第36話 防衛イベント 初日 ファス
『ゴァアアアアアアアアア!』
「なあ、アレ、まだ近くに居ないんだよな?」
イベント開始時間近くになりログインすると遠くの筈なのに近く感じる大きさおかしい巨獣、タイプ的に狼タイプだろうか?それが街に迫ってくる。その足元に米粒みたいだがモンスターが群れを成して向かってくる。いや、アレ、群れを成すというか踏まれないように逃げてるようにも見える。いや、気のせいじゃないな、足が遅いモンスターが踏まれてポリゴンに還っている?あ、あれ・・・?
「・・・・・・げ、まさか?!」
「お、おい、まさか!やば!」
まさかの戦闘開始前からの新情報。巨獣とモンスターは別勢力と言う事・・・・・・いや、ちょっと待て!じゃあ、巨獣の勝利条件ってまさか・・・・・・同じく気づいたであろうラインがロボに向かって走り出す。
「リュウカさん!リュウガさん!レイン!リーム!各地に通達、街を出て進撃開始!巨獣にはラインやロボなら先行出来るだろうから、ロボで対応を!モンスターにはプレイヤーを当てて!まずはモンスター殲滅!急いでくれ!」
自分に言われ、はっと気づいたメンバーが走りながらメール機能やメッセージ機能を使い、他の街にも連絡していく。油断していたつもりはなかったが、完全にしてやられた!どういう事か?非常に簡単だ。レイドボス戦がボスが来るまで、つまり、定位置に着くまでなんて誰が決めたと言う話だ。
「全員走れ!放置してたらパワーアップしてしまうぞ!」
『そういう事かよッッッ!!!!』
何が何だか分からん内に街の前に敷いた防衛線から突撃を余儀なくされたプレイヤー達が最前線組であるリームの言葉に異口同音とはいえ、ほぼ全員が同じような内容の言葉を口にし、ダッシュする。
「チクショウ!完全にしてやられた!そうだよな!定位置まで来て戦闘開始ィ!なんて甘い事やらんよな!」
そう、誰もが進撃系レイドボス戦で、街の前に防衛線を張れば、後は待機してモンスターと巨獣を相手すると言う事でまずは守りに入るだろう。しかし・・・
「モンスターと別枠、つまり、追いかける形になってるモンスター倒す程レベルアップするようにしてるって!そんなのありかよ?!」
自分の言葉に対するリームの言う通りである。つまり、例え、巨獣と戦ったロボがあっても、ネタ武器があっても、待ちの態勢をしていると、とんでもない強さの巨獣の出来上がりって訳だ。完全にゲーマーの心理の裏を的確に突いてくるな、ヲイ!
『ウッド、レイン、リーム、先に行く!』
「任せた!倒す事は考えずに時間稼ぎを頼む!」
ロボにお約束のブースターを使って、ラインのロボが巨獣に取り付く。巨獣もまさか突撃中にロボが攻撃してくるとは思わなかったのだろう。ブースターの勢いのままのパンチをカウンター気味に食らって後方に吹っ飛ぶ。
「魔法使い部隊!移動しながらでいい!当たらなくてもいい!撃て!モンスターの数を減らし、牽制しつつ、ダメージも与えるんだ!」
「弓部隊も打ってください!この際、当たる外れるより、相手の足を止めるんです!」
リュウカさんとリュウガさんの言葉にプレイヤーたちが一斉に攻撃する。本来ならば、後衛が削りを入れた後、前衛が巨獣とモンスターを相手するのが想定された戦法のはずだったが、それが崩れた今、とにかくまずは数を減らす事、ダメージを与える事に集中する。
「近接部隊、攻撃開始!」
「忍者部隊も行きます!」
リームとレインが近接部隊に指示し、モンスターの群れと接触次第に一斉攻撃、更にクラン名シノビのマスターであるアヤメさんが言葉を発すると、近接部隊がとどめ刺し損ねたモンスターを倒していく。
「砲戦部隊、予定狂ったが、今の内に設置!」
リュウカさんの言葉でビーム砲台が設置される。更に・・・・・・
「ライフル部隊は抜けてきたモンスターのみに集中。準備開始!」
本来なら陣地で用意するはずだったのが、この最前線とも言える場所で陣地を作る事になってしまった。まさに文字通りのその場しのぎの急ごしらえの陣地とも言えるが、果たして、これが吉と出るか凶と出るか、ああ、もう、1日目からこれかよ!
「他の街も阿鼻叫喚っぽいな」
自分は戦闘にはあまり向いてないと言うか、戦闘向きのスキル取ってないんだよね、いまだにスタミナとかの関連スキルも小レベルだし。そのため、他の街の情勢などを各街の連絡役から送ってもらう事にしている。良く考えると、それが総隊長の仕事だわなと言う事にする、うん。で、もう一つの役割が・・・
「ライン!」
『おう、投げろ、ウッド!』
「いっけえ!」
『ガッ?!?!?!?』
自分のアイテムボックスから、投げ出されたロボサイズのアームカバーを空中装着し、巨獣を殴りつけるラインのロボ。攻撃自体が相手の突進攻撃に合わせたかのようなカウンター気味だった為か、かなりのダメージを与える。なお、アームカバーはオリジナルレシピである。とは言っても、ぶっといオリハルコンの板を曲げただけのアームカバーなんだがね。
『次っ!』
「おう!」
次に鉄の塊ソードをぶん投げる、投げた勢いにプラスそのままブースターをオンにしたロボがキャッチと同時に突きを放ち、巨獣は一気にゲージが赤くなる。
「ライン!」
『分かってる、ブースター更に点火!』
『ギッ・・・ガァアアアアアアアア!!』
更なるダメージでパリンと巨獣のゲージが割れると同時にラインのロボが戦闘域から戦闘が最も起きていない地帯に巨獣ごと、カッ飛んでいく。どういう事か、簡単である。MMOではおなじみにして、お約束の赤ゲージによる発狂モードを出す事なく倒せた・・・ように見えるだろう。しかし、思い出してほしい。
『ガァアアアアアア!!!』
そう、自分達は見た事があるスキル、食いしばりである。もちろんだがゲージ全回復ではなく赤ゲージ、つまり発狂モードのままという事、だからこそ、人も魔物も居ない所で、ラインのロボは常に自分にヘイトが回るように攻撃を続ける。
『フンッ!』
勿論だが、鉄の塊ソードを振り回せるロボの一撃ならばゲージを一気に削ることが出来る。そして、その後も想定内。
「ライン、離れろ!」
『了解!』
フレンドチャットで、ラインに命令を出す。と同時に・・・
「リュウカさん!」
「砲戦部隊、砲撃開始!あのデカさだ、魔物ごと巻き込むつもりで撃ちまくれ!」
巨獣が魔法の様な物を放とうとしていた所に殺到する光の奔流・・・・・・いや、作っておいた上にこの状況でなんだけど、ここ、ファンタジー世界が舞台だよね?
『ガァアアアアアアアア!!!』
勿論、大きくゲージは削れない。しかし、狙いはこちらに一時ヘイトを向けるため。そして、こちらを攻撃する際に・・・
『一刀・・・・・・両断!』
狼型ならば、こちらに突進する為に横からなら首を大きく差し出すような形になる。そこを突いて、ラインのロボの剣が巨獣の首を狩った。
「どうだ・・・・・・?」
流石にコレで死ななかったら、リアル謳ってるゲームとしてはアレだし、多分、問題ないとは思うけど・・・
【ファスの防衛に成功しました!ファスに襲い掛かる災厄が取り払われます】
良し!モンスター達も散り散りになり撤収していく。じゃあ、次は・・・・・・
「ライン!」
「ああ、分かってる!」
そうして、自分の次の策を各々にお願いするのだった。これ、念の為の作戦だったが、実行する必要がある。失敗させはせん、させはせんぞぉおおおお!
侵攻レイドボス戦がいつからプレイヤーとボスが相対するまで開始ではないと決めた?という思わぬ面からの奇襲でした。もし、あのまま、ボスがある程度近づくまで待ってたら?ハハッ(笑顔




