第2話 ネタ鍛冶師、開眼
「俺はやったぞぉ・・・」
あれからゲーム内では3カ月、リアル時間で半年。ようやく、鍛冶場を借りれるようになる通常の鍛冶スキルを得た。通常のは取らないとは言ったが、鍛冶師は基本の1レベルが無いとそもそもスタート地点に立てない(鍛冶場を借りれない、鍛冶師用のアイテムが買えない)ので、仕方ない。うん、ブートキャンプは地獄でした。まず、槌を振る為に感謝の槌振り1セット50回を何百回もやって、認められたら、次の段階である火の熱さに平気になる為に火口で同じく槌振り。
それを終えたら、今度は何時間座ってても平気なように空気椅子を1セット30分を同じく何百回も、それを終えたら、鉄の加工現場に直立不動で見学。勿論、メモ取りは禁止で見て覚える形式である。
「まあ、悪い事ばかりじゃないけどね」
所謂、チュートリアルクリアで鉱石などを貰うことが出来、それにより、一部のネタ装備が解禁されていたのだ。早速見ていくと、うん、ネタ武器だ、これ?!
鉄のハリセン剣:鉄の板を束ねたハリセンのように見える剣。ヒットすると50%の確率で敵をマヒさせる 種別:剣? 攻撃力:1
ツッコミか、ハリセンだけにツッコミを御所望なのか?!種別が剣?で鉄の板を束ねた剣って書いてるのに?マーク付くのか、なんだこれ、なんだ、これ?!
鉄の塊ソード:まさしく鉄塊レベルの剣、そのあまりの巨大さと重さに持てる者は少ない、まさしく鉄塊 種別:剣 攻撃力:9999
完成予想図でけえよ!〇ラゴン殺しも超えるほどでけえよ!ロボ物の剣になってるよ!これ、作れるの、現在?!あ、名前が灰色ってことは鉱石の使用必要数満たしてないから出来ないのねって、満たしてれば出来るんかーい!!!!
ロケットパンチ:腕に装着し、文字通り飛んで行く鉄の腕。ただし、使うと生身の腕が吹き飛ぶ 種別:格闘 攻撃力80【1発】
運営、ちょっと、運営?!ロマン武器でネタ武器なのは分かるけど、種別格闘でそもそも、マジで一発勝負武器でしてよ?!生身の腕が吹き飛んだら、その後が続かねえじゃねーか!
「まあ、とりあえず、作ってみるんですけどね」
とりあえず、今作れる上に安全性を考えて、ハリセン剣を作る。が、まあ、これがネタ武器である程度設計図が脳内に出来るとは言え大変で、完成に2時間以上かかった。鉄の塊ソードは更に大変なんだろうから、封印と。多分、完成するにはでかさで工房が壊れていると確信出来るしね。てか、どこでロボ物並の剣を作れるんだろうか?と言う話である、このリアル追及の世界で。いや、これスキルとしてあるんだから、作れる所がある?ナンデ?・・・・・・と、話が逸れた、完成したハリセン剣を持ってみる。
「鉄のハリセンだな」
こう、よくあるハリセンの紙の部分を鉄にしただけだ、コレ?!後、攻撃力1なだけであって、バシーン!ではなく気の抜けたパシーン!という音がする。自分でもダメージゼロじゃないかな、これ?
「う~む?」
と悩んでいると、リアル知り合いであるラインと呼ばれるキャラからフレンド通信が来た。
『お疲れ。今日でレベル1取れたよな?ネタ武器出来そう?』
『鉄のハリセンが出来た』
『なんで???』
こっちが聞きたいぐらいなんだよなあ。まあ、実物見に来るというので、合流する事にした。ここからが自分の思わぬ物語になる事をこの時点ではまだ知らなかった。
「おおう・・・」
「どう思う?」
「とりあえず、俺のギルドハウスに来い」
「マ?」
「マ」
まあ、自分も色々なゲームやってるからこそ気づくのだが、この知り合いの緊迫感、相当にやべーもんを作っちまったらしいので大人しくついていく事にする。
しばらく歩くと、豪邸と言うより前線基地的な建物が見え、ラインから譲渡されたアイテムを使うと、門が開く。ギルドハウスは性質上、開門アイテムが譲渡されないと開かない仕様になっている。つまり、これでとりあえず、他人に聞かれる心配は無くなったのである。
「奥借りるぞ、それと、レイン、リーム、来い」
ラインは歩いて行くのについて行くと、これまたリアル知り合いの女性と男性がついてくる。レインが女性、リームが男性だ。
「あら?ウッド、ようやく来たのね。ブートキャンプ大変だったでしょう?」
「噂に聞く感謝の槌振りって何なんだろうな?」
2人と談笑しつつ、奥の部屋に着くと、扉が閉まった後で消える。
「さて、話進める前に、二人とも、これ見ろ」
「ん?」
「どれどれ、これが噂のネタ武器・・・・・・ブーッ!」
ラインの言葉に武器の詳細を見たであろう2人は顎が落ちるってぐらい愕然とした。
「いや、なに、コレ?」
レインが絶句している。かなり珍しいが、それだけの事であるという証明だ。
「いやいやいや、攻撃力1という事をデメリットとしても1個は欲しいぞ、コレ?!言い値がどれだけ付こうと買うぞ!」
最前線組のレベルのリームがそう言うという事はかなりの価格で売れる可能性があり、まあ、その手のトラブルに巻き込まれるという事だ。
「そんなに?」
「ああ、これを見てくれ」
ラインが、アイテムストレージから武器を出す。鑑定済みなので詳細を見るのだが・・・
パラライズソード:攻撃力を犠牲に、麻痺の魔法を付与した剣。稀に相手をマヒさせる。 種別:剣 攻撃力:20
「最前線で麻痺率が最も高い剣だ」
「マ?」
「マ」
こうなると確かにネタ武器だが、自分が作った剣はかなり麻痺率が高い。いや、それどころか50%と言う事は1/2で麻痺だから、相手に耐性が無ければ回避特化かタンカーが持って攻撃すればかなりの麻痺を見込める。しかも、上手く行けばボスモンスターも麻痺させれるかもしれないという事だ。
「他にどんな武器があるんだ?」
「こんなん」
自分のステータス画面を開き、今作れる物を表示する。そのあまりのネタっぷりに3人は爆笑したので収まるのを待つ。
「いや、ネタっぷりに笑ったけどとんでもないな、コレ」
「使いように寄るが、今作れる2つも充分に使えるって辺り、運営の肝入ってんな、コレ。気づけばだけど」
「だね」
順にライン、リーム、レインのお言葉である。ん、なんでだ?
「まず鉄の塊なアレだが、装備する必要は無い」
「そうね。作れたらだけど、完成したら、ストレージに入れれば良いんだし」
あ・・・・・・何で気づかなかった。そうだよ、リアル追及のゲームではあるが、武器、防具、アイテムはストレージに入れられるのだ。つまり・・・
「疑似投擲か!」
「リアル追及のゲームだからな。リアル追及とは言ってもストレージは重さ関係ないし、魔法で空飛んで、そこから落としたら?」
「下降スピード+武器自体の重力+9999の攻撃ダメージ、星割れたりせんよな?」
「まさか、ハハハハ・・・・・・」
順に自分、ライン、リーム、レインのお言葉である。いや。、まさかねえ、いや、しかし・・・
「「「「あり得る・・・」」」」
運営への信頼がこれである。これである。うむ、何かしらの振る事が出来るアイテムがネタ武器にきっとあるんだ。自分的にはそれまで封印!なお、封印が解けるとは言ってない
「で、ロケットパンチ」
「この女性、はっきり言っちゃったよ?!俺も声に出すの自重したのに!」
「さておき、別に腕が千切れても困る事無くない?」
「はい?」
いやいや、レインさんや。流石に・・・
「あ~、言われてみればそうだな」
「だね」
あの、お二人もなんでって・・・・・・あ。
「そうか、種族」
3人が頷く。このゲーム、リアルファンタジーをお題にしてるだけに、種族は人間だけとは限らない。例えば、ラインは人狼だし、リームはエルフ、レインはドライアドだ。
「そう、再生が出来る種族なら間違いなく欲しがるわね。ついでに、配信組」
そう、ヴァンパイアなども選べるし、配信組はその辺もネタになるだろうから欲しがるだろう。
「ん~でも、巨大剣は鉄がメッチャ要るし、工房では多分作れないし、パンチの方は火薬ってのが要るみたいだ」
「あ~、なるほどね。簡単には作らせないという意思も感じるな」
「火薬はうちも在庫あるけど、遠距離組の弾に必須だし、意外とお高いからなあ」
自分の言葉にラインとリームがそれぞれ答える。ぶっちゃけ、金を出せばロケットパンチは何とかなるが、巨大剣の方はなあ・・・
「え?剣に関しては外で作ればいいんじゃない?」
『はい?』
レインの思わぬ言葉にしばし呆然としていたのだが、俺達、男3人はあっ・・・としばらく後に同じ考えに到ったのだ。そういや、工房もあるんだから、お約束のアレもあるじゃん。でも、目立つだろうなあ・・・
星が割れるなんて、まさか、そんな、いくらリアル運営でも、そこまではせんやろ、ははははははは(目を逸らす)