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3人でカラオケに行く事となった。


カラオケ店の前で現地集合という事で日陰で二人を待つ事にした。

俺は先日の帰りの電車内での出来事を思い浮かべていた。


あのプリクラ、凄かったかな。

数枚しか見れなかったけど、一瞬で見た感じどれもこれも結構過激な感じのポーズ取ってた気がする。



:あかりちゃんって結構えっちな会話もいける子だよ:


普段あの2人はどんな会話してるんだ?

あの二人、そんな話が出来るぐらい仲良しなんだろうな、俺抜きで結構遊んだりしてるよなあのプリクラの数から察するに。


・・・。


えっちな会話か、俺の前では全くそんな話しないから意外だったな。

してたらしてたで別に構わないけども。


・・・。


今日はどんな下着履いてるの?とかか?

変態の常套句だな。


・・・。


下着か、この前の胸チラプリクラでピンク色のブラがチラ見えしていた、あかりちゃんに似合う色だな。

やすなちゃんの方は見えなかったな、やすなちゃんは水色とか似合いそうだな。


まさかつけてない?見えなかった、のではなく、初めから存在しなかったのでは?


さすがにパンツははいて・・・


「アキラくん!」


「うわぁっ!」


「わぁっ!」


目の前にいつのまにかあかりちゃんがいた、俺が驚いて大声を出した為か、驚いた表情している。


「あかりちゃんか、びっくりしたよ・・・で、何その格好」


「えへへ~似合う?」


なんとあかりちゃんが夏服のセーラー服を着ていた。

襟とスカートが抹茶色で山吹色のリボンがついていた。

このいかにもな色合いにあかりちゃんの学生の頃の制服って事はないだろうな。

髪型はあかりちゃんおなじみのツインテで、制服と合わせてよく似合っている。

そして背中にはいつもの黒いリュックカバンが背負われていた。


「ギルドから借りて来たの?」


「なんでわかったの!?実は現役女子高生だよ!って言おうかと思ってたのにぃ~」


やっぱりか。

あかりちゃんは18歳以上って事がこんな形で発覚するとは。

もしかしたら俺より年上という可能性もあるんだよな。


それにしても。


「あえていうけど、スカート短すぎない?誰かに見られやしないか心配だよ」


「うん、ここへ来る途中も風がちょっとふいただけで中身見えまくりだったよ」


「おいおいだめじゃん!そんなのはいちゃだめだって!」


「ふふふ、中見たい?」


えっ!?平気な顔して何言ってんだよ。

あっ、これか、あかりちゃんってえっちな会話もいけるってやつか!

この前バレたから俺にもそーいう会話をふってきたんだな!

甘い甘い、おれをからかおうたって、そう簡単にはからかわれないぞ。


「ふっふっふっ、そんな冗談に俺がだまされると思うかい?あかりちゃんがそんな事するわけないだろう」


「見たいの?見たくないの?」


「見たい」


ここで見たいなんて言ったら何を思われるか。

あ、この人そーいう目で私を見てたんだって思われるに違いない。


「うん、じゃあ見せてあげる」


「あれ?」


あかりちゃんがゆっくりと両手でスカートの裾を持ち上げていった。

み、みえる、みえちゃうって!みえちゃだめだ!


俺は両手で目を覆った。

でもやっぱりきになるぅ~。


指の間から見た。


「かっー!なんじゃこりゃぁ!」


手をどけてハッキリと見た、あかりちゃんの短パンを。


「やられた!だまされた!本気にした俺がバカだったー!」


「ふふふふっ、だま、され、たぁー!ふふふふっ」


あかりちゃんに笑われた。

恥ずかしい。

俺の事、そーいうようなヤツだって思ったに違いない。

実際そーいうようなヤツなのだから仕方ないか・・・。


「おかしいと思ってたんだよ~あかりちゃんってそーいう事する子じゃないじゃん、おかしいってわかってたのになぁ~っもうちょっと冷静に考えれば短パンの可能性も指摘できたはずなんだよぉ~くそぉ~くそぉ~恥ずかしいなぁもぉ~!」


喋ってないと恥ずかしくてたまらん。


「ふふ、ごめんね、じゃあ今度こそホントに見せてあげようか?」


「もうだまされないぞ!そんな平気な顔してそんな事、言えるわけないだろ!」


「ほんとは凄く恥ずかしぃんだよ、意識しないようにしてたのに、そんな事言われたら恥ずかしくなってきちゃった」


あかりちゃんの頬が赤く染まってきた、マジで言ってるのか?ウソだろ!


「うそでしょ!?」


「短パン脱いで見せてあげようか?」


あかりちゃんはかなり恥ずかしそうだ、マジだこれマジなやつだ。


「み、みせなくていいよ、そんな事しなくていいから」


「見たいの?見たくないの?」


「見たい」


見たくないにきまってるだろ!俺はあかりちゃんの事そんな目で見てないからね!


「うん、じゃあ脱ぐね」


「あれ?」


あかりちゃんがスカートを左手で持ちながら、右手の親指を短パンの上部に入れてゆっくりと下げ始めた。

俺はその光景から視線を外すことも、両手で手を覆う事も出来なかった。


が。


短パンの前部分の少し下げられた位置からは、どう考えても下着ではない抹茶色の生地が見えた。


「だまされたぁぁぁぁ!ブルマじゃん!それブルマじゃん!わかってた!わかってたよ!俺おかしいってわかってたよ!あかりちゃんそんな事する子じゃないもん!何でわかってたのに気づいてあげられなかったんだ!ごめん!ぎゃくになんかごめん!俺が悪い!俺が悪かった!!」


喋ってないと恥かしさで火がつきそうだった。


「うふっ、ふふふふっ、どうだった?これはチャームの魔法だよ、昨日寝ながらずっと練習してた甲斐があったよ~」


「まいりました、今から歌に弱い賞金首を倒しにいくからね、その魔法で魅了している間に歌を聞かせれば楽勝だね!」


「うんうん!これでまた新装備が買えるね!」


あかりちゃん、君のおかげで俺に新たな特殊能力が覚醒した。


「あかりちゃん、今この瞬間、俺は未来予知の特殊能力に目覚めた!、そしてさっそく見えたよあかりちゃんの未来の姿が」


「なにそれすごい!私の未来ってなに!教えてアキラくん!」


凄い目を輝かせているとこ悪いんだけど、俺をからかったお返しだよ。


「見えたっ!次に俺が発した言葉であかりちゃんが赤面して大慌てするだろう!」


「なに?何で私が赤面するの!?」


言ってやろうか。


「あかりちゃん、ここ繁華街、さっきからの一連の行為を通行人に見られまくってたと思うよ」


「へっ」


あかりちゃんの表情が固まった。

みるみるうちに顔全体どころか耳まで赤くなってきた。

あかりちゃんは周りを見渡している、さすが繁華街の中心部で、ここはカラオケ店の前、人通りは中々に凄かった。


「はっ、恥ずかしい・・・人前であんな事してたのかと思うと物凄くはずかしく・・・あっ、あぁ・・・ど、どうしよ!写真とか動画とか撮られてたらどうしよ!拡散!ネットに拡散されちゃうよ!」


俺の知る限りそんな事してる人はいなかったから大丈夫だとは思うけどな。

たとえ拡散されても、短パンとブルマだからそこまで拡散されるような対象でもないと思うな。


「うぅ、うぅぅぅ、恥ずかしいよぉ」


あかりちゃんが両手で顔を覆っている、あかりちゃんはやっぱりこーいう子だよな。

こんな子がパンツなんて見せてくるわけがない。


ん?ズボンのポケットに入れていた携帯がブルった。

出してみると、やすなちゃんからの着信だった。


「はい」


「アキラくんごめん!どうしてもはずせない用事ができちゃって・・・でも必ず行くから二人で先に入ってて!」


「うんわかったよ、でもなるべく早く来てね、やすなちゃんの歌、早く聞きたいから」


「はぇ!?う、うん・・・はやくいくぅ・・・待っててね、じゃあ、あとでね、またあとでね・・・。」


電話を切った。


「やすなちゃんどうかしたの?」


「急な用事が入ったんだって、でも後で必ず行くからって、じゃあ俺達だけで先にはいろっか?」


「うん、わかったぁ」


__________


カラオケボックス内の部屋に入った。

やすなちゃんに部屋番号を連絡しておいた。


最初の一曲目が流れて来た、聞いたことがあるぞ、アニメの内容はクソだったが、OPは凄くいいあのアニメのテーマだ!

クソアニメのオープニングはなぜか良曲が多いって定番だよな。

あかりちゃんがマイクを握りしめて手前の小さな舞台に立った。


歌い出しの英語からバッチリだ!しかも凄い声がかっこいい!あかりちゃんの普段の声からは信じられないような声質だ!

ダンスも凄い激しい!本物のアニソン歌手みたいだ!


サビの部分になり盛り上がりが最高潮となった、俺もちょっと重ねて歌ってしまった。

目が釘付けになってしまった。


歌が終わり、あかりちゃんの息遣いがかなり荒い、そりゃそうだろあれだけ踊ればそうなるわ。

額から汗もふきだしていて、かなり暑そうだ。


「ふぃ~最初から飛ばしすぎちゃったよ~アキラくんにどうしてもこの歌聞かせたくてはりきっちゃった」


あかりちゃんがそう言って俺の隣に座って、ジュースをストローで喉を鳴らして飲み始めた。


「すごいよあかりちゃん!ものすっごい、かっこよかった!」


「えへへ、ほんとぉ?ありがとぉ~嬉しいなぁ~へへ~」


「しまったなぁ・・・動画撮っとけばよかったよぉ」


「や、やだぁ・・・そんな、そんなそこまでするほどのものじゃないよぉ~」


あかりちゃんがかなり嬉しそうに手を振っている。


「俺としたことが・・・撮っておけばやすなちゃんにも見せられたのにな」


「へっ・・・あ、あぁ・・・そーいう、意味なんだ」


「うん、やすなちゃんもびっくりすると思うよ、あ、もしかしてもう既にやすなちゃんの前で歌った?」


「ん~ん、この歌はカラオケボックスに行ってずっと一人で練習してたから、誰かに聞かせるのは今日が初めてだったの」


「へぇ、どうりで上手いわけだよ!あとでもう一回歌ってくれる?」


「うんうん!そんなにきにいってくれたの!?」


「それもあるけど、やすなちゃんにも聞かせてあげてよ」


・・・。


「ねぇアキラくん、さっきからやすなちゃんやすなちゃんって・・・アキラくんてやすなちゃんと付き合ってるの」


「うぇっ!?な、なにをいってらっしゃるのですか!何言ってるのあかりちゃん、どした急に」


あれ?あかりちゃん?何か怒ってる?俺なんか怒らせるような事言った?

しかも付き合ってるとかって何?どーいう話の流れでそうなった?


「いつから付き合ってたの」


「まってまって、付き合ってないよ」


「うそっ!!!どうしてうそつくの!!!!」


物凄い声で怒鳴られ、あかりちゃんが俺に飛び掛かりそうな勢いで顔と上半身を近づけてきた。

その鬼のような形相に身体が震えた、怖い、あかりちゃんに対して初めて恐怖を感じた。


「うそじゃ・・ない・・・ほんとうだよ、おれはうそなんかいってない」


「じゃあ、じゃあなんでキスとかしてたの!!付き合ってもないのにあんなことしないよね普通!ほらうそだ!なんでうそついたの!!!うそをつくってことは何かやましいことがあるの!?なんで私にうそついたの!!ねぇどうして!!どうしてかいってよ!!!ねぇ!!!」


どうしてそんなに怒るの。

俺はウソなんか言ってない。

目の前で、鬼みたいな顔して大声で怒鳴らないでくれよ。

キス?キスって確かに何回かされたけど、あかりちゃんがそれを目撃出来た機会は。


「あの時見てたのか、誤解だよ!」


「誤解じゃないよ!だって私見たもん!キスしてくっついてたよねぇ?私の記憶がまちがってるっていうのかなぁ?それは絶対にありえないよ!!」


「そうだよ!あかりちゃんが見た事は事実だよ!説明するからとにかく落ち着いて!離れて、離れて落ち着いて」


「いいから早く言ってよ!」


「わかったよもぉ!あれはさ、俺があかりちゃんにふられたって言ったら、そんな俺を可哀想だと思ってちゅーして元気づけてくれたんだよ」


「そんな事でちゅーするわけないでしょ!何でウソつくの!」


「ウソじゃない!よく考えてよ!やすなちゃんの性格的にしそうでしょ?やすなちゃんの事はあかりちゃんの方が良く知ってるでしょ!!」


「え、う~ん・・・そういえば、わたしもそーいう励まし方された事ある」


「ほらほら!でしょ!」


「あ、あ、わたし、どうして、こんな、こんなこと言って・・・なんで」


ようやく俺から離れて座ってくれたけど呆然とした表情であかりちゃんがうわ言のようにブツブツ言っている。

どうした?なんでこうなった?誤解が解けたらそれでおしまいの話じゃないのこれ?


「とにかく誤解だよ、それはわかってくれたんだよね?」


「うん、でもさ、アキラくんてやすなちゃんの事好きだよね」


俺に顔すら向けずまるで床にでも話すかのように喋っているのがちょっと怖い。


「えぇ~好きって、もちろん恋愛的な意味だよね?そーいう意味では好きじゃないよ」


「そんなわけないよね、だってこの前火山のドラゴンを倒しに行ったときに、ずっと仲良く話してたよね?」


「火山のドラゴン?それはいつの話をしているの?」


「はぁ?いつって火山のドラゴン退治したときにきまってるでしょ?」


あかりちゃんが顔をコチラに向けて睨んで来た。

いつだよ火山のドラゴンって、俺たちはドラゴンなんか倒してないぞ。


「あかりちゃん!俺たちはドラゴンを倒していない!ドラゴンとはまだ戦っていないよ!」


「あーひどーい!私が買ってあげた装備のおかげでブレスも余裕で楽勝だったっていってたよね?忘れちゃったの?」


いや、ない、そんな会話をしたことがない、あのシャツはたしかに着たけど、その時はそんな話しなかった。


「あかりちゃん、本当に俺とドラゴン退治した?本当にしたか思い出してみてよ」


「したよ、だって私覚えてるよ、アキラくんがアイスソードでドラゴンの顔にキズをつけて、それから・・・」


あかりちゃんがハっとした表情になった。


「ごめん、これは私の頭の中だけの話だった、アキラくんと、ドラゴン退治するの楽しみで・・・だから、それ、その話を、考えて・・・あ、あぁ・・・ネタバレしちゃった・・・楽しみにしてたのに・・・うっうっぅ・・・楽しみにしてたのにぃ!」


あかりちゃんの目から大粒の涙がこぼれはじめた。

わからない!全然話の流れがわからないけど、あかりちゃんが泣いてる姿は見たくない!


「あかりちゃん!大丈夫だよ!じゃあ倒した事にしようよ!あ、あぁそうだ!アイスソードはアイスドラゴンの牙から作ったんだよね?いや作ったんだよ、あかりちゃんがアイスドラゴンとひとりで戦って、その牙で魔法剣を作ったんだよ!」


「わたしそんなの作ってない」


「いいや作ったね!俺知ってるし!あかりちゃん俺の為に変換魔法を使って剣を仕上げてくれたよね?眠い眠いって言いながら、その時、俺にアイスも作ってくれたでしょ!覚えてないのかよ!」


「そ、そうなんだ!私そんな事してたんだ!たしかにアイスは作ったよ!そうなんだ、わたし魔法剣なんて作れたんだ、知らなかったよ、でも、でも、私アキラくんの役にたてたんだね!そっか、そうだったんだ!」


あかりちゃんがようやく落ち着いてきたけど、また呆然と床を眺めはじめた。


「ほんとにこの世界が異世界だったらよかったのに」


消え入りそうな声であかりちゃんがぼそっとつぶやいた。


「あぁがっかり!がっかりだなぁ!あかりちゃんには見えていないの?今俺達モンスターに囲まれてるよ?あいつらには俺の剣が効かない!俺が敵を引き付けてる間に、歌を歌ってくれる作戦だったよね?」


「見えてるよ、見えてるけど・・・」


「そうだ、その調子だ!ここは異世界なんだよ!今俺達ピンチなんだよ!ほらあかりちゃん、このマイク型魔法のステッキを使って歌を歌うんだ!」


あかりちゃんにマイクを手渡した。

少し間があって、あかりちゃんに笑みがこぼれて来た。


「うん!私歌うよ!」


曲が流れて来た、がんばってあかりちゃん!


あかりちゃんが激しいダンスで腰をフリフリしている、曲調はかわいいのに、動きはやけに激しいな!


「ぐぬぬぬ!あかりちゃん!これ以上は抑えきれない!今こそチャームを使う時だ!」


「うん!ちょっとまってて!」


あかりちゃんが短パンを脱ぎ始めた、よし、抹茶ブルマで敵を魅了って・・・あれ?

足元には短パンと抹茶色のブルマが落ちていた。


あ。


見ちゃったよ。


激しくダンスするからスカートがヒラヒラしてその勢いでチラチラチラチラ、ピンク色の下着がパンチラしていた。

もう見ません!十分です!


「うおおおおお!!!」


色んな意味で興奮していた俺は思わず叫んでしまった。

あかりちゃんの絶唱のおかげで見事にモンスター達を倒した!


「あかりちゃんやったぞ!今回もあかりちゃんがいなかったらやばかった!いつもいつも助けてくれて本当にありがとう!」


「はぁはぁはぁはぁ・・・」


あかりちゃんが小さな舞台の上で、息を荒くさせながら俺をじっと見ている。


「アキラくん!」


あかりちゃんが小さな舞台から飛びあがるようにして俺の胸に飛び込んで来た。

思わず抱きしめてしまった。


「やった!やったぁ!嬉しい!私が倒したの!私があんなにたくさんいたモンスターを倒したんだよ!」


よっぽど嬉しかったんだな。

嬉しすぎて興奮状態って感じだ。


「よくやったね!これで村の人たちも安心だ!さてと・・・あかりちゃんそろそろ離れてくれないかな?」


「うん、ごめんね、嬉しすぎて思わず抱きついちゃった、てへへ」


あかりちゃんがゆっくり俺から離れた。

照れ笑いを浮かべるその表情を見ていると、再び抱きしめたい衝動にかられたが、必死に抑え込んだ。


「とりあえず座ろっか」


「うん!」


二人同時に座り、妙な沈黙が続いた。

俺も何か歌おうっと、タッチパネル式のナビの機械を手に取り、曲を検索した。


「あのねアキラくん、今から私が言う事全部やすなちゃんには内緒にしててほしいの」


「うん、なに?」


俺は曲を検索しながら意識を半分あかりちゃんに向けた。


「あのね・・・」


携帯の振動音がなった、テーブルに置いていた俺の携帯電話が震えている。

手に取ると着信はやすなちゃんだった。


「あかりちゃん、内緒の話って」


「出て」


そう言われて電話に出た。


「はい」


「アキラくん!ってあれ?何か静かだね?今何してるの?」


「何してるって・・・休憩してる」


「そうなんだ!休憩って・・・あの、あの、あかりちゃんとちゅーとかしてないよね?」


物凄く不安そうな声で、おかしなことを聞いてきた。


「するわけないでしょ」


「うん、うん、その言葉、信じてるからね、もうすぐつくからね?私の歌、楽しみに待っててね?じゃあね、またあとでね!」


電話が一方的に切られた。


「やすなちゃん、もうすぐ来るってさ」


「間違ってるのかもしれない、これは私の勝手な判断なんだけど・・・やすなちゃんってアキラくんの事好きだと思う」


それは間違ってない。

好きって言われた事はなんとなくだけど黙ってた方がいいような気がした。


「へ、へぇ・・・それはびっくりだなぁ」


わざとらしく驚いてみせた。


「最近やすなちゃんアキラくんの話ばっかりするの、はじめは私に話を合わせてくれてるのかな?って思ってたけど、アキラくんってどんな人なの?って凄い聞いてくるようになったの」


そりゃまたずいぶんわかりやすい。


「だからこの前の海の時にね、二人がもっと仲良くなれるように、なるべく二人の時間を作ってあげようって思ってね、私なりにがんばってみたの」


:あかりちゃん、気を使ってくれたのかな?:


ようやくあの時のやすなちゃんの言葉の意味がわかった!そうだったのか!


「自販機の前でお茶飲んで時間つぶしてたんだけど、二人はどうしてるかな?どんな話してるのかな?仲良くなれたかな?アキラくんはやすなちゃんの事どう思ってるのかな?って考えてたら、なんかだんだん悲しくなってきて」


あかりちゃんの表情が言葉通り、悲しくなってきた。


「アキラくんとやすなちゃんが二人きりでいる事が気になって気になってしょうがなかった、変だよね?自分でやったことなのに、二人には仲良くなってほしい、それはホントにそう思った、でも、仲良くなってほしくない、全然違う事考えてて、だんだん意味がわからなくなってきて、だって私はアキラ君の事ふったのに、好きじゃないって思ってたのに」


よく喋る、あかりちゃんってこんな喋る子だったけ?

よく喋るせいか俺の考えが追い付かない。

なんだって?俺とやすなちゃんが二人でいるのか気になるって?


「そんな事考えてたら、アキラくんの声が聞こえて、凄くびっくりして、私がせっかく二人きりにしてあげたのに、どうしてきちゃうの?どうしてこっちにきたの?どうして私の事心配してるの?どうしてそんな優しい顔するの?どうして私、こうなってるんだろう?っていっぱい考えたの」


早い、早いって、いっぱい喋りすぎ!あかりちゃんの言葉に対して俺の考えが追い付かない!


「あ、あのあかりちゃん、こーいう言い方するとアレなんだけど、あかりちゃんは何が言いたいの?」


「え?何って、だからぁ!二人には仲良くなってほしいの!・・・それはでもちがくて・・・えぇ?ねぇアキラくん、私は何が言いたいの?」


「俺に聞かないでよぉ、えぇとえぇと、俺とやすなちゃんに仲良くなってほしくて、それで、それで、でもあかりちゃんは俺達の事気になってるんだよね?」


「ウン」


「それは、なんで?」


「なんでって、そんなの決まってるでしょ!えっ?え、うそ、おかしいよ、おかしいって、今更そんな事思ったらおかしいって、おかしいよねぇ!!」


あかりちゃんがキレ気味に何かを訴えかけるように大声を出してきた。

わからない、何を言ってるんだ?断片的に喋るから何を言いたいのかさっぱりわからない。


「な、なにが?なにがおかしいの?」


「言わない、こんな事今更言えない、だってそれを言ったら・・・私のせいでふたりが・・・」


「なにが?なにが言えないの?俺もちょっと混乱してきちゃったよ・・・はは」


だってさ、だって、あかりちゃんがさっきから言ってる事は、以前あかりちゃんが言った事と真逆の事なんだ。

そんなのありえないだろ、俺が間違ってるんだ、期待したらまたショックを受ける事になる、この前だってそうだったんだ、今回もそうだよ。


「なにが、いいたいの?俺に、なにが、いいたいの?」


おいおい、なにわからないフリしてたんだよ?

ほんとはわかってるんだろ?でもそれが違ってまたショックを受ける事が怖いんだろ?


うるさいな!ハッキリとした言葉が聞けるまで簡単に結論を出しちゃいけないんだよぉ!


「あか、あかりちゃんてさ、もしかして、もし間違ってたらごめんだけど、お、おれのこと・・・」


「ごめんアキラくん!ほんとにごめん!私トイレいってくる!」


あかりちゃんが勢いよく立ち上がった。


「えぇ、ちょっと、それはないでしょ・・・でも我慢はよくないね、うん、いってらっしゃい」


あかりちゃんが部屋の扉から慌てて出て行った。


ハッキリしないな。

曖昧な言葉ばかりだ。

言ってる事はなんとなくわかる。

わかるけど、ハッキリとその言葉を言われていない。

トイレから帰ってきたらもう一度聞こう、そしてそれを確定させるんだ!


ドアの開く音が聞こえた。


「はぁはぁ、ごめーん、おまたせーってあれ?なんでアキラくん一人なの?あかりちゃんは?」


息を切らして現れたのはやすなちゃんだった。

よほど急いで走ってきたのだろうか、いつもの綺麗に整ったロングストレートは乱れて汗で額にくっついている。

無地のグレーの半袖Tシャツに汗が染み込んでいる。

下は黒いミニスカートで黒い肩掛けカバンを下げている。

なんだろう?今日はずいぶんラフな格好をしている気がするな。


「トイレだよ」


「そうなんだぁ~ってあついよぉ~よっと」


やすなちゃんが俺のすぐ隣に座ってきた。


「あっごめん!」


何が?


「ん~トイレ、か、じゃあしょうがない」


やすなちゃんが俺から少し離れて距離を置いた。

カバンから何やら小さな袋と四角い小さな鏡を取り出しだ。

爽快、汗ふきシートと書かれていた。

やすなちゃんが鏡を見ながら素早い動作で額と鼻の汗を拭き始めた。


鏡を置いて二の腕も拭き始め、少しスカートめくってフトモモからスネまで拭き始めた。

やすなちゃんが何かに気づいたように、不意に俺の方を見た。


「えっち、あっち向いててよ」


「あぁ、ごめん!」


俺は慌ててフトモモから視線をそらして反対側の壁を見た。

何かを吹きかける様な音が聞こえて、いい香りがしてきた。


「もう見ていいよ」


言われて視線を戻すと乱れていた髪が少し綺麗になっていた。


「ちらっ」


やすなちゃんがスカートを少しめくってフトモモを見せて来た。


「もっとめくって見せてあげようか?んふふ」


相変わらずからかい上手だな。

その笑い方はめくる気なんてない笑い方だ。

俺も逆にからかってやろう。


「じゃあ見せてよ~」


少し冗談っぽく言った。

やすなちゃんがゆっくりとフトモモの裏をするように横移動しながらコッチに近づいてきた。

そして耳打ちしてきた。


「今日は水玉だよぉ」


「えっ」


俺の耳から離れてやすなちゃんが何かに気づいたような顔をした。


「あれなに」


やすなちゃんが指さす方向にはあかりちゃんが脱ぎ捨てた短パンとブルマが置いてあった。


「あ、あれは、説明すると長くなる」


「なに?私が来るまで何してたの!?え、トイレってまさか、え、ちょっ、アキラくんうそでしょ!うぅっ・・・うそぉ!信じてたのにぃ!」


やすなちゃんが泣きそうな顔になりながら、俺の胸を拳を握ってポカポカと両手で殴ってきた。

力よえぇ~。


「何か誤解してると思うんだけど、あれは諸事情であかりちゃんが脱いだだけでけしてやましいことは何もない」


「諸事情ってなに!?なにがどうなったら短パンとブルマを脱ぐの!」


異世界の事は説明しづらいな。

俺はともかく、あかりちゃんが変な子って思われちゃうかもしれない。

やすなちゃんは理解してくれそうだけど、どうしようかな。


「あれは俺達の中のちょっとしたお遊びのような事でそうなっただけで」


「お遊び!?お遊びで短パンを脱ぐの!?なに?そーいうプレイなの?二人ともいったい何してたの!!」


やすなちゃんの顔が真っ赤になって、かなり興奮気味のご様子だ。

どうしたものかな。


扉が開いてあかりちゃんが戻ってきた。


「あ、やすなちゃん来てたんだ」


なんだ?あかりちゃんの顔が少し赤いぞ。


「あかりちゃん!あれなに!?なんで短パン脱いだの!」


「あ、うん、私もさっき気づいたんだけど・・・アキラくんに私の下着見られちゃったかも」


恥ずかしそうにそう言って目を伏せた。

少し口を開けた状態のまま、やすなちゃんの表情が固まってしまった。


「あかりちゃん!その言い方は誤解を生む!ねぇ話しても良いかな?俺たちの秘密を」


「だめ・・それは私とアキラくんだけの世界なの、だから誰にも話しちゃダメなの」


あかりちゃんがじっと俺を真剣な目でみつめてきた。

そうか、そうだよな、俺達だけの異世界だよな。


「ひ、ひみっひみつ?せかい?なにそれ?」


やすなちゃんの表情が強張って痙攣している。


「ごめんねやすなちゃん、その事は詳しく話せないんだけど、あれを脱ぐことはその時どうしても必要な事だったの」


あかりちゃんが説明し始めた。


「う、うん、ひ、ひみつ、誰にでも話せない秘密ってあるよね、そ、それは私にもあるから理解するけど、変な事してたわけじゃないんだよね?」


「うん、歌って踊ってただけだよ」


「んん?歌って踊ってるだけで、どうして短パンを脱いだのかは全然納得できないけど、歌って踊ってただけだったら別にいいかなぁ・・・」


やすなちゃんはしぶしぶと言った感じで理解してくれたようだ。

誤解がとけてよかった。


「ねぇアキラくん」


あかりちゃんが俺の隣に座った。

両隣、女の子にかなり密着された状態でちょっとドキドキしてきた。


「私の下着みたぁ?」


あかりちゃんが恥ずかしそうに頬を染めながらそう聞いてきた。


「み、みてないよ」


「ほんとにぃ?ウソついてたら怒るよ」


俺の脳裏にさっきの鬼の形相のあかりちゃんが思い浮かんだ。


「ごめんなさいウソつきました、でもちょっとだけだよ!スカートのからちょっとだけピンク色が見えてただけで、はっきりと見たわけじゃないから!」


「アキラくん!私のも見せてあげる!」


やすなちゃんがスカートをめくろうとしたので慌ててそれを妨害した。


「やめてやめて!見せなくていいから!」


「なんでよっ!あかりちゃんのは見れて私のは見たくないの!?さっき見たいって言ったよね!!」


「あんなの冗談にきま・・・」


「アキラくん!!!」


あかりちゃんに怒鳴られた、鬼の形相とまではいかないものの、怒ってる事は間違いない表情をしている。


「あかりちゃん誤解だよ、先にやすなちゃんの方からからかってきたんだ、それで俺もからかってみようかなって」


「ひどぉい!からかい半分でパンツ見たいとかいったの!!」


やすなちゃんが俺に身体をすりつけてきた、顔も近いって。

あってるけど、意味合いが違うと思う。


「アキラくん!からかい半分でやすなちゃんにパンツ見たいって言ったの!?」


あかりちゃんまで身を寄せて来て顔が近くなってきた。

顔が熱い。

二人とも近いって。


「言ったよ、言ったけど、違うんだよ!いっつも俺をからかってくるから、たまには俺もって思ったんだよ!」


「それはさっきも聞いた!」


「そうだよ!だってそれがホントのことだし!」


「ひど~い、アキラくんて~そーいうひとだったんだ~」


やすなちゃんが舌をペロっと出した、こ、この子、わざとやってるな!

この状況を楽しんでるんだ!やめてくれよ、あかりちゃんをあんまり刺激しないでくれ、怒ると怖いんだから。


「アキラくん!やすなちゃんに謝って!女の子にそーいう事、冗談でいっちゃだめなんだよ!」


「はいっはいっ!ごもっともな意見です!やすなちゃんごめんね、冗談でパンツ見たいとか言ってごめんなさい!」


「えぇ~わたし傷ついちゃったな~トラウマになっちゃいそー」


絶対ならねぇだろ!ふざけすぎ!


「やすなちゃん頼むよ!ここはこれで抑えてくれない?」


「えぇ~やだぁ~で~もぉ、どうしてもっていうならぁ~」


やすなちゃんがあかりちゃんの方をチラっと見たかと思うと、指をたてて俺の頬を叩いた。


「ちゅーさせて」


なんてことをいうんだ。


「それはだめだろ」


「どうして?」


「あかりちゃんが見てる前でそんな事しちゃだめだろ」


「あかりちゃ~ん、アキラくんにちゅーしていい?」


返事が無い、怖くて表情も確認出来ない。

俺にだってわかるよ、この雰囲気ヤバイ。

だってあかりちゃんは俺の事を・・・。


俺の事好きだって思ってくれてるはず!!!!!!


「いいよ~」


あかりちゃんのいつもと変わらない可愛い声が聞こえて来た。

ほら、ほらやっぱりだ!あかりちゃん俺の事なんか好きじゃないんだ!

好きならいいよなんて言うわけがない!ほらみろ!やっぱりだ!だから、だから結論を急いじゃダメだって言ったのに!!!!


ショックだな。


「そのかわり、私もちゅーするから」


え?


あかりちゃんの顔を見て表情を確認した。

目が潤んで、赤い顔をして、下唇を噛んで俺を見て・・・いない。

視線の先にいるのはやすなちゃんだ。


「だ、だめっ!だめだよあかりちゃ~ん、それはだめでしょ~だってあかりちゃんはアキラくんをふったんだよ~?」


やすなちゃんの声が少し震えている、しかし口調はおどけた感じを演じようとしている感じだ。


「そんなのわかってるよ、二人には仲良くなってほしい、だからちゅーだってしてもいいっていったの、でも、でも・・・」


あかりちゃんの声も震えてる。


「わたしだってアキラくんにちゅーしたいもん!!」


今度はハッキリと大声で震える事なく言ってきた。

まじかぁ、なんか恥ずかしい。

あれ?どーいうことだ?

いやもうこれ聞くよ、だってハッキリさせたいし。


「あかりちゃん、ねぇ、俺の事好きなの?」


「ちがうよねぇ!アキラくんの事そんなふうに見てないっていったんだよねー?」


やすなちゃんに妨害された。

ごめん、今はどうしても聞きたいんだ。


「やすなちゃん、ちょっと黙ってて」


「きゅぅぅ」


やすなちゃんから子犬のような拗ねた感じの声が聞こえて来た。

言い方がきつかったな、ごめんね。


「あかりちゃん、ハッキリ言ってくれ、俺の事好きになってくれたの?」


「アキラくん、アキラくんはまだ私の事好き?」


潤ませた目で上目遣いしてくるその表情に心が締め付けられた。


「好きだよ」


「きゅぅぅぅぅ」


やすなちゃんからまた声がした。


「やすなちゃんの事は?」


それは、それは言ったよね?

あかりちゃん!だめだよ!君がしようとしている事は、やすなちゃんを傷つけようとしている事だよ!

わかってるの?わかっててやってるの?


「ねぇ、やすなちゃんの事は好きなの?答えてよ」


「あかりちゃん、もうやめよう、一旦落ち着こうよ、みんな、みんな落ち着こうよ」


「じゃあいい、やすなちゃん!アキラくんね!やすなちゃんの事好きじゃないって!恋愛的な意味で好きじゃないって!!」


しまった、俺が、俺が言えばよかった。

あかりちゃんにヒドイ事を言わせてしまった。

判断を誤った。


「うぅっ・・・きゅぅぅ・・・うっぅぅ」


やすなちゃんの目から大粒の涙がポロポロとこぼれはじめた。

どうして?どうしてこんな事になった?きっかけはなんだった?

パンツとかどうとかそーいう話だっただろ?それってえっちな話じゃん、やすなちゃんが泣くような話じゃないじゃん。

俺か?俺が悪かったのか?そうだよ俺が悪いよ、俺が悪いって事にしようよ!


「二人とも!俺が悪い!全部俺が悪い!あかりちゃんは悪くない!やすなちゃんも悪くないよ!」


いたっ


やすなちゃんにアゴを平手でコツかれた、かと思うと急に立ち上がってやすなちゃんが部屋から出て行った。

あぁ、どうしよう、追いかけたい、でもあかりちゃんを一人にするのはだめだろう。


「追いかけてよ」


「いや~でも~」


「いいから行ってよ!はやくっ!!!」


また鬼の形相で怒鳴られた、今日は怒られてばっかりだなもう。

急いでやすなちゃんを追いかけ・・・あれ?

部屋を出てすぐ近くの廊下の壁にもたれながら、目に手をあてて泣いていた。


「やすなちゃ・・」


声をかけた途端に抱きつかれた。

泣いてる、すすり泣いている。

大泣きってわけじゃないけど、間違いなく泣いてる。

しょうがないな。


やすなちゃんの頭を撫でた。

廊下を女の人が通った、こっちをチラ見された。

恥ずかしいんだけどコレ!


「やすなちゃん、部屋戻ろう?」


「やだぁ」


涙声で小さく少し甘えた風にも聞こえた。

戻りづらいのもわかるけどさぁ、あかりちゃんは悪い子じゃない、勢いで言ってしまっただけだよ。


「あかりちゃんが君を追いかけろって言ったんだ、だから、あかりちゃんもやすなちゃんの事心配してると思うよ」


「ぎゅってしてぇ」


「したら戻ってくれる?」


「やだぁ」


やだなんだ。

うーんでも、泣いてるのはなんとかしてあげたい。


「ぎゅってしたら泣き止んでくれる?」


「ふぇぇ?」


可愛い声が出て来た。


「やすなちゃんが泣いてるとこ見るの何かヤダ、いつもみたいにからかって笑ってるやすなちゃんのほうが好きだなぁ」


「すきじゃないくせに」


脇腹をグーパンされた、でも力が弱すぎて痛くない。


「いたくないよ」


頭を優しく撫でた。


「でも私は好き」


「うん、正直言って悪い気はしない、やすなちゃんみたいな可愛い子にそう言われると嬉しいよ」


「ふぇぇ?好きじゃないのに嬉しいの?」


好きじゃないにこだわるね。

確かに俺はやすなちゃんを好きではない、だってあかりちゃんを好きなのに、やすなちゃんを好きになったら変だよ。


「嬉しいよ、結構照れる、やすなちゃんって色々積極的だよね、手とか握られるとドキドキしてやばいってほんと」


「好きじゃないのにドキドキするの?」


「そりゃするよ~やすなちゃんの手って小さいよね、まるで子供みたいだ」


やすなちゃんが俺の手を指をからめて握ってきた。


「そうこれこれ、ほら小さい、俺握力無い方だけど、本気出せばつぶれちゃいそうだ」


しまった、やすなちゃんの手を無意識で握りかえしてしまっていた。


「ごめん、握っちゃった」


「どうしてあやまるの」


「いやだって・・・」


「このまえにぎった」


海でのあれか。

あの時はあせってたからな。


「あの時は・・・」


「ショックだった、いくら私が言っても握り返してくれなかったのに、あかりちゃんの名前を出せば簡単に握り返してくるんだもん」


「あ、ごめん、俺全然そんな事考えてなかった」


「ん~ん、もういい、だって今握り返してくれた、だから許してあげる」


また人が通った、今度は男の人で舌打ちされた。

気持ちはわかる、すまない。


「中に戻ろう?」


「戻るけど、その前にぎゅってして」


ホント子供みたいだな。

そんな甘えた声だして、いつの間にか泣き止んでるし。

だからもう抱きしめる必要なんてないでしょ?


「ふゆぅぅ・・・うれしぃ・・・うぅ、ありがとぉ・・・」


あ、れ?

なんで俺抱きしめてるの?ちっさいな、体ちっさいな。

温かくて、柔らかい、とても、いい、抱き心地。

小さいから妙に体に収まる。


「うぅぅぅ・・・すき・・・すきぃ・・・だいすきぃ」


大好きと言われて顔が熱くなり、我にかえった。

離れよう。

離れようとしたが、背中にガッチリ腕を回されているせいか離れられない。


「おわり!おわりだよ~?やすなちゃん?部屋もどろー?」


「もぉおわりなの?今度またぎゅってしてくれる?」


頬を赤く染めたうっとりした表情で甘えられた。


「今度はない!」


「んふふ、「また今度ね!」って言ってくれれば離してあげたのに」


「ないよ!ない!今日は特別!」


「とくべつかぁ・・・とくべつあつかいしてくれたんだ・・・じゃあ、いいかなぁ・・・えいっ」


やすなちゃんが俺の胸を強く押して引き離した。


「あの時のおかえし、結構痛かったんだから」


あの時、海に行った時のあの時だ。

そいえば、俺はまだあの時の事をちゃんと謝っていなかった。


「ごめんね、むせるぐらいだったもんね、ほんとにごめんね」


「むせたのは痛かったからじゃないよ・・・胸を触られてびっくりしてむせたの」


「それは大変申し訳ない」


全然意識していなかった。

押した=触る だよな。


「あの一瞬でもみもみしてくるなんてアキラくんってえっろ~い」


「し、してないよ!押した!押しただけだって!」


してないよな?


「うっそー あはは!」


やられた、でもやっぱりそのからかう時の笑顔が好きだなぁ。


っておい!一人で部屋にもどるのはまずいって!


やすなちゃんを追いかけて部屋の扉を開けた。



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