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色彩のエクリプス  作者: いちこ
2.対アルティスディア同盟締結
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第27話 エドワードの策略

カルディア歴335年9月。

セリアディスの使節団としてウェスティアへと向かうノエル達。セリアディスの国内を安全に通過し、グリーンデールへと向かう一行。


商人に偽装したレオン、アリア、エレナを守る形でノエルとソフィアが随伴するが、その行く手をアルティスディア軍のある者達が張っていた。

 イーストガードフォートを抜け、アルティスディアの領内へと入った一行。まずはグリーンデールへと向かう。馬車で2日間かけての旅路だ。道中の野営ではノエルの感知能力を活かして安全に進むことが出来た。だが、グリーンデールに着く直後に想定外の事態が起こる。




「待て、あれは…アルティスディア軍の検問か?」

「なんであんなところで検問なんてやっているのよ…面倒な事にならないと良いけど」


 レオンとアリアは検問に警戒しつつもそのまま商人として通過するつもりだ。ノエル達もそれに賛同し街道をそのまま進む。ただ、エレナは荷物に隠れさせた。アルティスディア軍には顔が割れている上、その特徴的な目はどんな事をしても隠せない。


 検問を行っている者達の隊長と思われる全身鎧の騎士が声を掛けてきた。


「待て、お前たち。セリアディスから来た者だな。目的はなんだ?」

「俺たちは仕入れに向かう所ですよ」


「そうか。商人2人に冒険者の護衛…数が少ないな」

「この方たちは有名な冒険者さんたちでね、腕を買って依頼したんですよ」

「そうか。『エクリプス』の二人は確かにアルティスディアでも聞く」


 なぜこの男はノエル達を知っているのか?レオンは表情に出さず思案する。だがその声を聞いたエレナは内心恐怖した。その声の主はあのR(ルーン)T(タクティクス)U(ユニット)の大隊長である『エドワード・トリステイン』だった。


「エレナ・アッシュフォード!『命令を遂行せよ』」


 その言葉を聞いた瞬間、エレナは徐に姿を現す。


「エレナ・アッシュフォード!『今回の命令はその4人の殺害だ』」

「…分かりました」


 エレナはショートソードを抜き一番近くに居たソフィアに斬りかかる。その剣筋に迷いは一切なくソフィア目掛けて振り下ろされる。間一髪でノエルがこれを防いだが、エレナのその剣に殺気は一切感じられない。


「全員、戦闘態勢!我が国に侵入した敵を排除する!」

「ちょっとエレナ!どうしたの!?」


 予め荷馬車のすぐ手の届くところに武器を隠していたレオンとアリア。アリアは武器を手にしながらエレナの問いかけるがその答えは返ってこない。これは魔法の類なのかエレナが裏切ったのか?前者の可能性が高いと判断したノエルはエレナの腹部を思い切り蹴飛ばし距離を取る。


「ソフィア!エレナは何らかの魔法の支配下にある可能性がある。傷付けずに解除できるかやってみろ」

「うん!…()()()()()()!」


 ノエルの言葉を正確にくみ取ったソフィアは今までノエルに叩き込まれてきた操気法を利用し、回復魔法に自らの気を練り込みエレナの体内に注ぎ込むイメージでエレナを癒す。腹部を蹴られてなお痛む様子を見せなかったエレナはその癒しの光を受けた瞬間、苦悶し始めた。


「最優先排除目標は白い女だ!」


 エドワードのその言葉にノエルは激昂する。咄嗟に前に出てRTUの隊員8名とエドワードに向かっていった。殺気を放ち迫るその姿にRTUの隊員は一瞬怯むが、すぐ立ち直りソフィアに向け魔法を放つ。その魔力を感じ取り魔法の射線上に跳んだノエルは複数の魔法を次々と太刀(天斬)小太刀(命断)で散らした。


 しかしその行為は空中の無防備な姿を晒す事になる。エドワードはこれを見逃さず、その着地前の無防備な瞬間を狙った切り上げの攻撃を放つ。ノエルは二刀で防ごうとするも武器を弾き飛ばされその身体を斜めに斬り割かれ吹き飛ばされてしまった。


「ノエル!」

「っく!俺は後回しだ!エレナを抑えておけ、お前しか出来ない!」


 ソフィアはノエルのその様子に気が動転してしまう。しかしノエルの言葉に従いエレナの異常を解くために集中をした。依然苦悶し続けているエレナはその場に膝を付き頭を抱ええている。


「青いな小僧。だがそれがお前の敗因だ、大人しく死を受け入れるがいい!」


 エドワードは歴戦の猛者、決して最後の一撃も油断はしない。間合いを詰め大振りの攻撃はせず胴へ向けての突きを放つ。普通であればそのまま放置していても戦えない傷を与えたが、この男は油断できないと勘が告げていた。そしてエドワードの勘は正しかった。彼の視界から一瞬ノエルが消え、凄まじいスピードで遠のいていく。


 遅れて腹部から全身に広がる痛みを感じたエドワードは自分に起きた事を理解した。ノエルが突きを躱しエドワードの腹部に拳の一撃を放っていた。その拳には気が練り込まれており、鎧を貫通してエドワードの全身にダメージを広げた上でその身体を吹き飛ばすほどの一撃だった。


(何だこの攻撃は?こいつは魔法が使えるのか?)


 エドワードは吹き飛ばされた体勢を立て直しながらも、その威力と効果にただ驚いていた。そしてノエルはRTUの隊員たちと無手で戦いながらソフィアへ魔法を放たれる事を阻止していた。


 やはりこの男は尋常の者ではない。今ここで消さなければ近い将来必ずアルティスディアの脅威となりえる。そう予感させるに十分な姿だ。




 戦線にレオンとアリアも加わり、ソフィアを狙うに狙えなくなったRTUの隊員。魔法を放とうと隙を見せればやられる、そう確信させるほどの気迫と殺意をノエルは放っていた。そして事実、その隙を見せた隊員1人が首を蹴りで叩き折られ死亡している。エドワードは前に出ながらソフィアに向けて攻撃を仕掛ける。


「エクスプロージョン!」


 その魔法を察知したノエルは足に気を練り、軽く飛ぶとこれを垂直に蹴り上げ相殺した。絡めとるつもりで気を練ったが、エドワードのそれは練度が非常に高く如何にノエルと言えども相殺するのが精一杯だった。


 エドワードはその体制と取ったノエルに大剣を横薙ぎし、その胴を狙う。この攻撃を蹴り上げた脚で降ろす事で叩き落し、逆の脚は膝を畳んで避けた。エドワードの大剣はそのまま身体を一回転させて『ドライブ』で加速させ同方向の横薙ぎを見舞う。ノエルは大剣を蹴った時の反動でまだ宙に居たが、畳んだ方の脚でエドワードの肩を蹴り安全距離を取った。




 傷を負い無手でもなおノエルはエドワードの攻撃を避け、ぎりぎりの戦いの中で反撃の隙を狙いながら魔法の妨害を続ける。戦況は不利に働いておりレオンとアリアもRTUの隊員を複数相手にするのは流石に苦戦していた。


 ノエルの加勢はおろか少しの油断が死に直結し兼ねない状況だ。そしてノエルがエドワードに抑えられた事で余裕が生まれたRTUの隊員がソフィアに向け魔法を放つ。


「フロストシャード!」


 その魔法は『フロストペイン』の上位にあたる魔法で凍傷ダメージと氷の破片を直接相手に浴びせる魔法だ。その攻撃割って入る為にまたも跳躍せざるを得ない状況となったノエル。


 そしてそれは無防備な姿をエドワードに晒す事となる。今度こそ絶体絶命かと思えたその時、辺りに閃光が走る。それはノエルの後方から、ソフィアが放った『ルクスバースト』だ。




「ヒールライト!」


 その癒しの光はノエルを包み込む。新しい杖の効果で高められた癒しの力はノエルを瞬時に完治させた。しかしそれはソフィアにとっても危険な賭けだ。


 なぜなら未だエレナが精神支配から逃れられていない。エレナは苦悶した状況から脱し動けるようになると、修練によって身体に染み込んだ動きで距離を詰めソフィアを脳天から斬るべくその刃を振り下ろした。エドワードはその瞬間を見て脅威の一つの排除に成功したと確信した。

DALL-E3作のエドワード・トリステインのイメージです。

実際はミスリル製の兜を被ってますが、被っている姿と外した姿を同時に描いてもらえませんでした(´・ω・`)

挿絵(By みてみん)

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