第7話 鳥と狼と猫耳と
「それじゃあ、始めるぞ」
「おう、お前は前に出るなよ?」
さて、自分は今、例の鈴の検証に来ている。ついでに、有料設定にした配信中である。そこのコメント、姫とか言うんじゃありません!その通りなんだから!で、場所は飛行系が良く来る山の一角。実は配信前に一度試したのだが、コレ、もしかしてイケるんじゃね?という事である実験を行うのだ。
「さて、セーフティゾーンに居る内に視聴者にも説明すると、飛行系は基本このゲームにおける天敵と言ってもいい。いや、断言しても良いだろう」
ラインのクランメンバーがセーフティゾーンで前衛と後衛で準備中にそう言うとコメントにも『確かにな』等が一斉に埋まる。何故か?単純だ。人は鳥になれない。これである。魔王戦で使ったレビテーションも人を一時的に飛ばすだけで、かけられた本人が自由自在に動けるわけではない。故に、飛行に関しては飛行系モンスターに軍配が上がる訳だ。
「よし、準備完了したな!全隊待機のままで前進、後衛部隊は弓と射撃を一応構えておいてくれ!それとウッドをしっかり任せる!」
おィイイイ!最後はいらないんじゃないですかねえ?いや、万一もあるけど、まんま姫では?コメントにも『ウッド姫降臨!www』とか『さす姫www』とか流れてるやんけ!いや、要りますけど!!!
「よし、ライン、相手アレで良いんだよな?」
「ああ、アレだな。ソニックバードの親玉、タイフーン・バード。見ての通り、ソニックバードを配下として、狩れたのは高レベルの魔術師が連隊居なければ無理っていうフィールド徘徊型ボスだ」
『ホント、クソボス』『セーフティゾーンからも見えてても、しばらくは仕掛けてこないクソ徘徊型ボス』『自分自身強い癖にスキが無ければ超高空で待機する。ホントクソボス』なるほど、セーフティゾーンを出たが、即座に仕掛けてこずに観察しているようにも見える。しかも、槍は勿論、弓が届かないような高度だ。自分達が見えているのはゲーム内の撮影モードで拡大しているからである。
「よし、行くぞ」
龍の鈴をチリンと鳴らす。
「よし、タンカー隊以外各自は竹槍を装備、構え!」
しばらくすると、タイフーン・バードと同じ位置に高速で接近する何か、まあ、鈴で呼ばれたドラゴンが来た。流石にコレには予想外だったのかモロに体当たりを食らい、落ちてくるタイフーン・バードにラインとリームが投げた竹槍が突き刺さる。更に慌ててボスを守ろうとするソニックバードだが、当然ながら・・・
「竹槍隊は取り巻きに向けて投擲始め!攻撃部隊は俺に続け!ボスと落ちてきたクソ鳥を仕留めるぞ!」
コメントではかなりの討伐手順の短縮になっているらしい。タイフーンバード討伐の墜落記録更新!とか出てる辺り、龍の鈴と竹槍は売れるかな?しかし、呼んだら来るのが結構でかいドラゴンだったから、案外、どこかで戦う事になるんだろうかね、アレ?実は一度配信無しのクラン専用フィールドで試してあるのだが、最前線組も見た事が無いドラゴンだったらしい。
「このように、呼んだら来るだけですが活用方法もあるようですね」
『神アイテム!』『やべー!今すぐ稼ぎに行かんと!』『これ、いくらですか、言い値を出す!』うん、余程、この敵に関してはストレスが溜まっていたらしい。滅多に緩んだ顔をしないレインが笑顔な辺り、クソボスレベルの高さが分かる。
「こちらの竹槍と龍の鈴の価格は後程話し合ってからの提供になります。後、魔石はレアなので提供をお願いすると思いますので、悪しからず」
とりあえず、コメントに落ち着いてもらい、討伐組の方にカメラを回す。タイフーン・バードは飛ぼうとするが。墜落のデバフは数分持つらしく、飛べずに討伐組の一撃で倒れた。なるほど、墜落したら、すぐ復帰ってのも不自然だからだろうか?
そうなると、これまでの戦い方から、かなり違った戦い方も出てくるかもしれない。金額は真面目にライン達と話し合わないとな。
「こうなると、あんま注目してなくて、作らなかった奴も気になってきたなあ・・・」
試しに猫耳を装着してみる。ん?んんんんんんんん?
コメントに『猫耳ウッド様www』とか流れてきたが、そんな場合ではない。これは、なるほど、ネタであり、ネタでは無い装備になるな。
「リーム、前方の右方向から接近してくる獣の匂いする、その鳥と連携するような、そういうモンスター居るか!」
「居る!・・・て、それの効果か!ああ、ウルフ系の奴だ、俺達はハイエナって呼んでるマウンテンウルフって奴だ!」
「いや、マジすげえ、聞こえるし、匂いまで分かるんだよ。あ、左右に別れた」
「いつもはクソ鳥と連携するけど、苦戦してる様子が無いから、見えない位置から包囲する気ね!距離分かる?」
レインの言葉に更に匂いを嗅いでみる。ふむふむ・・・
「奥に見える太い木の辺りで匂いが別れた、アレだ」
「よし、レインとウッドは中央でクソ鳥にとどめ刺してくれ!リームは右、左は俺だ!数は分かるか!」
「ばっちり!左に20、右に15だ!」
勿論だが、数も分かる。コメントには『え?マジ便利じゃない?』『ファッ?!猫耳だけに猫並みなのか?!』『ワオ、めっちゃ使えそう』『レンジャー取るより楽って一体・・・』を眺めていると、不意打ちが来ないならば相手ではないようでサクサクとウルフ達は倒されていた。
「ん?」
「どうした?」
「あれ、これ、猫の声じゃね?レイン、付いてきてくれ」
戦闘終了後、外そうとすると、ウルフが来た方向とは違う方から猫の声が聞こえたので、念の為、回復系統が使えるレインに付いてきてもらう。
すると、茂みの奥に弱っている猫を見つけた。いや、猫と言うかこれって・・・
「レイン、これって」
「ええ、私も驚きだわ。ウッド配信止めて。長靴を履いた猫・・・・・・ケット・シーね」
レインがそういうので、配信を終了状態にする。コメントに『そんな~』とか出たけど、流石にコレは何かしらのフラグを踏んだと分かる。
『人間か。私の隠遁術も弱ったからか。いや、お前から同じ匂いを感じる』
「ああ、これはアクセサリーで、ん、どうした、レイン?」
「え?ウッド、貴方、この猫が喋ってる内容分かるの?」
「え?」
「え?」
『どうした?』
<<シークレットクエスト ケット・シーの国への道が解放されました>>
ファッ?!?!?!
猫耳モードで隠しクエスト!って、割とありそうだと思いません?