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不遇にも若くして病死した少年、転生先で英雄に  作者: 根本 良
第三章 帝国戦争編
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第二十三話 再訪①

ミリーナと共にベレルを出た後、メイル選抜集団を引き連れてメイルを救出した村に向かっていた。


(この辺りは身を潜ませるのに、ちょうど良い所がないのぅ…)


見渡す限り平原に街道があるだけで、四十人もの人間を待機させておく場所が無くて困っていた。


「さっきからキョロキョロしてどうしたんですか?」


隣を歩いているミリーナが、私の様子が気になったのか話しかけて来た。


「こやつらを村に連れて行った所で、洗脳されるのがオチだからのぅ。離れた所に身を潜めさせておきたいのだが、ちょうどいい場所が無くてな…」


「ベレル周辺には森がありますが、リダールの周りは平原しかありませんから、この人数を隠すのは難しいですよ?」


素直に困っている事を伝えると、ミリーナが周辺の地形を教えてくれた。


「…となると、やはり多少は離れた場所にするしかないか…。そなたがレイと会うたという村なら、何とかなろんか?」


「あそこなら可能だと思います。ベレルの勢力圏なので、リダールも簡単には手を出せないでしょうし。ただ…」


「ただ?」


「リダールからは少し距離がありますね」


「村があの状態ではどうせ連れていけんのだから、仕方ない」


少し寄り道する形になるが進路を変えて、ミリーナがレイ達に出会ったという村に向けて歩くことにした。


二、三時間程歩き続けて村が見えてくると、入り口に男が立っているのが見えた。


それに気付いたミリーナが、男の方へ小走りに駆け寄って行く。


「ありがとうございます!先程の事は、話をしてみますので」


近くまで来た所で、お礼を言うミリーナの言葉が聞こえた。


「村長さんと掛け合ってくれるそうです。ただ、村に泊まるなら、手伝って欲しい事があるそうです」


ミリーナが近付いて来ると、許可が取れた事を教えてくれる。


「構わん。四十人もおるのだ。多少の事ならどうとでもなろう」


ミリーナにそう返事をして、後ろで待機していた集団の先頭にいた細身の男に話しかけた。


「おぬし、名は?」


「ジルアートと申します」


「そうか。お主をこの集団のリーダーとする。他の者達の中で、お主が信頼出来る者はおるか?」


「えっ?い、いや、はい。昔馴染みがいます」


「ここに呼べ」


ジルアートという名の男が、私の言葉に戸惑いを見せつつ、慌てて集団の中に入って行った。


「つ、連れて参りました。リグルスという者です」


その場で待っていると、ジルアートが自身より少し背の高い男を連れて戻って来て紹介する。


紹介された方の男は、困惑した様子を見せつつ軽く会釈した。


「では、リグルス。お主をジルアートの補佐とする。私がいない間、お主達で皆を上手く纏めてくれ」


「「は、はいっ!」」


急に任命された二人が、やけに肩に力が入った様子で返事した。


「そう固くなるな。それと、念話魔法を使える者はおるか?」


「確認します!少しお待ち下さい」


ジルアートとリグルスが二手に分かれて集団の中に入って行った。


「「念話魔法を使える者はいるかー?」」


という、二人の声を聞きながら待っていると、ジルアート達が二人の女と男一人を連れて戻ってきた。


「三人か…。そこの女二人は、ジルアートとリグルスに、男は集団に混じって、私の指示を皆に伝えてくれ」


ジルアート達に伝え終わった所で、村長に掛け合いに行っていた村の者が戻ってきた。


「お待たせして、申し訳ありません。どうぞこちらへ」


戻って来た村人に誘導されて村長の家まで来ると、家の中から初老の村長らしき男が出てきた。


「どうぞこちらへ」


「いや、先を急いでるんでな。詳しい話はこの二人にしてくれ」


私が僅かに顔だけ後ろに向けて視線送ると、後ろに控えていたジルアートとリグルスが私達の前に出る。


「そうですか。では、お二人はどうぞ中へ。申し訳ありませんが、皆様にお入りいただける程広くはありませんので、他の方々はこのままお待ち下さい」


「必要になれば念話する。こちらは任せたぞ?」


家に入ろうとしていたジルアートとリグルスに声をかけると、2人はこちらに軽く会釈をしてそのまま中に入って行った。


「…さて、私達も行くぞ」


二人が中に消えて行くのを見届け、ミリーナに声を掛けた。


「…この辺りで良いだろう」


村を出て、街道沿いに南下した所にある森の少し開けた場所に来た。


「はい。ここなら、転移魔法を使っても目立たないでしょう」


「では、行くぞ?」


返事も聞かずに、ミリーナの肩に手を置いて転移魔法を使った。


(今度は良い場所に出れたな…)


転移先で広がる景色の中に、少し離れた位置にあの村の壁が見えた。


「今回は、街から少し離れた場所に転移しましたね」


「ま、前は土地勘が無くて失敗しただけだ!」


「それで、今回はどうするんですか?」


「やる事は前と対して変わらん。とりあえず、メイルが言っていた地図を回収する」


「村の解放が目的では無いのですか?」


「そっちは出来たら…程度だ。そもそも村人がどうやって洗脳されたのか分からん以上、そっちを目的にすると余計な事に巻き込まれかねん」


「ですが、ここであの村を押さえられれば、こちらにとっても有利なのでは?」


「だろうな…。目の前にリダールがあるのだから、奇襲もやり易い。が、それは相手にバレずに、あの村を押さえる事が出来た場合だ」


「それは、そうですが…」


「まぁ、全く何もせん訳では無い。そんな事より、前より長時間おることになるが、大丈夫か?」


「恐らく…としか」


「これを持っておけ」


私は修行中に飲ませまくっていたマナポーションを、十個程ミリーナに渡した。


「そろそろ行くとするかの。さっさと知覚阻害魔法を発動しろ」


慌てて自分に向けてミリーナが魔法を発動したのを確認すると、前と同じ様に認識阻害魔法、遮音魔法、感知魔法、空間把握魔法を同時発動する。


ついでに、ミリーナにブースト魔法を掛けた。


「な、何をしたんです?」


「オレイカルコスの結界が使える様になったそなたなら、前より長時間耐えられるだろうが、念の為にブースト魔法で知覚阻害魔法を強化した。気をつけろよ?今のお主の五感は通常時より遥かに鈍くなっておるからな?」


「な、何ですか?」


知覚阻害の影響で聴覚までダメになったミリーナが問い返して来た。


掛ける前に言えば良かったと後悔しつつ、面倒くさいのを我慢して念話魔法を使って同じ内容を伝えた。


「オウカ様がブースト魔法を掛けてから、視覚もダメになったんですが…」


ミリーナが、視覚までダメになった事を念話魔法で訴えてくる。


「これで良いか?」


「あっ!大丈夫です!」


諦めてブースト魔法を解除すると、念話魔法では無く普通に話しかけた。


「面倒だが、そなた。私のオレイカルコスの結界の領域に入って…。?……」


オレイカルコスの結界を足元に張ろうとした所で、何故前回ミリーナが洗脳の影響を受けたのか疑問に思って黙り込んだ。


「?。どうかしました?」


「あ、あぁ。どうしてそなたが洗脳の影響を受けたのかと思ってな」


「言われてみれば、そうですね…。あっ!?そういえば、変な匂いがしてましたね…」


「匂い…か…」


しばらく腕を組んで目を瞑って考え始めた。


少し経って結論に行き着くと、目を開けて笑みを浮かべた。


「喜べ。そなたはあの村を解放したい様だが、どうやら出来そうだぞ?」


「何故です?」


「前回忍び込んだ時、私達がバレた訳では無い。なのに、そなたが洗脳されかけたのは何故だと思う」


「洗脳効果のある何かを村に漂わせていたからですか?」


「そうだ。だが、何故ずっと漂わせておく必要がある?つまり、殺さねば解除出来ない洗脳では無いと言う事になる。そのタイプなら一度掛けてしまえば、永続的に効果が続くからな」


「どうしてそうしなかったんでしょうか…」


「もちろんリスクがあるからだろう。そのタイプの洗脳は、余程優秀な者でも十人くらいが限界な上に、洗脳された者に何か有れば自分に返ってくる」


「なら!原因を取り除けさえすれば、解放出来ますね!」


「あぁ。恐らく、メイルが言っていた装置か前に見かけたあの者達がその原因だろう。という訳で…」


最後まで言い終える前に、ミリーナに知覚阻害魔法を嗅覚だけを対象にして掛けた。


「な、何を!?って、あれ?全く匂いがしなくなりました」


「相手が嗅覚で洗脳をし掛けてくるのなら、そいつだけ封じれば良い話だからな」


「では、予定を変更して。目的は村の解放という事で良いですか?」


「あぁ。しかし、先に地図は回収する。必要な物である事に変わりは無いからな」


「分かりました」


ミリーナの返事を合図に村に向かって歩き始めて、村の入り口まで来ると、槍を持った二人の兵士が虚な目をして立っていた。


私はミリーナの肩を人差し指で軽く叩くと、上に見える見張り用の木の櫓を指す。


ミリーナが軽く頷いたのを見てお姫様抱っこの形で抱き抱えると、櫓にいる者が別の方を見ている隙に、櫓の屋根目掛けて飛び上がった。


音を立てずにスッと着地すると、ミリーナを下ろして屋根の上から櫓の中にいる者の様子を伺う。


(やはりか…)


覗き込んで見ると、あの時見た者と同じ様に黒いローブを纏った者が、櫓から村の様子を見ていた。


「…どうですか?」


私の纏う雰囲気を察してか、念話魔法でミリーナが尋ねてきた。


「やはり、あやつらがおるな」


一度身体を起こすとミリーナの方を見て、念話で返事をする。


「一人だけですか?」


「あぁ。殺すのは容易いが、倒すとなると一撃で倒さねばならん。黒いローブでどんな装備をしているのかが分からんし、死ぬと自爆する様な物を持っている可能性もある。おちおち殺す事も出来んし…。かと言って、ここからなら村のどの位置からでも見えるから、確実に邪魔になるしのぅ…」


「どうにか出来ないのですか?」


「もう少し考える…。しばらくはそこで待機しておれ」


そう言って、再び櫓の中を覗き込む。


(しかし、見ているばかりいても仕方無いのぅ…。試しに、()てみるか…)


魔力を眼に集中させて、精霊眼エレメンタルサイトと同じ様な効果を待つ真龍の眼を発動する。


(黒いローブを纏っているが、鎧みたいなのも着ているのか…。それに…、やはり…)


透視効果で黒いローブの中を()ていたが、胸の辺りにやたら魔力が集中しているのに気付いた。


(心臓が止まれば、自爆でもするのか?なら、()()()殺す訳にも行かんな…)


相手がこちらに向かって歩いて来ようとふり向いた瞬間に屋根から飛び降りて宙を蹴り、櫓の中に飛び込んで一気に懐に入る。


「なっ?!なん…」


最後まで言わせる事なく相手の首を掴むと、直様ミリーナに修行する為に使ったあの場所に転移した。


「な…かっ、かはっ!」


ゴキッ!


ジタバタもがいていた相手の首を力一杯握って首の骨を折ると、直様空中に思いっきり放り投げた。


直後に、空中で爆発して爆音と爆風が辺りを駆け抜けた。


その様を見届けると、再び村の外に転移して、櫓の屋根へと飛び乗った。


「あっ!あれ?!さっき櫓の中に飛び込んで行ったのでは?!」


ミリーナが隣に立っていた私に驚いて、声を上げる。


「いくら防音魔法を掛けているとは言え、静かにせぬか」


「ですが、どうして…」


私に注意されて声のトーンを落とした。


「ここで殺す訳にも行かんかったのでな。首を掴んで転移した」


「それで、その方は…」


「もうこの世にはおらんよ。自爆しおったわ」


「そこまで徹底しているという事は、存在を残す訳にはいかないという事でしょうか…?」


「そういう事だろうのぅ。この徹底ぶりとなると、やはりそなたの父親の見立てた通り、帝国が噛んでおるな…」


「父上がそんな事を…?」


「ああ。と、そんな事より、こうなってくると厄介だのぅ。恐らく村の中に居る者達も、同じ様に殺すと…いや、心臓が止まると自爆する可能性が高いな…」


「どうします?」


「村を押さえた事を知られる訳には行かんからな。一先ずは、地図を回収するのと、村人達を洗脳している原因を取り除くのを優先する。黒ローブどもは状況次第だな。殺すのは、後回しだ」


「やはり、殺すしか無いのでしょうか……」


「この国を守りたいなら、敵国…ましてや、攻めて来ようとしている敵に情けをかけるな。死にたいのなら構わんが」


「わ、分かりました…」


さっきと同じ要領で櫓の中に入ると、屋根の上から伸びてくるミリーナの手を掴んで櫓の中に引き入れた。


「あそこがメイルさんを助けた場所ですね」


二人で村を見下ろしながら場所や黒ローブ達を確認していると、ミリーナが話しかけてきた。


「ああ。大体の黒ローブどもの位地取りも掴めたな。あそこを見てみろ」


「えっ?どこですか?」


櫓からギリギリ見える北側の奥を指指さすと、ミリーナが目で追いかける。


「良く見てみろ。どう見ても、周りと異質な物が頭を出しておるだろう?」


「あっ!本当ですね!!あれが、洗脳の…?」


「恐らくそうだろう。だが、周辺に黒ローブの奴らが集中している。奴等をどうするか…」


「確かに厄介ですが、そうであれば尚の事怪しいですね」


「一先ず、地図の回収に向かうか…」


一通り周辺状況を確認し終えると、再び抱き抱えたミリーナが


「キャッ!」


と、小さな悲鳴を上げるのを無視しつつ、自由落下に身を任せて櫓から飛び降りた。

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