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シェイプシフターの子 Ⅱ〜僕は魔物だけど人間が好きかも知れない〜  作者: さつき けい


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50・醜聞


 僕は、九歳の誕生日の贈り物には『派兵準備』をお願いした。


お祖父様は「年々物騒なお願いごとになるな」と笑ったらしい。


そんなに悪いお願い事はしていないはずだけどなあ。


去年は何だったかな、ああ、領地に入ったばかりだったから『温室』だ。


薔薇のために必要だったからね。


む、子供らしくないって?。


子供に領主代理やらせてる時点で今さらだ。


 王都本邸での誕生日会に呼ばれてたけど、今回は体調不良のため欠席。


アーリーからは長文の文句が来たけど、同じように長文の言い訳を送っておいた。


今ちょうど楽しい計画を立ててるところなんで邪魔しないでね。


グフフフ。


いや、しかし、アーリーからの長文の手紙も成長が見られて嬉しかったな。




「本当か、ローズ」


クォン


北の森、山の奥であの魔鳥の群れを発見したそうだ。


庭師の青年からの報告では温室で飼っている鳥はおとなしい家畜となっている。


瘴気を完全に抜き取ったので安全に飼えるようになったのだ。


「よし、卵を回収して来よう!」


あ、産卵時期を調べないとダメだ。 確か冬だな、もうちょっと待つか。


 どうやら隣の国から色々と魔獣が入り込んでいるらしい。


「山の向こうからということですか」


スミスさんの言葉に頷く。


「今までこの土地で見つかっていない魔獣が、どこから来たのかということだろ」


ローズが慎重に調べてくれているから、そのうち分かるはずだ。




 初夏が過ぎ、本格的な夏が近付く。


北の領地はさすがに王都ほど暑くはないが、獣にとっては活発になる季節だ。


そろそろ生後半年になる子狼たちは身体付きもしっかりしてきた。


グルカはローズと山を走り回っているし、リルーは僕と館で留守番が多い。


リルーの場合は魔力を封じてあるので念のため傍に置いている。


何かあったら父親である僕が守るからな。


 ローズはオトナになったので生気をもらうのを止めた。


その代わり子狼たちから生気を貰い、ローズには森の調査を頼む。


あとは毎朝、新聞を読んでくれる子供たちからギュッとしてもらう。


うん、瘴気が足りないな。




 僕は瘴気不足でまた寝込んでいる。


ベッドで上半身を起こした状態で書類仕事だけをしている状態だ。


「失礼します」


スミスさんと一緒にジーンさん、それに厨房担当の使用人の男性が入って来た。


「何かあった?」


「はい、実は」


代表してスミスさんが話し始める。


「最近、デラートス雑貨店へ注文したものが届かないというか、入って来ても数が少ないのです」


「横流しの可能性があるの?」


「デラートスさんに連絡が取れればきちんと入るのですが、いない場合は入荷が遅れます」


確定だろ、それ。


そんなことをしそうな女の顔が浮かぶ。


だから早く始末すれば良かったのに。


「多少遅れても影響のないものなら良いのですが」


大事な書類や高価な物が含まれている場合は大変なことになる。


「アーリー様からイーブリス様宛の贈り物が届いているはずなんですが、それも見当たらなくて」


はあ?、あの女、許さん。


「分かった。 何とかしよう」


ジーンさんと使用人が部屋を出た後、スミスさんに確認する。


「隣の領主との関連はあるのか?」


「どうやら横流し先はそちらのようですね」


ふっ、それは好都合だ。




 ソルキート隊長を呼んで女を地下牢に放り込む。


ついでに店の者に案内させ、私兵たちに女の部屋からあらゆる物を運び出させた。


領主館の食堂にそれらを並べて使用人たちに確認させたら、館に来る予定だった物がいくつもある。


「足りない物もありますが、それはもう他所に売り払ったようですね」


使用人の男性が残念そうに呟く。


「アーリー様からは新種の薔薇の苗だったみたいです」


女の部屋から植木鉢が見つかったが、もうすでに枯れている。


僕はそれに自分の生気を少しだけ送り込む。


後は庭師の青年に「何とかしてくれ」と渡した。


「分かりました、やってみます」


青年は悲しそうに枯れた植物を抱えて外へ出て行った。




 これはデラートスの失点になる。


女が何かコソコソしていたのは、ある程度の店の者が知っていたはずだからだ。


何かを貰ったり、女の色香に迷ったとしても、やって良いことと悪いことがある。


「公爵家のモノに手を付けた報いは受けてもらう」


僕はデラートスさん不在の店に乗り込み、出入り口を全て閉めさせた。


逃がさないよ。


王都からの出荷書類と、こちらの入荷書類の付け合わせをさせる。


その間、瘴気を発している者を確認し、終わった書類をデラートス本人宛と本家の文官宛に送らせた。


もちろん、瘴気を出している者は共犯として地下牢行きである。


 領兵たちは店員たちを連行しながら小声で呟く。


「馬鹿だな、お前たち。 最初の時、店の者はお情けで牢行きにならなかったのに」


そうだよ、元店主だけを牢に入れ、あとは店で使うために残してやったんだ。


領兵たちは全員が地下牢にぶち込まれて痛い目を見てるから僕の怖さは知っている。


当たり前だ。


公爵家から金を貰い、領兵という身分も笠に着ての悪行だった。


領兵なのに領民を守らないってどういうことよってね。




 僕がこの町に来て、一番最初に粛清したのが領主館で次が商店だった。


あれから商売が軌道に乗り、少し気が緩んだところで、あの女が登場した。


元店主の下で客を馬鹿にしていた店員たちは、また甘い言葉に流され、以前と同じように不正を働いたのだ。


「実際に痛い目に遭わなければ人間の性根は変わらないということだな」


では、しっかり現実を見てもらおうか。


ああ、また瘴気が溢れる地下牢になって僕は嬉しいよ。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「ちょっと!、何するのよ、離しなさい」


デラートス雑貨店の女店員が地下牢に連れて来られた。


私兵たちは黙って女を牢に放り込む。


「きゃっ」


「安心しろ、元気なのも今の内だけだ。 そんなに長くはかからない」


そう言い置いて私兵たちは去って行った。


「何なのよ、いったい。 私が何したっていうのよ」


尚も女が騒いでいると、隣からブツブツと声が聞こえる。


気味が悪い男の声だが何を言っているのかも分からない。


「嫌だわ、こんなところ、早く出してもらわなきゃ」


一日に二回、兵士が食事が運んで来るが、誰も口を開かず、哀れそうな目で見られるだけだった。




 何日目かにデラートスが地下牢にやって来る。


「ああ、店長さーん、早くここから出してよお」


自分が風呂にも入れず酷い状態だということも忘れて、女はデラートスにすり寄った。


「馬鹿を言うな。 お前のお蔭で俺は店を没収になったんだぞ!」


怒りに任せてデラートスは女を突き飛ばした。


「きゃあ」


それでも女はキッと顔を上げて睨む。


「何よ、あんな小さな店。


そうだわ、私をここから出してくれたら男爵様にお願いして、もっと大きなお店を出させてあげるわ」


デラートスは鼻で笑った。


「お前自身でさえ店を出させてもらえなかったくせによく言うよ」


「うるさいわねっ。 これでも私の親は貴族様だったのよ」


「ほお、落ちぶれたか、私生児か。 そんなことはどうでもいい、お前にはもう関係ないからな」


デラートスは、懐から一枚の紙を出す。


「隣領の男爵様からだ。 今後一切関わらないとさ。 お前は見限られたんだよ」


「嘘よ」


「ああ、言伝を頼まれてる。 今まで貢いでやった服や宝石の金を返せとお前の家族に請求したそうだ」


「え、なんで?」


女はポカンと口を開けてデラートスを見上げる。


「家族には関係ないでしょ!」


デラートスは首を横に振る。


「知らん。 そうでもしなければ奥方に離縁されるんだとよ」


女は叫ぶ。


「だから貴族なんて大っ嫌いなのよ!。 母さんを弄んで、娘まで捨てたあの男と同じだわ!」


わーわーと泣き声が響く。


「これで良いんですよね、イーブリス様」


牢を出たデラートスは口の端だけを歪めて笑った。



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