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何故か田村家一家が玄関で揃い、そのまま全員で居間へ座った。
そしてお婆ちゃんは、お母さんとお兄さんに、さくらがここの世界の住人ではないことを説明した。
信じてもらえるような話ではないはずなのだが、
(お婆ちゃん)「と、いうわけでね、寝るとこも無い、行くあても無いさくらちゃんを、元の世界に帰れるまでウチに泊めてあげたいんだけど… 鏡子さん…どうかねぇ?」
(母 鏡子)「全然構いませんよ!! さくらちゃん!!家に帰れるまで、ずっとこの家にいて良いからね?」
(誠雪)「そうだね、遠慮しなくていいよ?」
母と誠雪は、即答でさくらを泊めることを許可してくれた。
二人とも人の話を疑わないお人好しだった。
(さくら)「あ、ありがとうございます!!」
(勇次)「はぁー…」
勇次はため息を漏らしながら少し安心する。
(鏡子)「私は「田村 鏡子」、勇次と誠雪の母親よ、辛い事があったらなんでも言ってね?」
(誠雪)「俺は「田村 誠雪」、町役場で働いてるから、今度町の図書館に神社か桜に関する資料がないか聞いてみるよ」
(さくら)「……」
誠雪を見つめ少し考えこむさくらは、とある疑問を胸に勇次へ耳打ちしてきた。
(さくら)「……ねぇ、誠雪さんって、ホントにアンタのお兄さん?」
(勇次)「おう」
(さくら)「ウソでしょ!? だってアンタとは顔の質が…」
聞いて損した、大きなお世話だ。
(勇次)「ぐっ… どうせ俺の顔はあんなにイケメンじゃねぇよ… さて、飯にでもするか!! 期待していいぞ、何てったって今日の夕飯はさくらが作ってくれたからなぁ!!」
そう言って悪魔のような顔をしながら、勇次はオムライスを取りに台所へと向う、
(鏡子)「え? さくらちゃんが作ってくれたの!?」
(さくら)「えぇ… これからお世話になるのに何もしないわけにはいかないですから、オムライス……」
さくらは自分の作ったオムライスをふと思い出した。
勇次に作ったオムライスはオムレツがなく、ただのケチャップ炒めと化している。
それをこの家族に見せたらどうなるだろう、
それはマズイ…
非常にマズイ…
(さくら)「わー!! ダメダメダメー!!」
(鏡子)「さくらちゃん?」
さくらは急いで台所に向かった。