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不遇にも若くして病死した少年、転生先で英雄に  作者: 根本 良
第三章 帝国戦争編
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第三十九話 再会

エステを追いかけるように後に続く俺は露骨な違和感に気付いた。


(あれ?何か、俺たち魔物と帝国兵と戦うものとばっかり思ってたけど、向こうは向こうで戦ってるみたいだな。何で三つ巴状態なんだ?)


エステが突っ込んだ先では、帝国兵と魔物が戦っていた。


「弱い!弱すぎる!」


その間を縫う様に移動しながら、帝国兵だろうと魔物だろうと構わずに嬉々とした表情で返り血を浴びまくったエステが倒しまくっていた。


「勝手に先に行くなって!」


エステの傍まで来ると、群れの中にいた一匹のワイルドウルフが向かって来たのを居合い切りで切り伏せた。


「やるね~」


その様を近くで見ていたエステが感嘆の声を漏らす。


「じゃぁ、今度は私の番だな!」


何故か俺に対抗してハリキリ出したエステが何かをしたのか、持っている大剣の銀色の刀身がみるみる紅く染まっていく。


「おりゃぁ!」


エステに真正面から向かって来たゴーレムが、振り下ろされた大剣によって真っ二つに切り裂かれた。


「まだまだぁ!」


剣の刃先が地面に触れたのと同時に、真っ二つに裂かれたゴーレムが炎に包まれ、ゴーレムの奥にいた敵に向かって巨大な炎の刃が駆け抜ける。


炎の刃の線上にいた敵は切り裂かれ、そして焼き尽くされていく。


その線上の側にいた敵は、斬撃に触れてもいないのに悉く焼き尽くされていった。


「とんでもない威力だな…」


「お前のさっきの魔法に比べたら全然だがな」


「それ魔法剣が何かか?」


焔の神装大剣(グランベルザード)っていう大剣でな。炎の剣(フランベルジュ)っていう剣と兄弟みたいなもんだ」


「聞いた事が無い剣だな…」


「それより、今ので魔物も我等を完全に敵と看做したようだぞ?」


あちこちで帝国兵と戦っていたはずの魔物達が、一斉にこっちに向かって来る。


「おい!勝手に削り合ってくれてたのに、両方と戦う羽目になったじゃないか!」


「ちょうど良いじゃないか。元々、コイツら全部と戦うつもりだったんだろ?」


「それはそうだけど…」


「なら、いいじゃないか。…って事で、行ってくる!」


「だから、先に行くなって!」


先に駆け出したエステに続く形で、敵の群れに向かって突っ込んでいく。


大量のワイルドウルフとグレイトウルフだけでなく、グレイトウルフよりも更に上位のゲイルウルフ…他にも見たことの無い種類の魔物が混じった群れが俺たちを取り囲んだ。


「飛べ!」


エステの剣が紅く染まったままなのに気づいた俺はエステの言葉に合わせて一気に飛び上がると、エステが一回転しながら大剣を振り回す。


俺たちを取り囲んでいた魔物の群れが飛んでいった炎の刃によって燃やされ、全方位が火の海になった。


(下には火の海と化したウルフの群れ…)


真下の様子を眼だけを下に向けて確認する。


(その向こうには、ゴーレムやサイクロプス…グランドリザード…)


その奥には数多の多種多様な魔物が見えた。


(ん?あれは…、帝国兵か?!)


更にその向こうに魔物と戦っている帝国兵達が見えた。


「おい!どういう状況なんだー!」


下からエステの叫び声が聞こえて顔を向けるとゆっくり下に降りて行く。


「お前の事だから、ついでに周りの状況を見たんだろ?」


着地すると直ぐに、エステが声をかけて来る。


「まあね。とりあえず、この向こうに結構な数の魔物がいたよ。更にその向こうで、帝国兵と魔物が戦ってた」


「という事は、敵さんはこっちと戦ってる余裕は無さそうだな」


「かもね。一先ずは魔物と帝国兵の両方を同時に叩かなくて済みそうだ」


「で、どうするんだ?」


「魔物と帝国兵が勝手に消耗し合ってくれてるんだからのんびりいきたいとこだけど、父上達が向かって来てるはずだしなぁ」


「なら、帝国の兵が消耗し切る前にかち合うのは都合が悪いんだろ?」


「それもそうなんだよなぁ。ここでジッとしてても仕方ないし、とりあえずこっちはこっちで魔物を削ろうか」


「なら、暴れるか!」


「そういう事になるな!」


エステに背中を預ける形で、お互いに正面から向かってくる魔物をひたすら倒していく。


ひたすらエステと魔物を倒しまくってから、小一時間程経った頃…


パチンッ!


急に指を鳴らす音が聞こえて後ろに飛び退ると、さっきまで戦っていた魔物達が一切に黒い炎に包まれた。


(何だ!?でかい気配!?)


「何者だ?!貴様っ!!」


大きな気配を感じたのと同時にエステの声が聞こえて振り返ると、同じように飛び退っていたエステが叫んでいた。


「貴方なんぞに用事はありませんよ?それはそうと、この程度の相手に随分と手間取ってますね…レイ?」


「何をしに来た!…アドラメレク!」


頭上に居る見知った悪魔に向かって叫んだ。


「せっかく手助けしてあげたのに…、随分な物言いですね」


「頼んだ覚えはない!そんな事より答えろ!」


「ただの暇つぶしですよ。貴方にやられた傷も癒えたんで、準備運動がてらに…ね」


「ならば、一生ここで寝てろー!」


「ばかっ!よせっ!」


俺が制するのを張り切って、エステがアドラメレクに向かって飛び上がると、大剣をアドラメレクに向かって振り抜く。


「そんな攻撃が私に届くと思わないことです」


アドラメレクがフーッと息を吐くと、まるで何も無かったかの様に敵を燃やさんとする炎の剣撃が消し去られた。


「なっ!?バカな!」


事も無げに自分の攻撃を無効化されたショックに、気が動転して着地の事を忘れているエステに気づいた俺は、慌ててエステを抱き抱える様に受け止めた。


「バカはお前だよ!相手の強さを見て突っ込め!」


俺の腕の中で茫然としているエステに怒鳴りつけた。


「ふむ。今度はこちらの番ですね」


アドラメレクが右腕を空に掲げると、夥しい数のデモンズシューターがアドラメレクの頭上に現れた。


(くそっ!この状態じゃ躱す事が出来ない!)


咄嗟にエステに覆い被さる様に庇う姿勢を取ると、ティアードで自分達を覆った。


「お主の番はまだ先だ!」


何処からか聞こえて来た言葉と共に、デモンズシューターの更に上空から凄まじい衝撃波の渦がアドラメレクを襲った。


(いくさ)最中(さなか)に何をいちゃついておる。私という者がありながら…」


凄まじい衝撃と共に傍に現れた何かに顔を向けると、服に付いた埃を手で振り払いながらオウカがアドラメレクを見上げていた。


「そこは『私』じゃなくて、『フェリル』!だ!」


「細かい事を気にする旦那様だのぅ。どうせ私とも番いになるのだから、その様な事はどうでも良かろう…」


「番いって言うな!」


ティアードを解除して立ち上がると、精一杯の抗議をする。


「おや?貴方までいるとなると、ここじゃ手狭ですねぇ」


オウカの攻撃をサラッと避けたアドラメレクが、俺たち三人(?)を見下ろしながら


「で、お主のそれはどうするつもりだ?」


姿勢を低くしたオウカが脇腹の当たりで拳に力を入れて構えていた。


(全てを…撃ち落とせるか?)


俺も握っている一閃に雷の魔力を流して構えた。


「こうするんですよ」


アドラメレクが指刺した方向に全てのデモンズシューターが飛び去っていく。


(あの方向…!まさかっ!)


さっき確認した位置関係から、デモンズシューターが飛んで行った先に気づいた。


「お前…。俺たちに味方するのか…!?」


「…まさか。私は貴方がこんな所で油を売っているのを待っていられる程、気長ではありませんので。さっさとこんな戦争(あそび)を終わらせて、私の根城に来て下さい。その時は…また存分に戦い(あそび)ましょう…」


「それでは」という言葉と共に、現れた漆黒の闇がアドラメレクを覆った。


「…一体あやつは何をしに来たのか…」


漆黒の闇とと共に消え去ったアドラメレクがいた場所を、オウカと2人見つめていた。


「あいつに構ってる場合じゃなかった!早く行かないと!」


一瞬、ボーッとしていた俺は戦争中だと言う事を思い出して直ぐに気持ちを切り替え、先を急ごうと足に力を込める。


「そいつは捨て置け。このまま共に行っても邪魔なだけだ」


俺が庇った時の姿勢のまま茫然としているエステをチラッと見ると、オウカが吐き捨てた。


「…」


少しの間エステの様子を見ていたが、ただただ細かく震えるだけの様子に諦めが付いた。


(無理もないか…。あの瞬間…あいつに気圧されたのだろうから)


俺はエステの炎の斬撃をあっさりと消し去ったアドラメレクが、真っ直ぐにエステを見て威圧した時の事を思い出していた。


帝国兵達がいる筈の場所へ向かうべく足に力を込めた。


「ま、待て…。私も行く」


エステに服の裾を掴まれて引き止められた。


「安心せよ。どうせ直ぐに終わる」


オウカのその言葉が言い終わるか否かの所で、首元に手刀を入れられたエステが気を失った。


「少しは手加減しろよ」


かなり鈍い音が聞こえて、オウカに釘を差した。


「ぎりぎり落ちる位の強さでやったぞ?」


「本当かよ…。首の骨折ったんじゃ無いかと思うくらい鈍い音してたぞ」


「こんな所で油売ってる場合じゃなかろう?さっさと行くぞ」


オウカの隣に立つと、2人とも左脚を後ろにズラして足に力を込める。


(この辺りはもう大丈夫なはずだから…)


意識を失ったエステを一瞥すると前を向いた。


「レインフォース!!」


身体強化魔法の発動と共に、一気に大地を蹴った。


後には、昏倒したエステと二人の足跡だけが残っていた。

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