ほらふきじいちゃん
ぼくのおじいちゃんは、周りの人からほら吹き爺さんと呼ばれている。すぐにうそをつくし、いい加減な話をするからだ。お母さんにも、あまり話をしてはいけませんなんてよく言われる。
でも、ぼくはそんなおじいちゃんの話が大好きだ。特に、若い頃にした冒険の話は、何回聞いてもドキドキワクワクする。1人で海を渡って、大きなタコやサメと戦った話。山賊に捕まって、命からがら逃げだした話。砂漠の中から金銀のお宝を見つけ出した話。
みんなは嘘だっていうけれど、ぼくはそうは思わない。おじいちゃんはきっと、本当に冒険をしてきたんだ。
今日も、ぼくはおじいちゃんの話を聞いている。嵐の中、2人の仲間と山を越えていると、すぐ近くに雷が落ちて大きな穴が空いた。その穴をのぞいてみると、何かが埋もれている。掘り返してみると、それは宝箱だった。中には金や銀、ネックレスに短剣なんかも入っていたそうだ。
おじいちゃんは、そのお宝をほとんど仲間にあげてしまったらしい。
「別にお宝が欲しいわけじゃない。冒険するのが好きなんだ。」
そんなことを言っていた。
ある日、ぼくはまたおじいちゃんのうちに行った。でも、中には誰もいなかった。暇だったから、おじいちゃんの机をなんとなく開けてみた。
そこには、汚れた服で笑っている男の人が3人写っている写真があった。写真の裏には、
「楽しい冒険だった。また会おう。」
男の人の手には、短剣が握られていた。
その後も、ぼくはおじいちゃんの話を聞いている。
海賊に捕まった話、大きな鳥の背中に乗って空を飛んだ話、お姫様と恋をした話。
みんなは嘘だっていうけれど、僕はそうは思わない。
おじいちゃんは、本当に冒険をしてきたんだ。