9話 裏側
あれからすぐにルーは王宮に帰っていった
私たちが仲が良いことを内外に知らしめ、我が家に潜入している刺客をあぶり出すために忙しい中、わざわざ来たらしい
最初、王子って暇なのかと思っていたが、私と同じく王になるための教育や今後行う政務について勉強しているみたい
ルーが帰ったため、私はクレアを伴い部屋に戻った
「エレオノーラ様…お身体は…」
私が何も話さないからか、クレアが私に話しかけた
どうやら戸惑っているらしい
まぁそうだよね、普通は毒を飲んだら死ぬからね
ルーが勘違いをしてくれたから訂正しなかったけどきちんとお茶に毒は入れられていた
入れるところを見せることによって、わざと飲ませないようにはしていたけれど、私に毒を盛ったという事実があれば彼女は処罰されてしまうもの
だから私はクレアを処罰させないために毒入りのお茶を飲んだ
ゲームのエレオノーラには異常状態無効のスキルがあったから賭けに出た
賭けに勝ってよかった
まぁ、負けても解毒薬はあるから大丈夫だけど…
とりあえずクレアに話を聞こう
「大丈夫よ、暗殺者さん?」
クレアが息を飲む
「なぜそれを…」
あら?私も舐められたものですわね
あ、今の悪役令嬢っぽいな!
気をつけなきゃ!
「あなたがクレア・カーゾンではないことは知っていましたわ
10歳の箱入りの貴族令嬢のはずなのに全く足音がしないなんてありえないもの
その上であなたについては全て調べたわ」
私は今は第一王子の婚約者のエレオノーラ…暗殺の危険性はお父様やお母様から何度も注意を受けた
まぁ、6歳の子供になんてこと教えるんだよ!?とか6歳の子供を殺そうとするなよ!?とか雪としては思うけれど、そんなことばかり言って殺されたらシャレにならないからね
うん、背に腹は変えられないというか…
私が説明しても彼女は納得しなかったようだ
「なら、なぜ私をそばに置いたのですか?」
まぁ、普通なら暗殺される可能性がある人物をそばに置くなんてありえないよね
しかも暗殺者だし
でも、私は彼女をそばに置いた
「あなたは侍女として仕事をしていた時とても楽しそうだったわ
本当は私と殿下が婚約してすぐ私を殺すように命令されていたのよね?
いつでも私に毒を盛ることはできたはず
でもなぜか私に毒を盛ることもせず、むしろ悩んでいたように見えたわ
そして今日まで私を殺そうとしなかった
何度も催促を受けていたのにもかかわらず…よ
だから私はあなたをそばに置いたの
あなたは今の生活を気に入っているように思えたから
そうよね?」
そう、私はわざと暗殺者をそばに置いた
さすがに最初はそばに置かなかったけど、仕事を見て、もしかしたらと思ってお母様にわがままを言ったのだ
「さすがはエレオノーラお嬢様…
お嬢様が言った通りです
私は暗殺者ですが、ここでの生活が楽しかった
初めてだったのです
私を暗殺者としてではなく人として扱ってもらったのは…だから催促が来るたび殺さなきゃと思いましたが、理由をつけて後回しにしていたのです
ですがこのままでいるわけにはいきません
でも、お嬢様を殺すことはできなかった
一緒にいるうちにお嬢様を好きになっていたのです
だからわざと王子殿下に見えるように毒を入れ、私を処罰してもらうために」
彼女は泣くのを我慢しているようだった
ふふっ
とりあえずケゾルストン侯爵家は潰すそう
悪役令嬢っぽいかもしれないけど、こんな可愛い子を泣かすなんて許さん!
でも、それより前にやることがあるよね!
折角アプローチしてくれてるんだから!
「あなた、このまま私付きの侍女としてここに残りませんか?」
「え?」
「だって今の生活が好きなのでしょう?
なら、このまま私に支えてくださいませ」
「で、ですが…
私はお嬢様を殺そうと「それがなんですの?
私は死んでませんし、そのような事実はありません
あなたが私付きの侍女になることは王子殿下も認めておりますわよ?
無理にとは言いませんが、もしこの生活が楽しいと思っていたのなら私を支えてくださいませ」
私が食い気味にそういうと彼女ははらはらと涙を流し始めた
ちょっ!?
私悪いこと言った!?
「こんな私を…
お嬢様…私はお嬢様にお仕えいたします
この命に代えてもお嬢様の命令を遂行致します!」
どうやら泣いているのは嬉し泣きのようだ
でも…重い!
覚悟が重すぎるよ!
誰かを暗殺する命令とかするつもりはないし
「いのちはかけなくてもよろしいですわ
あなたはもっと自分を大切になさいませ
そういえばあなたの本当の名前は?」
「私たちには名前はありません
わたしはeと呼ばれていました」
それを呼ぶのはなぁ…
e…か
ならあの名前でしょ!
「じゃあこれからはエルサと呼ぶわ!
いいかしら?」
「はい!
わたしはエルサです!」
よかった!
喜んでくれた!
実はわたしは最近気づいたことがある
わたしには友達がいない!
エルサと友達になりたいなー