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「バカにしないでよ!!」の言葉どうり、他の事はテキパキと進めて行くさくら、
(勇次)「……これだけ出来れば任せても大丈夫だな… さくら、俺、風呂やってくるから後は任せた」
(さくら)「わかったわ」
夕食の準備はさくらに任せ、勇次は風呂を沸かすために外に出てボイラーへと向かう、
なぜ風呂を沸かすために、わざわざ外へ出るのかと言うと、勇次の家は今時珍しい薪風呂だからだ。
まあ近々灯油ボイラーに変える予定ではあるが、今は薪でしか風呂を沸かす方法がないので我慢するしかない、
ちなみに仕組みとしては、
ボイラーに薪を入れ、風呂場にあるスイッチを回せばボイラーから火が出て薪を燃やす。
ある程度すると火は止まり薪だけが燃える。
後はお風呂の水がパイプでボイラーに通り、お風呂を温める。
いたってシンプルな構造だ。
(勇次)「これで風呂はヨシと… さて、台所に戻るか」
台所に戻ると、綺麗なオムライスが2つ出来あがっていた。
(勇次)「おぉ…、卵割ること以外はスキルあるな、 あ、言い忘れてたけど、オムライスは5個作ってくれればいいから」
(さくら)「……わ、わかった…」
少し言葉をつまらせるさくらに勇次は違和感を感じたが、そのまま任せることにした。
そして、しばらくして残り3個のオムライスが出来上がった。
しかし、
(さくら)「……」
(勇次)「……なぁ… 5個中4個はスゲー良く出来てるよ… この最後の1個はなんだ?」
勇次が持ったオムライスには、卵の薄焼が小さく上に乗せてあるだけで、全くご飯の赤い部分が隠せていなかった。
(さくら)「あ、アンタの分よ…」
(勇次)「はぁ!? なんで俺のなんだよ!! お前が卵1個ムダにしたのがいけねぇんだろ!?」
(さくら)「卵が乗ってるんだから立派なオムライスでしょ!! 文句言うな!!」
(勇次)「肝心な部分が隠せてねぇんだよ!! オムライスのオムはどこいった!!」
(さくら)「う、うるさい!!」
(勇次)「……待ってろ… 今このスプーンで口に放り込んで、お前のオムライスにしてやらぁ!!」
(さくら)「絶対イヤ!!」
言い争いながらオムライスをさくらの口に放り込もうとする勇次と、それを阻止するさくら。
ギャアギャア騒いでいると、それを止めるかのように家のチャイムが鳴り響いた。
‐ピーンポーンー…‐
(さくら)「あ、誰か来たみたい」
(勇次)「くっ… 取り込んでる時に… しょうがねぇ、さくら」
(さくら)「ん?」
(勇次)「ばーちゃんだと思うから出てくれ」
(さくら)「じゃあそのオムライスはアンタのね」
(勇次)「……ハァ… 分かったよ…」
さくらはエプロン姿のまま玄関に向かう、その間にもチャイムは連続で鳴り続ける。
- ピーンポーン…ピピピピピピピピーンポーン… -
(さくら)「は、はーい!! 待ってくださーい!!」
急いで玄関の鍵を開けるとすぐさま扉が開いた。
そして、目の前に現れたのはお婆ちゃんではなく、片手にバッグを持ち、スーツを着こなした年上と思われるイケメンだった。
(イケメン)「なんだよ勇次ぃ~ 居たんなら早く出てくれよ。春と言えど夜の外は寒………って、あれ?誰?」
(さくら)「あ… はぁ?」
なんとも図々しいイケメンだなと思ったが、いくらイケメンでも苦手な男なので、さくらはろくな言葉が出てこない、
それをいいことにイケメンは言葉を畳み掛けるのだ。
(イケメン)「あ、そうか、そう言う事か… キミ!!」
(さくら)「え?」
(イケメン)「俺のことは「お兄ちゃん」と呼んでくれないか?」
(さくら)「……はあ?」
(勇次)「兄貴、それ若干セクハラだから」
(さくら)「え!?お兄さん!?」
さくらは驚くと同時に一安心した。
それは、このイケメンが勇次のお兄さんだったからでなく、
固く握りしめるこの拳が出る前にお兄さんだと気が付けたからだ。
つまり、危うくぶん殴るところだった。
(兄 誠雪)「お、勇次ぃ~ なんだよ彼女なんか連れてきて~ 隅に置けないな~」
(勇次)「ちげぇ!!!」
(?)「どうしたの?誠雪、玄関で止まって…」
(お婆ちゃん)「からだ冷えちゃうよ?早く中にお入り」
(誠雪)「よ!! 母さん、お婆ちゃん、お帰り!!」
お兄さんの後から、勇次のお母さんとお婆ちゃんが現れた。
(母)「ま!! まぁ~まぁ~まぁ~ 勇ちゃんがカワイイ女の子連れて来てる~」
(お婆ちゃん)「その子はねぇ、さくらちゃんって言うんだよ?」
(母)「あら!! お義母さん知ってたんですか?教えてくれれば良かったのに~」
(誠雪)「ホントだよお婆ちゃん!! お似合いじゃないかこの二人~」
(勇次)「どこが!!」
勇次は全力で否定しているが、そんな勇次を無視して誠雪がさくらに話かける。
(誠雪)「あ、さくらちゃん?」
(さくら)「は、ハイ!!」
(誠雪)「……俺のことは「お兄ち…」
(勇次)「うるせぇ!! 早く中入れ!!!」