第13話 王龍討伐 準備編
「検証、ですか?」
今日のクランハウスには珍しくラインが連れてきた他クランのリーダーが来ている。クラン名がファンタジーゲートオンライン検証部と言うまんまのクランで。そういうクランにしては珍しい女性リーダーのリュウカさんと言う名前だった。
勿論、名前のまんまあらゆる事の検証なので、今日の用件はとあるアイテムを使った検証を行う為に訪れてきたという事らしい。
「はい。ウッドさん。貴方が作った龍の鈴で出てくるドラゴンについてです」
なるほど。確かに最前線組も見た事無いドラゴンであるのは気になっていた。しかし、下手に手を出すのは危険。検証クランならば、尚の事そう分かっているはずだが・・・
「今なら、ラインさんのクラン、私が誘ったクラン同盟で、推定・王龍に勝ち目があるとしたら?」
あ、やっぱり、その結論に達したか。最前線組が見た事無いとするなら、王龍、またはそれに連なる龍である可能性が高い。
「しかし、俺達に参加するメリットがない」
「勿論、メリットもご用意します。私達と同盟クランのメンバー全員での話し合いで討伐で手に入る素材及びにレイド参加者特典も含め、8割を貴クランに譲っても良いと許可を頂いてます」
ワオ、ラインの顔色も変わった。それぐらいの譲歩である。言うなれば、検証勢にとっての垂涎のお宝をおおよそ9割近く渡しても良いと言っているのである。最大の譲歩どころではない。手に入る財産をほぼ全て譲りますと言ってるようなものだ。
「レイン?」
「悪くない取引ね。だけど、解せないわ。リュウカ、それであなたは何を得るの?いえ、もっと言うと、何が欲しいの?」
なるほど、レインが言う事の根拠も分かった。8割。ここがミソだ。つまり、2割いや、検証勢からすれば1割を主張するという事。つまり欲しい素材があるという事だ。
「流石はレイン。分かってるね、親友」
「茶化さないで。まあ、大体分かってるけどね」
お?レインはリュウカさんの狙いが分かってるという事か、なんだろ?親友という事は、リアフレなのだろうか?
「まあ、勿体つけずに言おう。我々が欲しいのは、おそらくは討伐報酬にある王龍の卵。それ1つだ」
「卵?」
思わず聞き返してしまう。そんなのあるのか?と言う顔でうちの面子に振り向いてみる。全員、それか~と言う顔をしていた。
「ウッドは最前線に居る事は無いから知らないのも無理もない。最前線に行くまでに徘徊型ボスモンスターが沢山居るのは知ってるな?」
「おう」
ラインの言う言葉に頷く。リアルファンタジーという事もあり、ダンジョンでもない限りはフィールドに居るモンスターはランダムで動き、時にはレイドボスのモンスターの出現も珍しくないとサイトなどから情報を得ている。
「そんな中で、良く噂になるのが討伐報酬。その中でも強敵クラスの討伐をすると確定で手に入るのが、ボスモンスターの卵だ」
「テイマーが居れば、そのモンスターの幼体をテイム出来ると言われているわ」
へえ、意外とその辺もファンタジーなんだな。つまり・・・・・・
「貴方の狙いは王龍の幼体?」
「ええ。おそらくただ一つ・・・のね」
「そうなのか?」
自分はそこに疑問を感じた。ラインとリーム、レインも自分の言葉に頷く。
「おそらく、あそこが理由だろう、リュウカ?」
「ええ。流石は最前線リーダーね、ライン。私はあそこの謎を解きたい。そして、その謎を解く鍵こそがあの龍だと考えている」
「あそこ?」
分かりあってる最前線組達は分かるだろうが、自分はさっぱりだ。ただ、卵と言う言葉で何となくの察しは付いている。
「あ、ごめんなさいね。簡単に言えば、龍の産卵場と呼ばれる場所よ」
リュウカさんが地図を広げてその場所を示してくれる。なるほど、かなり離れた場所にある所だが、最前線か?と言われるとそうでもない。なんて言うか、辺境と言う感じである。
「ここが見つかったのは偶然で、歩くのを楽しんでたプレイヤーが見つけたのよ。でも、名前の割に産卵場所っぽいのが祭壇しかないし、他のドラゴンドロップの卵も特に変わった様子もない。とすると?」
「条件が特殊なドラゴンの卵のみが、使える場所?」
「おそらく」
ふぅむ。自分の鍛冶リストを見ていくが、流石に卵を使うようなド外道な装備は無い。無いよね?レベルが上がるとありそうで不安になってくるが、今までの所も無いならおそらくは無い・・・・・・と良いなあ。
「自分はOKだ。リストには卵が必要な物は無い。それに今までの経験から見て重要なのは皮、鱗、爪、牙、魔石のいずれかだろうし、後はライン達次第だと思う」
「ふむ、俺達が協力する事を入れても美味しいな。俺も賛成だ、レインとリームは?」
「俺は賛成だな、レインは?」
「条件付きの賛成ね、リュウカ、条件付けるけどいい?」
お?珍しい、リスクはほぼゼロなのにレインが条件付きとは珍しい、なんだろう?
「あんたんとこのクラン領地、短期間で貸し出しなさい」
「理由は?」
クラン領地とは、開始時に合ったようにリアルなファンタジー世界であり、功績を上げれば、本当に色々出来る。同時に功績を上げるという事は爵位や領地を拝領されることもあるって事だ。その内の、後者を受け取ったのが検証クランという訳だ。
そういえば、領地には利点が・・・・・・あっ、そう言う事か。
「ネタ鍛冶」
「把握」
待って、ねえ、待って!クラン領地のとある利点考えると借りられるのは嬉しいけど、その理由が納得いかないんですけどお!いや、否定は出来ないけどさ!
「検証班を入れても?」
「良いわよ?ただし、動画はうちの配信のみね」
女の戦いは任せておこう、うん、そっとしておこう。ですので、お二方?後は若いお二人にお任せしますので、肩掴むの止めて欲しいなって・・・・・・アッハイ、行かなきゃダメですよね・・・
「がんばれ、ウッド。各自への伝達がある以上は俺とリームは仕事がある、ここの戦いは任せた!」
「サラダバー」
き、貴様等、おい!聞いてんのか!野郎!俺を囮に退却しやがったぁああああ!
「さあ、ウッド」
「色々話し合いましょうねえ~?」
両手に華?欲しければくれてやるわ!あ~~~~!お客様、いけません、いけません!アッ―!
はい、とりあえず、小説で言う所の第一部ラスト戦闘とも言える推定:王龍討伐準備編です。次回戦闘をやって、次々回、その頃の掲示板かな?