俺の妹のためなら異世界転移するのもいいのかもしれない
「なぁ、俺の勝手で迷惑ばっかりかけてごめんな・・・・・・」
「いいんです兄様、これもここまで守ってくれた兄様のためですから」
こうして俺たちは異世界に行けるという画面に飛び込んだ。
「え~、そんなことあるわけないじゃん!」
周りの女子達がなにか話している、眠いのに周りで騒がしくしてはほしくないのにな。
「だからホントにあるんだって!」
「それじゃあ今度いっしょに試してみよっか?」
「やるやる~!!」
最近俺の学校では異世界に行けるという話が流行っている。
あくまで噂レベルの話だが面白いことがほかにないならこうした話に行きつくのは自然な話だろうけどな。
「ーーというわけで今日の授業は終わる。みんな遅くならないうちに早く帰れよ。」
「はぁ、やっと終わった・・・・・・」
「兄様、どうしてそんなに疲れているのですか?」
校門の前で待っていた妹の氷華にそう声をかけられた。
「周りの女子がうるさすぎて寝れなかった」
実際授業中にあんなにうるさい奴らをなんで教師は注意しないんだよ、あの教師は馬鹿なのか?
まぁ俺らも注意されないような授業だからゆっくり寝ようとしてたんだけどな。
「授業中に寝るのもほどほどにしておいてくださいね、勉強できるとは言っても目をつけられちゃいますよ?」
「まぁ全部のテストで満点なら文句は言われないだろ」
自分で言うのもなんだが俺はある程度頭がいい。
隣を歩いてる妹の氷華を守るために勉強をしまくっていたからな。
そんなことを考えながら帰っているときにふと横目で氷華を見ると満面の笑みで見つめ返してきた。
今日は随分と楽しそうだ、なにかいい事でもあったのかもしれない。
「「ただいま!」」
二人声を合わせて我が家の玄関をくぐるがもちろん返事はない。
両親はとっくに他界してしまって今は俺と氷華の二人暮らしになってる。
親戚に引き取ってもらえるという話もあったのだがあいつらは借金まみれの泥沼生活をしていたらしいので丁寧にお引き取りいただいた。
あんな奴らに氷華を渡したらどうなるのか分かったものではないし、安定した生活が保障されるわけでもない。
アルバイトで一応生活資金をためているが学生のバイト代もたかがしれていて生活が裕福とは言えないものなんだけどな。
「兄様はいつもがんばっていますね」
「どうしたんだ急に、俺に惚れたか?」
「ほ、惚れていません!」
面と向かってそう言われるのも少し寂しいものがあるよ、お兄ちゃん悲しいよ。
そもそも俺なんて全然がんばれていないしな。
「それでどうして急にそんなこと言い出したんだ?」
「久しぶりにいっしょに帰れたので改めて普段がんばっているんだと思っただけです」
普段はアルバイトをしているせいで氷華といっしょに帰る機会は少ない。
今日の帰り道であんなに嬉しそうに笑っていたのはそれが理由なのかもしれない。
「どうせ食べるものもほとんどないし腹が減る前にいっしょに寝るか」
「はい!」
そう元気に返事をしてうれしそうにベッドに潜り込む。
早いところ眠って明日に備えるとしよう。
「ーーっ!?」
俺はバイブの音で目が覚めた。
時計を見るとまだ朝の5時半だ、一体こんな時間になんの要件だ?
俺の携帯は普段使わないため学校との連絡と氷華と連絡でしか使っていない。
隣で氷華は寝ているので今回のメールはおそらく学校からのものだろう。
「なになに、行方不明のお知らせ?」
どうやら俺の学校の人間が行方不明になっているらしい。
「えっと名前は・・・」
その名前を見た瞬間に思考が一度完全に止まった。
こいつは俺のクラスでうるさくしていたあの女子達だったのだ。
突如とした行方不明で学校は急遽一日休校にするとのことだった。
「兄様、どうしたんですか・・・・・・」
眠い目をこすりながら氷華が声をかけてきた。
「悪いな、起こしちゃったか」
「私は大丈夫です、それよりどうしたんですか?」
こんなに眠そうにしてるんだからきっと大丈夫ではないんだろう。
けど今は氷華の好意に甘えていまのメールのことについて話した。
「行方不明で休校ですか、今日はそれだとどうやって一日を過ごしましょう・・・」
学校にいれば生活に必要なものがある程度そろっているので家の中には必要最低限以下のものしか存在しない。
「なぁ氷華、異世界に行けるかもって言ったら信じるか?」
「兄様ってあんな変な噂に流されるような人でしたか?」
氷華の疑問は至極真っ当な疑問だった。
俺は普段噂とかを信じるタイプの人間でもなければ人の話に流される人間でもない。
幼いころから妹を守る為に全力で大人と戦い続けていれば自然と意志が強くなるというものだ。
けど今回の件に関しては話が変わってくる。
俺の近くで異世界に行けるか試してみようと話していた女子達が行方不明で全く手がかりがないというのだ。
「けど、兄様がその顔をするってことはきっと本気なんでしょうね」
「俺っていまどんな顔をしてる?」
「いつも私を守るときの顔をしてます!」
そういってから氷華は俺のパソコンの電源をつけた。
「確かこんな感じのことを検索するといいんだっけか」
そう独り言のようにつぶやきながら検索ボックスに言葉をいれ静かにエンターキーを押すと画面が見たことないような色に変わり始めた。
「なぁ、俺の勝手で迷惑ばっかりかけてごめんな・・・・・・」
「いいんです兄様、これもここまで守ってくれた兄様のためですから」
こうして俺たちは異世界に行けるという画面に飛び込んだ。