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超短編集(愛)

クリスマスのプレゼント

作者: M

クリスマスに関する重大なネタバレが含まれます。小さなお子様には読ませないようにしてください。


 年末進行で、めいっぱいの残業をさせられて帰ってきた。

 赤と緑と白で飾り付けられた街、イルミネーションで照らされる夜空、こんな時間でも普段より多い人通り。

 とは言っても、外の寒さはとても厳しくて、自分の家に灯る明かりの暖かさに癒される。


「お帰りなさい。」


 珍しく妻が玄関まで出迎えてくれた。


「子どもはもう寝た?」

「とっくにね。パパのケーキは残してくれてるわよ。」


 ダイニングテーブルには、温めなおした晩餐と小さなショートケーキが置いてあった。


「遅くまで、お疲れ様。」

「ありがとう。メリークリスマス。」


 そう言ってパンをほおばる。寒さで忘れていた空腹が戻ってきた。

 ちょっと豪華なおかずを食べ進める。お腹が膨れて、体が暖まってきた。後はケーキだけ。


「食べたら、アレお願いできる? その後で話もあるし。」


 妻の指差す先には、ラッピングされたプレゼントと赤い帽子が置いてある。


「分かったよ。でもさあ…」


 箸でショートケーキのいちごを横によけて、ケーキを倒す。


「僕が一生懸命働いて買ったのに、お礼を言われるのはサンタなんだぜ。おかしくない?」

「プレゼントの事?」

「そう。」


 寝かせたケーキの先の方から箸を入れて食べる。クリームの甘さが脳の疲れを癒やしていく。


「ふふっ。そんな事言わないの。」

「子どもには『嘘を吐いたらダメ』って教えてるのに、サンタに関しては『嘘を吐かないとダメ』って言う空気。なんなんだろうね。」


 多分、仕事で疲れてるから、こんな後ろ向きな考えが出てくるんだろうな、と思いつつも話は止まらない。


「世界中が、子供を騙すためには嘘を吐いて良いっておかしくない?」

「そう?」

「どっかの国の軍がサンタを追跡したり、保健機関がサンタは感染しない宣言したり。」

「そんなのあったわね。」

「アニメで、サンタは居ないって話やると炎上するんだぜ。」


 妻はそんな僕を見てニコニコしていた。毎年の事だから慣れているのだろう。


「ほら。クリスマスでもないと買ってあげられないじゃない。」

「誕生日プレゼントあるじゃん。あれで充分だよ。」

「そうかしら? あなたの誕生日もうすぐね。」


 ケーキの最後の一切れを食べる。残るはいちごだけ。


「そう! 誕生日がクリスマスの直後だから、プレゼントまとめられてさあ…。」

「あなたがクリスマスを嫌う原因が分かったわ。」


 妻は笑った。


「じゃあプレゼントお願いね。」


 最後にいちごを頬張ると、妻が皿と箸を片付けた。


 赤い帽子を被り、プレゼントを持って寝室へ。寝ている娘の顔を覗きに行く。

 廊下の灯りだけの薄暗い部屋の中、娘はピクリとも動かない。

 俺は少し緊張して、娘の顔の近くまで寄ってみる。すると、静かな寝息が聞こえてきた。

 安心した。


「メリークリスマス。」


 聞こえないくらいの小さな声で言うと、枕元にプレゼントを置く。

 その手に何かが当たって、カサッと音を立てた。


 紙?

 手紙だ。


 その手紙を持って、静かに部屋を出てドアを閉める。

 廊下で手紙を開くと、つたない字で書いてある。


『サンタさんおつかれさま みんなにブレゼントがんばてね れたしはやさしいおねちやんになるよ ありがとう』


 急いで、ダイニングで待っている妻に手紙を見せる。


「これ!」

「ふふ。晩御飯食べる前に何か書いてたんだけど、見せてくれなかったのよね。」

「すごくない? あの子は天才だよ。」

「そうね。」


 妻はまた笑った。


「お礼の手紙だなんて、嬉しいなあ。」

「あら、あなた宛てじゃないわ。サンタさん宛てよ。」

「そうだね、確かにそうだね。」


 それでも、嫌ではなかった。

 いっぱい字が書けるようになったんだなぁ、と娘の成長を喜ぶ。嬉しい。 


「パパからのプレゼントじゃ、ここまで感謝してくれないかもよ。当たり前過ぎて。」

「そうかもな。サンタも悪くない。」

「さっきまでの主張はどこいったのかしら。」

「まあいいじゃん。」


 今度は二人で笑った。


「優しい子になるね。」

「きっと、いいお姉ちゃんになるわ。」


 そう言うと、妻はテーブルに手帳を出した。


「なにこれ?」

「今度は、サンタさんから私たちへのプレゼント。」


 見ると、母子手帳だった。

 手帳はまだ新しく、開くと新しい紙の匂いがした。そして、黒いエコーの写真が挟まっていた。

 娘の時にも見た、新しい命の証。

 手帳の表紙をもう一度見る。子の名前が書かれていない新しい手帳。


「本当に?」

「今日、三田医院へ行ったの。あの子も知ってるわ。」

「あ、だから手紙に『おねちやん』って書いてたのか。やった、やったじゃん!」


 今年のクリスマスは良い事がいっぱいだ。こんなに嬉しいクリスマスは人生で初めてかもしれない。


「ありがとう。」

「こちらこそ、ありがとう。」


 二人で、また笑った。


サンタなんて居ない

んだよ。全部、大人

たちが考えた嘘。皆

は騙されてるから、

いい子にして笑って

るんだよ。絶対に。

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