第8話 シークレットクエストと猫の国
「「おぉ、もう・・・・・・」」
とりあえず、動画を見て、メンバーをクランハウスに戻して合流したラインとリームが頭を抱える。その奥でレインがケット・シーを治療していた。
「しかし、まさかの展開だな。今、掲示板で大騒ぎだぜ。チラリと見せてしまったとはいえ、あの、ケット・シーだからなあ」
「あのって言うと?」
「ああ、初期には普通に街に来ていたんだ。高ランクプレイヤー並に強く、武器も彼等の行商が来たらかなり強い物があった」
「あった?」
ラインの言い方にいくつか苦いモノを感じた。つまりはそう言う事だろうか?
「そこからは俺が。まあ、ウッドも大体察したと思うけど」
「ああ、居た。んだな?」
「ああ、所謂、迷惑プレイヤーが凸した。そして、ケット・シーは勿論、いくつかの種族も消息を絶った。キャラメイクで名前が黒い種族なかったか?」
有ったな。リームの言う通り、ハイエルフ、ハイドワーフとかの上位系。てっきり、上位だから、選べないんだろうなってその辺スルーしてたわ。
「で、その後も迷惑プレイヤーによるレア種族探しが横行してな、ついには運営もキレて、大BAN祭りになって、その手のプレイヤーは居なくなったが・・・」
「時すでに遅しと?」
「そ。だから、俺とラインもびっくりしてる訳だ。しかも、このクエスト名だぞ?」
改めて、発行されたクエストを見る。ふむふむ・・・
【シークレットクエスト】 ケット・シーの国への道
怪我をして衰弱したケット・シーの若者を発見した君は、ケット・シーの話を聞き、まずは王国への道行きを探す事にした
クエスト開始条件:ケット・シーと話せる事
クエストクリア条件:ケット・シーと共に彼の国に行く事
報酬:????(初回のみ)
人数制限:無し
「これは、まず、見つけるという事が重要なのかな?」
「多分な。駆逐はされたが、迷惑プレイヤーの選定の意味もあるんだろうな」
あ~、ラインの言葉に納得した。確かに怪我に衰弱してはいるが逃げる力が残って無い訳じゃなさそうだったからな。話しかけて受け答えも出来たってのも大きいかもしれない。
「ん?そうなると、まずはどういう対応か?次第で受けられるか変わる?」
「だな。そうなると、猫耳販売はこのクエストの結果次第の販売にした方が良いかもしれない」
リームの言葉は別にクエストの隠蔽という訳ではない。すでに配信され、検証されてるから、まずは受注した自分達でクエストを受け、それ次第で売りに出す方針を決めようという事だろう。帰したクランメンバーにはその辺の調査もお願いしているのだろう。高圧的に凸してきたキャラの名前の控えとかね。
「あ、終わったみたいだ。猫耳、今はこれ1個しかないから俺が話して仲介するわ」
「「おk」」
レインにも後ろに行ってもらい、一先ず、話を自分だけが聞く事にすると、幾何か緊張感っぽいのが消えたように思える。あれ?良いフラグ踏んでる?
「状態はどう?」
『貴殿の仲間の魔法のお陰でな。どうだろう?我が王国に来て欲しいのだが』
「喜んでと言いたい所だけど、治療した彼女と、もしモンスターが出るなら護衛にあそこに居る二人を連れて行っても?」
『無論、構わない。私はとある使命があり、ようやく帰郷するところだったのだが、道中で嗅覚の鋭いモンスターに狙われてしまってね、私の護衛も頼めるだろうか?』
おぉ、願ったり叶ったりだ。しかし、この言い様、もしかして・・・・・・?
「勿論、我々は冒険者ですが、それでも?」
『うむ。そこも使命であったが、これで心置きなく果たす事が出来る』
なるほど。どうやら、自分の考えはビンゴだったようで、3人に手招きし、事と次第を話すと、3人もなるほどねと言う顔で依頼を受けてくれる。つまり、全員が同じ考えに至り、自分の考えは正しかったって事だ。
『それでは行こう』
出発すると、最前線組のアタッカー2人に魔法使い1人だ。ネタ武器も使いつつ、自分とケット・シーの安全を最優先しつつ、王国へ向かう。ぶっちゃけ、危険はあまり無かった。と言うか、嗅覚が鋭いウルフ系以外はまるでこちらに気づく事が無かったからだ。
なんでも、ケット・シーの特性で彼等に案内されると不思議とモンスター達は特定の奴しか姿を見られなくなったかのようになるらしい。
「なるほど、コレが凸された理由かね」
「おそらくな。このスキルらしき事が出来るケット・シーの独占か、それとも、スキルスクロールがあると思ったか」
「どちらにせよ、ケット・シーの国からすれば迷惑な話だったって事ね」
順にライン、リーム、レインの言である。こうして体験してみると分かる。なるほどって感じだった。このゲーム、如何にして、敵から意識を逸らせられるか?も重要になる。その為にタンカーの挑発などがあるが、それだけでは心許ない。
要はアレである。ドーモ、モンスター=サン、バックスタブ=デス!が確実に出来るという事だな。気配悟られず、まずは一撃は重要である。そら、そんな方法が手に入るかもしれない国があるとすれば、凸するわな。
「が、今はあんま必要なさそうだけどな」
「と言うより、初期こそ騒がれていたが第2陣辺りでな?良く考えたら、モンスター避けるの、バックスタブするの意味ある?となった訳だ。分かるだろ?このゲーム特性を見れば」
あ・・・・・・あ~、なるほど、リームとラインの言いたい事が分かった。確かに不意打ちすれば行程減るけど、逆にスキルを鍛えるだけの時間が無くなる・・・と。このゲームならではの落ち着き方だな、コレ。普通のゲームなら、工程を省く事こそ効率だが、逆にこのゲームだとスキルのレベルアップが命になる。その為、長く戦えるモンスターや攻撃こそが最大の効率になる。
逃げる場合なら、使えるスキルかもしれないが、それなら隠蔽のスキルのレベルを上げた方が効率的らしい。まあ、普通に会得出来るスキルのレベルを上げた方がこのゲームでは良いよなってなるよなあ。
「おかしい、普通は神スキルのはず・・・・・・だよな?」
「うん。たまに俺達もこのゲームやってると、その辺の感覚麻痺してるかもって思う時ある」
自分の言葉にラインがしみじみ言いながら頷く。そうだよね、普通、MMOで警戒されずに抜けられるって神スキルだよな?う~ん、ゲームの特徴で神スキルが普通スキルに見える瞬間よ。
『長々と退屈な護衛をさせてすまないな。見えたぞ、あれが我が王国である』
スキルの関係上、戦闘時以外は前を歩いて先導していたケット・シーが振り返る。おぉ、まさしく中世の城って感じの城の周りを囲むように大きな街が見える。
「ん?こんなところに城あったか?」
「いや、ここを進もうって奴は居なかったからかな?」
「だそうだけど?」
ラインとリームは地図を取り出すが、確かに、色々書き込むラインにしては地図上の所に何も書き込まれていない。仲介して、ケット・シーに聞いてみる。
『ああ、それは単純だ。ここには何も無い。そう考えるしかない術式がある。ちなみに人間と交流を絶った部族の村や町は大抵これがあるぞ』
「だそうだ」
ますます、自分達の考えは正しいと確信に至った。レインはすでに色々情報を纏めているようである。
『それでは、ようこそ、異邦人達よ。まずはついて来てくれ』
ケット・シーの国はなんて言うか、こう、もふもふ天国でした・・・・・・という訳では無かった。な~るほどね、運営が考えたか、元々仕込んであったかどっちだろうかね?
ちらちら見えるのはエルフにドワーフ、それに見た事無い耳の獣人の姿もある。ますますを以て、確信した。コレ、帰ったら猫耳量産した方が良いやつだ!
『では、こちらだ、開門!このスーガ、使命を果たして帰還した!』
あ、そういや、名前聞いてなかったわ。彼・・・かな?スーガはかなり立場が高いらしく、人間である自分達を見ても、道程では嫌な顔されずに王の間まで通された。
『よくぞ、使命を果たし、戻ってきた。スーガよ、如何に?』
『はっ、人の街には最早、問題ある者少なく・・・』
しばらく王様と彼の言葉を聞いていたが、自分達の予想は的中したと確信した。つまり、これは、種族復帰クエスト。ケット・シーだけではない。復帰クエストの始まりだという事だ。
『うむ、人間達よ、感謝する。其方等の御蔭で、決心が付いた!これより、我が国は鎖国を解くものとする!各員、各国に伝えい!』
『はっ!!!』
【シークレットクエスト ケット・シーの国への道をクリアしました!】
<<ワールドニュース! 種族復帰クエストをクリアしたパーティが現れました!以後、種族復帰クエストが各地に現れます>>
<<クリアしたパーティの成果に伴い、ケット・シーの国及びクエストが解放されました。詳しくは公式ニュースをご覧ください>>
<<並びに、種族解放クエストが解放された報酬として、プレイヤー全員に種族変更チケットが配布されました。詳しくは公式ページをご覧ください>>
おぉう、思ったより知れ渡っちゃうな、コレ。まず、パーティは確実に特定されたから、急いで猫耳量産せんとな。
『其方等にはこれを与えよう』
お?こっちがこのクエストのの報酬かな?貰ったのは、割符かな?全員同じようだ。
「王様、これは?」
とりあえず、会話できるのが現状自分だけなので代表して聞いてみる。それで爆弾投下されるとは思わないじゃん、じゃん????
『うむ。我が国における、オリハルコンの採掘権利者の証である』
「はい?!」
あ、あぶねえ、俺も皆も割符を落としかけたよ!え?ええええええええええええええ?!
シークレットクエストクリアの報酬は凄い物を!がお約束ですよね。凄すぎる気もしますが(爆)