第4話 そして時間は戻る&イベント後の運営の一幕
そして、話は現在に戻る訳だ。魔王配下の出した映像は消えてしまったが、一応、プレイヤー用のダメージログには残っている。ふむふむ、防御無視ダメージで命と引き換えなだけであって結構なダメージが出ている。眷属の配下も大半巻き込んでることから、かなりの広範囲にまで爆発が行くようだ。もうちょい、魔王から離れておこう。
「すっげえな、4桁ダメージの連続で街に突撃してきた魔物が街の前で全部死んでる。貫通ダメージも出てる?」
「体力とか関係あるのかな?」
「その辺、聞いてみないと分からないわね」
「ところで、君等、攻撃参加しなくて良いの?」
「「「投げナイフ投げた。適当な魔物に当てたから、後はあの戦場に居たくない」」」
順に自分、ライン、リーム、レイン、自分以外の全員の順である。ちなみに、自分は鍛冶が重要なので、別にイベント外でも構わんという事で、文字通り、見に来ただけである。なお、彼等が居たくないと言わせる戦場とはどうなってるかと言うと・・・
「ロケットパンチを食らえええええい!」
「ちょっ!何そ、ぐはあああああ!」
ブチィイイイ!と言う音と共に、いや、良く見ると肉片もまき散らして飛んで行ったパンチが腹心っぽい魔物の顔にぶち当たったり・・・
「墳ッ!」
「ふっ、受け止めたぞ、人げ・・・・・・ぎゃああああ!」
筋骨隆々な魔物が反撃に移ろうとするとズドム!っと嫌な音がしてパイルバンカーが突き刺さり・・・そのパイルバンカー目掛けて、必要能力値足りないジェットハンマー使いが何人も殺到し、魔物ごとお星様になった。
「なんなのだ、これは何なのだぁ?!ヒィ、来るな、来るなぁ!」
そんなカオスな戦場の一方で魔王が黒パン一丁の自爆スイッチ勢と言う名の配信勢にじりじり追い詰められていた。うん、あそこに入りたくないよね、分かるよ。ちなみに、眷属を倒してた配信勢達の黒パンもそうだが、アレ、実はネタ装備なのである。
不壊の黒パン:防具が一切装備出来なくなる代わりにどんなダメージであっても、死亡しても、この装備とストレージ内のアイテムは壊れない 種別:アクセサリー
通常、死亡するとデスペナとしてアイテムが無くなったり、防具が欠損したりするのだが、これは防具が装備出来なくなる、つまり守備力のへったくれも無い状態になる代わりに、アイテムが無くならないようになる訳で、しかも、これ自体壊れないので自爆スイッチと相性が抜群な訳だ。
まあ、それと引き換えに羞恥心をリリースするわけだから、これぐらいのメリットは有りだろう。しかも、街の中で装備したら、間違いなく衛兵を呼ばれるだろう。うん、作っておいてなんだけど、完売して良かった。
「来るな、来るなぁああ!・・・・・・あ」
あ、気づいた。でも、それは多分、命取りの一手なんだよなあ。
「ふはははは!空ならば、貴様等も取り付けまい!これで我が勝利よぉ!」
そう、空を飛べば、ほぼ無防備とも言える配信組もとい、自爆組なのだが、確かにここに自分、いや、自分のクランが居なければ全滅だった・・・かもしれない。まあ、アレがあるからね。
魔王が空を飛んだと同時にラインがダッシュ。うん、ここまで言えば、何するか分かるよね?
「レビテーション!」
あらかじめ、呪文詠唱していたレインが唱えると、ラインが魔王が居る辺りまでジャンプする。うん、終わったな、魔王。
「ふはははは!空中では、貴様は動けまい、覚悟せ・・・・・・いや、何それ?」
確かにジャンプするだけでは決定打にはならない。が、ストレージから出てくるものを見て、魔王は絶句、見ていたプレイヤー達は動画録画モードに入った。まあ、絵面が凄いからね、アレ。
リアルを売りにしているので、ストレージから 装備せずに 出した物は勢いよく出すかそっと出すかの選択肢がある、そっと出す場合は地面に慣性に従って落ち、勢い良く出す場合は投擲したかのように決めた方に飛んで行くのでプレイヤーの間では疑似投擲ストレージと呼ばれている。
「お披露目にしても派手ねえ」
「だよね。この後、多分デバッグで色々修正されそうだからダメージログ取っておこうよ」
うん、なんて言うか、レインとリームの言う通り、こう、魔王も防ごうと魔法を唱えたけど。それごと武器が魔王に突き刺さ・・・いや、こう、魔王も体がでかいのだが・・・・真っ二つと言うより、打撃武器受けたみたいに吹っ飛んで行った。当然ダメージはカンストなのでHPバーは一気に消えていった。
同時にこの武器が地上に当たるとヤバそうなので、ラインは攻撃した時よりも急いで剣をストレージに収納した。まあ、流石に星が割れるとかは無いと思うけど、念の為・・・ね?
「おのれぇええええええええええ!」
ロープレ独特の光の粒子になっていく声とは裏腹に物悲しげな顔の魔王を見て、レイドイベントは終わったのだった。多分、今、運営も大慌てなんだろうなあ。
<<翌日 ファンタジーゲートオンライン運営>>
「こういう結果になったかあ・・・」
「当初の予定をメッチャ裏切ったなあ。ああ、デバッグ作業地獄の始まりだぁ・・・」
「おかしい、ゲーム内で信頼を上げて格好良い装備をしたプレイヤーが魔王に苦戦しながらも勝利するイベントだったはず!」
「黒ビキニパンツの男の映像の編集せなあかんのか。嫌だぁ・・・・・・」
「誰だよ、あんなスキルを入れたの!」
『うちの社長』
「なんでやねん!」
「どうして、社長、社長ぉおおおおお!」
阿鼻叫喚の開発部室を眺めて長い溜息を吐く自分、柊 光牙はそんな阿鼻叫喚を見つつ、自分の机にドカッと座り、溜息をついていた。ある意味目玉と言える第一回のレイドボスイベントはある意味成功、ある意味失敗となった。その原因は言わずもがなである。
ネタ武器、防具、アクセサリーのユニークスキルは先程叫んだ奴が居る通り、社長が入れて、唯一の1つしか無いスキルである。まさか、当選した奴が居るとは・・・しかも、入れた社長自身がこれだけは消させない、調整させないようにスパゲッティコード状態になっている。ファッキュー、我が社の社長。
「で、どうだった?」
個室になっている部長室で一緒に入ってきた女性秘書の桐葉君に聞く。そして、机の棚から茶色の瓶、備え付けのウォーターサーバーから水を汲んでおく。
「完成した物に関しては介入は出来ました。しかし、完成していない、つまり、レシピ状態・完成品が無い物に関しては介入不可だそうです」
「マジかよ・・・」
「ちなみに悪いニュースととてつもなく悪いニュースがあります、どちらから?」
「待て、胃薬を飲んでから・・・・・・ふぅ、悪いニュースからで」
念の為、胃壁を守るために牛乳も出しておく。さあ、来い、悪いニュース共!
「鉄の塊ソードでしたか?あの武器、名前以外変えれません」
「マジで?」
「はい。試しにデバッガーがかのプレイヤーと所持者がオフライン中に攻撃力を調整しようとしましたが、弾かれました」
社長ェエエエエエ!あの人世界中飛び回ってるから捕まらんのだよなあああああ!ぬぉおおおおお!胃がぁああああ!
「続きまして、とてつもなく悪いニュースですがこのソードの後に判明しました、ネタ武器、全て、名前以外調整出来ません」
「は?」
まじで?え?マジと書いてマジで?と言う顔をするが、無情にもその首は縦に振られた。嫌ぁあああああああ!胃薬量増えちゃうのぉおおおおお!
まあ、黒パン男子+自爆の映像なんて誰得だって感じですよね。でも、仕方ないね、ネタ武器披露だしね!
名前:ウッド
性別:男
種族:人間
HP:30
MP:10
スタミナ:45
筋力:7
体力:7+1
知力:3
魔力:2
運:4
スキル:体力小アップ、スタミナ小アップ、器用さ小アップ、鍛冶 LV1
ユニークスキル:ネタ武器・防具・アクセサリー作成 LV2