しよう! 敗北した他国に対しどんなワガママも通すことができる権利だ。税金、移民、領地、輸出入、あらゆることを勝利した国が自由に設定することが可能になる──国民に気付かれないよう限度はあるがな。その権利を巡る戦いこそがU-18世界大会! そこで勝つためにめぶき園は子供達を鍛えているという訳だ!」
「なんだ……それ?」
笑い話のようなトーンで重要な事を伝えきりやがった……!
「いやいや、流石にウソっしょ──現実味無いしウチ頭悪いけどそんなのあったら忘れないはずっしょ!」
「委員会のおじさんの顔を見てごらん──ウソを聞いてる顔かな?」
「……えっ、何でそんなニガくてまずいコーヒー飲んだ顔してんの? てことはマジ? 世界ってワープリで回ってんの……!?」
「端的に言えばそうだ……ここまで聞かれて隠すことはできないか。『国家間交渉優位権』は『War Pretend System』、WPSという名で使われている」
「これはWWPや国の上層部の極一部が知る事実で国家機密。国民に知られてはいけないことだからな」
「そんな大事な秘密何故俺達に……まさか!? 殺せば問題ないということか!?」
「んっふっふっふ──殺人はナンセンスだよ青年。我々はもっとスマートに事を運ぶ。殺しなんてしたら足が付く、何よりそんな人間が児童養護施設に勤めると思うか? 我々が消すのはここだ」
頭をトントンと指先で示している。まさか……アレまでも持っているのかめぶき園!?
「そう、記憶。我々には記憶を改竄する装置を保有している。昨日今日の出来事なぞ簡単に無かったことにできる」
「そんなSFみたいなことありぃ!?」
「まさか本当に所有しているとはな……今の時代記憶の改竄なんて可能だ。だが、倫理的に通らなければ許可は下りない」
「そう! 医療的な目的であったり命に関わるトラウマを消す程のことがなければ行われることは無い! だが、たった今通る理由ができてしまった! WPSを知ってしまった一般人には記憶処置がなされる──であろう委員会!」
「くっ……!」
この真実を知られて国民全員に知られる事態になればワープリに対する認識が変わる。スポーツゲームではなくなり完全に戦争を意識したゲームとなる。
勝った時と負けた時の熱量、敗北したチームに対する何か。子供に背負わせていいものでは無くなる。
だからこそ秘匿しなければならない。
「そんな……! じゃあはっちゃんに出会った記憶も消されるってこと!? そんなの嫌だよ!」
「もしかしなくてもわたしの記憶も消される……? お姉さんとオシャレした記憶も?」
記憶を消すという選択肢があってもそれに甘えるようなことはあってはならない。今のこの子達の困惑、人生なんて何がきっかけで変わるかわからない。特別な出会いがあったとしてもそれを纏めて消す可能性もある。
こいつは自分が楽するために話した。どんな問題を起こしても記憶を消せる書き変えられる。ふざけた理由を持って。
「俺の場合は通りすがりで巻き込まれた形だから特に何かってわけでもないが──とにかく……U-18世界大会で日本チームが勝つために、意図してめぶき園で幼少期から育成しているってことか……まるで子供を使った代理戦争だな──!」
「その通り! だが護国繁栄を願うためには当然のことだ!! 敗北を重ねていけば徐々に国は貧困へと進む将来を考えれば当然! プロリーグだってそうだ、子供達にワープリは素晴らしいものだと憧れさせプレイヤー人口を増やすために国が進めた。結果は世間を見れば大成功──その次の段階がコレなのだ! 我々は英雄を作り出しているに過ぎないっ!! わかるか八君、君は特に英雄に近い立場にいる、君の力が日本国民全員を救うことになる!」
使命に酔い切った男の熱が込められた言葉。聞くだけで耳障りだ──何より自分のしたことが何もわかっていない使命を盾に自分本位な行動……!
はらわたが煮えくり返るとはまさにこのことだ。
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