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耳を疑った。


あかりちゃんの口からとんでもない言葉が出て来たからだ。


「あかりちゃん!!そんな事は冗談でも言っちゃいけないよ!!」


俺の言葉に反応し、あかりちゃんが俺を冷たい目で睨んで来た。


「冗談?こんな事冗談で言うわけないよ、私ねこの子の事、殺したいぐらい憎いからね」


それはまたハッキリ言いましたね。

低い声を出し、俺を睨むその表情から察するにとても冗談を言ってるようには見えない。

あかりちゃんは本気だ。


再会を邪魔されたからってそこまで憎むものなのか?

俺が思ってる以上に俺との再会を楽しみにしてたっていうのか。


それでも!!


「そんな事思っちゃいけない!!それを俺に返すんだ!!」


くそっ!

ぶっちゃけ怖い!

無理やり奪い返そうとすれば刺されそうで怖い!!


俺はただ手を差し出す事しか出来なかった。

何と情けない。


差し出した手に、コンビニの袋を渡された。


え?


「いつまでも血まみれじゃ可哀想、血が乾かない内に早く拭いてあげて」


低い声で表情を変えず、なぜそんな優しい言葉を述べるのか。

殺したいぐらい憎いってさっき言ったのに。


「あ、あぁ・・」


わけがわからない。


袋の中にはジュースとお菓子、ウェットティッシュが入っていた。

殺したいぐらい憎いのに、なんでこんな物買ってるんだよ。


やっぱり君は優しいよ、だからこそ、そんな恐ろしい考えを持っちゃいけないんだ。


ウェットティッシュでマオちゃんの顔を拭いた。

顔はあかりちゃんがある程度拭いて綺麗にはなっていたが、首にはべっとりと血がついていた。

それを丁寧に拭いた。


「はうっ・・・あきらさぁん・・・くすぐったいですよぅ」


「ごめん、ちょっとだけ我慢してね」


くすぐったがる声を出しながら体を震わせ、頬を染め、俺をうっとりとした表情で見つめてくる。

しまった、マオちゃんの鼻から新しく鼻血が出て来た。

その血が垂れる前に急いで首を拭いた。


「はぁうぅぅん」


マオちゃんの声など気にしてる場合ではない。

首が綺麗になったので、鼻血の進行を右手で止めた。

ウェットティッシュがそれを吸収してる間に、左手でうっすら口元に残っている血を綺麗に拭きとった。


その間に血が止まったので、鼻の穴にティッシュをねじ込ませて、中の血を拭い取った。


「へ、へぅ・・・くゅひゅぅん!!」


マオちゃんが可愛いくしゃみをした。

そりゃ鼻を刺激されたらそうなるか。


「ごめんね、中も綺麗にしとかないと血がつまっちゃうから・・・」


「くっひゅぅん!!・・・くひゅっ!!・・・くひゅ・・・うぅん」


くしゃみが途切れるたびに無理やり鼻に突っ込んで、ティッシュに血がつかなくなったのを確認してその行為をやめた。


「ありがとうございます、最後までアキラさんにはご迷惑をかけてしまいましたね」


うっとり顔が消え、悲しい目を俺に向けて来た。


「最後とか言うなよ!・・・これから何度だって鼻血拭いてあげるから!・・・最後なんていうなよ・・・」


悲しくなった。

涙が出てくるぐらい、悲しい。


「私なんかの為に泣かないでください、凄くもったいないです・・・」


「もったいないとか知らないよ、マオちゃんが最後なんて言うからだろぉ・・・」


涙が溢れて止まらなかった。

まだこれからだ、俺達は友達になったばかりなんだ、一緒に過ごした時間が短すぎる。


「ごめんなさい・・・今日でさよならです」


マオちゃんの目からも涙がたくさんこぼれてきた。

さよならなんて言うなよ。

それはいやだ!!


「やだよ・・・まだこれからじゃないか・・・コスプレだってまた一緒にしようよ!また一緒にご飯食べたりしようよ!来年もまた一緒に初詣に行こうよ!!」


たった数日間とはいえ、楽しかった、楽しい思い出として俺の脳に、心に残っているんだ。

それをこれからもっと増やしていきたい。


「ごめんなさいぃ・・・私だってまだまだアキラさんと一緒にいたいぃ・・・でも、だめなんです・・・だめなんですよぅ・・・えうっ・・・うぅぅっ・・ああぁぁ」


涙声が嗚咽にかわった。


「何がダメなんだよ・・・」


「だはっ・・あうっ・・・だってぇ・・・うっ・・・わたしが・・・あふっ・・・いきてっ・・・たらぁっ・・・」


嗚咽がどんどんひどくなり、何を言ってるのか聞き取りにくい。


「ゆっくり喋って、あせらないで」


「はっ・・はう!・・・あぁっ・・・あはぁっ・・・うぅぅう・・・」


だめだ、嗚咽がもっとひどくなってとても喋れそうにない。


「ねぇアキラくん、そこどいてくれるかな?そこにアキラくんがいるとその子殺せないんだけど」


冷たい声であかりちゃんがそう言い放った。

だんだん腹が立ってきた、いくら殺したいぐらい憎いからって、俺の大事な友達を殺すとか何言ってんだよ。

ちょっと言葉が過ぎるんじゃないかな。


「おい黙れよ!いくらあかりちゃんでもそんな事ばかり言ってると俺本気で怒るからな!」


立ち上がってあかりちゃんを睨んだ。

睨んでいると思う、だがその睨みが相手に伝わっているとは思えない。


俺の睨みに表情ひとつかえてないしね。


「アキラくんにとってその子はいったいなんなの?」


「友達だよ!!」


「友達と彼女、どっちを取るの?」


「どっちもだよ!!」


「だめ、どっちかひとつ選んで、私とその子、どっちを取るの?」


ひとつってなんだよ。

どっちもっていったらどっちもなんだよ!!


「知るかそんな事!!両方だよ!!俺にとってあかりちゃんもマオちゃんも両方大事なんだよ!!」


カチチチチチ

カッターの刃をさらに出してきた。

威嚇してるつもりなのか。


「だめだめアキラくん、それは通らない、この子を生かしておくと今後ろくな事にならないと思う、この子死にたいんでしょ?私も殺したいから・・・ホラ!何の問題もないでしょ?」


「あるよ!!そんな事したらダメにきまってるだろ!!だからマオちゃんを殺すとか言うのはやめろ!!」


「私よりその子を取るって言うの?」


表情が少し変わった、悲しい表情に。


「違う!!そうじゃない!!そーいうことじゃない!!!取る取らないの話はしてないんだ!!」


「じゃあ何なの?今は何の話をしてるの?」


「殺すのはやめろって話をしてんだよ!」


「だからそれはその子を取るって事でしょ?」


イラっときた。

話が通じてない。

あかりちゃんに対してでなく、上手く言葉が出て来ない自分にイラだってきた。


「だから違うって言ってんだろ!!何て言えばわかるんだよ!!!」


「私の事愛してるんでしょ?なのにその子を取るの?」


違う、全然違う。

話が全然噛み合ってない。


「あかりちゃんは誤解をしている、俺さっき言ったじゃん!マオちゃんの事は妹みたいに思ってるって!」


「じゃあ殺していいよね?」


「何でそうなるんだよ!!おまえ頭おかしいだろ!!!」


「おまえっていうな!!なんでそんなひどいこというのぉ・・・うぅうぅ」


しまった。

言い過ぎた。

あかりちゃんを泣かせてしまった。


「ごめん、「おまえ」も「あたまがおかしい」も言い過ぎた、ただ、その考えがおかしい事に対しては謝らないからな!!」


「おかしくないよ!!この子魔王なんだよ!!私達の敵なんだよ!!!殺しておかないと大変な事になっちゃうよ!!!」


今はそんな話してる場合じゃないだろ。

泣き叫んでるし、混乱してるのか?


「こんな時に何いってんだ!!魔王はさっき倒しただろ!!だから殺す必要はない!!」


「だめだよ!!この子アキラくんの事好きって言った!・・・大好きって言った!!私のアキラくんがこの子に取られちゃう!!!そんなの絶対やだぁぁぁ!!!」


涙が頬を伝って顎からポトポト床に落ちていく。


それを心配してるのか。

ようやくあかりちゃんが何を考えているのかわかった。


「それかよ、それならそうと最初から言ってくれよ・・・大丈夫だよ、俺はあかりちゃんの事愛してるよ、だからそんな事には絶対ならない、俺を信じて」


「信じてるよ!アキラくんは私の事を裏切らないって信じてる!!!けど・・・その女がアキラくんに手を出す!!アキラくんは優しいからその誘いを断れない!!そんなの私耐えられない!!!」


「いやいや待ってよ!優しいからって誘いに乗るわけないでしょ?・・・ほら、さっきも胸で俺を誘惑してきたけど、俺大丈夫だったでしょ?」


「・・・その行為事態が許せない!!!思い出したら余計ムカついてきた!!私のアキラくんを誘惑するなんて、この女やっぱり殺す!!」


逆効果となってしまった。

言うんじゃなかった。


「落ち着いてよあかりちゃん!君は優しい心の持ち主なんだ!そんなムカつく相手にジュースとお菓子を買ってきただろ?ほら優しい!その心を思い出して!!」


「優しくなんかない!!ただ我慢してただけ・・・でも、私がいない間にこれで死のうとしたんでしょ?・・・私は我慢したのに、その子は我慢しなかった・・・だから私も我慢する必要ないよね!?」


「そうですよあかりさん!その通りです!何も我慢する必要はありません!!それで私をぶっころしてください!!」


マオちゃんがフラフラと立ち上がって俺の横に立った。


喉を手の平でペチペチと叩いてマオちゃんがあかりちゃんを挑発している。

ここに刺せと言っているかのようだ。


「やめろ!あかりちゃんを挑発するな!」


「いいって言ってるよ?・・・私やるからね」


あかりちゃんがゆっくりとコチラに近づいて来た。


「やるな!!やるんだったら俺から先にやれ!!」


マオちゃんの前に両手を広げて立った!


これならどうだ!

あかりちゃんは俺を愛している!

だから俺を殺せるわけがない!


「自分が殺されないとでも思ってるの?そうなんでしょう?・・・殺すのは嫌だけど、私よりその女を取るっていうなら・・・そうしようかな」


恐ろしい目で俺を睨みつけ、カッターナイフを両手で握りしめだした。

マジかよ。

マジでやる気か。


なぜだ。

俺か?俺が悪いのか?

君にこんな恐ろしい事させてしまっているのは、俺のせいなのか?


どうしたらやめさせることが出来るんだ?

何も浮かんでこない。


「あかりちゃん・・・俺はどうしたらいい?どうすればやめてくれるの?・・・もうどうしたらいいかわからないよ」


俺は自分で考える事をやめた。

さっきから俺の言う事なにひとつとして、あかりちゃんの心に響いていない。

俺の言葉は無意味だ。

あまりの自分の無力さに情けなくなり、もうこれ以上何も言う気にはなれなかった。


「やめないよ・・・だってその子邪魔だし・・・」


「そうです!!私邪魔ですよ!!私を生かしておくとホントろくなことになりません!!私、アキラさんを好きな女を全員殺してやろうかなって考えてます!・・・今はなんとか理性でおさえてますけど、その理性がとんじゃったら大変な事になりますよ?」


もうだめだ。

そんな事言ったらあかりちゃんが。

あかりちゃんが、君を殺してしまう。


「あかりさん!ホラ早く!今を逃すともう二度と殺せませんよ!私は隠れてみんなを暗殺しちゃいます!!」


「・・・」


あかりちゃんの両手が震えだした。

躊躇している?

まだ希望が残されている?

あかりちゃんの心に迷いがある!!


「やめるんだ!震えるぐらいならやめてしまえ!!」


「やめちゃだめです!!・・・聞いてください!私は殺す方法まで考えています!まずはあの弱そうな・・・名前は忘れましたが、ほかのちゃんのおねーさんの首を縄で絞めて殺します!!小さいから楽勝ですよ!・・・次にあかりさん!あなたです!あなたは手強い、力では敵わないと思うので毒かなんかで殺します!これも楽勝ですよ!・・・つぎはほのかちゃん!!・・・ほのかちゃんは・・・」


マオちゃんの言葉がそこでつまった。

さっきまでは自信たっぷりな表情で殺害方法を述べていたのに、突然汗をたくさんかきだして、まゆをひそめて表情がかたまった。


「ほのかちゃんは・・・ナイフで・・・喉を・・・喉を・・・うぅぅ・・・ううふっ・・・そんな・・・そんなことぉ・・・できない・・・できないよぉ・・・せっかくできた友達なのに・・・大切なお友達なのに・・・友達を殺す事なんて出来ないよぉ・・・」


マオちゃんがその場でひざまづいた。

床に両手をついてその場で泣きじゃくった。


「あはぁ・・・あぁぁぁぁ・・・できないよぉ・・・できないぃ・・・ほのかちゃぁぁん・・・ごめんねぇ・・・こんな事考えてごめんなさぁぁい・・・・ああぁあぁぁぁん」


カチチチチチ


あかりちゃんがカッターの刃をおさめた。

そしてそれを叩きつけるようにして床に投げた。


「そう、そうなんだ、あなたがそれを出来ないのなら・・・あなたがそれを我慢するのなら・・・わたしもあなたを殺す事をがまんする・・・」


あかりちゃんも膝をつき、マオちゃんの頭を優しく撫で始めた。


よかった!

本当に良かった!!

マオちゃんの心に残っていた優しさで、あかりちゃんの心に残った優しさが刺激されたんだ。


もしマオちゃんがほのかちゃんを殺すことに迷いがなければどうなっていただろう?


想像したくもない。


終わった。

終わったんだ。


危機は去った。


今になって足が震えて来た。


「でも覚えておいて、私のアキラくんに手を出したら、その時は躊躇することなく殺すからね?・・・わかった?」


あれ。

まだ終わってないの?


「はいぃ・・・そんな事はしません・・・ほんというと、私まだ死にたくありません・・・だってまだ14歳ですし・・・まだまだ生きたいですよ・・」


「うんうん、わかればよろしい・・・私だってほんというとね、あなたなんかの為に犯罪者になんかなりたくないの、それに、私が犯罪者になったらアキラくんに嫌われちゃうしね」


「あぁ・・・それは惜しい事をしました、あなたを犯罪者にすれば、アキラさんはあなたを嫌うんですね、今からでも遅くはありません、私を殺してみてはいかがでしょう?」


マオちゃんが床に膝をついたまま体を起こし、喉をペチペチと叩いた。

やめろってそれ、しかも何で笑って挑発してるんだよ。


「いやだよ、あなたが得する事なんてするわけないでしょ?・・・ふふふ・・・やっぱりあなた、生かしておいてもろくな事にならなさそう」


「そうですよ・・・ふふふ・・・やっぱりさっきのは無しです、私、アキラさんが好きです、なので、今後もアキラさんを誘惑しようと思います」


「お、おい!もう終わっただろ!だからやめろって!!」


「その胸もぎとってあげようか?・・・その胸以外はそんなに脅威にならないおこちゃま体型だしね」


「失礼な事を言いますね、胸だけでなく、お腹もあなたにとって脅威ですよ?何せアキラさんお気に入りのお腹ですからね、可愛いって言ってくれましたし、もっと見たいとも言ってくれましたからね」


「・・・アキラくん・・・それはどーいうことなのかなぁ?」


立ち上がったあかりちゃんが俺を睨みつけ、迫って来た。


「いや!あの!違うんだ!!落ち着いてあかりちゃん!!」


「この子のお腹見たの?・・・お腹を見る状況って何?・・・どうすればそんな事になるのかなぁ?・・・まさか・・・私に隠れてこの子と・・・」


久しぶりだその顔。

鬼の形相だ。

何かちょっと懐かしいわ。


そんな事思ってる場合じゃない!!!


「違う!!えっちしてない!!えっちはしてないよ!!!ね、マオちゃん!!」


「はい、えっちはたしかにしてませんけど・・・お腹を見たいって言ったのはアキラさんです」


「・・・あーきーらーくーん!!!」


鬼の形相が目の前に迫って来た。


「ひぇぇぇ!!ごめんなさぃぃ!!たしかに見たいとは言いましたが、それは服の上から見せてって事で!!ね、マオちゃん!」


「はい、たしかに服の上から見せてって言われまししたけど・・・服の上からじゃよくわからないと言われたので、思い切って生で見せる事にしました」


「アキラくん!!!」


「は、はい!!」


目の前で大声で出さないでよあかりちゃん。


「私とこの子のお腹、どっちの方が好きなの!!!」


「それはもちろんあかりちゃんです!!!」


「ほんとに!?ほんとにそう思ってる!?」


「はい!!そう思っています!!!俺は大好きなあかりちゃんのお腹が好きです!!大好きな子のお腹を見れた方がそりゃ嬉しいですよ!!!」


ごめんねマオちゃん。

マオちゃんのお腹も素敵だよ。

ぶっちゃけ見た目的な事ならマオちゃんのあのぽっこりまん丸お腹の方が好き。


「ほんとに?・・・う~ん・・・アキラくんがそう言うならその言葉を信じるけど・・・もうこの子のお腹見たいとか言っちゃだめだよ?」


「はい!二度と言いません!!」


「・・・じゃあ許してあげる・・・その代わり!!・・・あとでいっぱい・・・おなか・・・いっぱい・・・ね?」


赤い顔で俺をじっとみつめてきた。


「わかっております!!想定の3倍増しでやらせていただきます!!」


「だーめ、100倍だよ100倍・・・わかったぁ?」


甘えるような声を出してきた。

想定してた100倍舐めろって事?

どんな舐め方すればいいのやら・・・。


「わかりました、100倍でやらせていただきます!!」


「よろしい!・・・100倍とか・・・ふふふ・・・私耐えられないかも・・・ふふふ・・・楽しみ」


ほくそ笑んで、俺を上目遣いで見て来た。

期待されちゃった。


もし期待外れな事をすれば、物凄い怒られそう。


「ひどいですねぇ、私がいる目の前でそんな事言うなんて・・・大敗北じゃないですかぁ・・・まぁいいです、今は負けを認めましょう・・・」


マオちゃんが立ち上がって両手を真横に広げた。


「フフフ!よくぞ私を倒した!だがいずれ私は必ず蘇る!!!!それまで束の間の平和を楽しむがいい!!フハハハハ・・・・はあぁぁ・・・」


マオちゃんが大きな溜息をついた。


「すいません、私に携帯を貸してくださいませんか?・・・家に連絡しますので」


____________________


カラオケ店の外で待っていると、パトカーが3台もやってきた。

中から警察数人とマオちゃんの母親らしき人が降りて来た。

ずいぶん若い母親だな。


よく見る暇もなく俺は腕をひっぱられてパトカーに一人乗せられ、両脇を警察二人に囲まれて事情聴取された。


窓から二人の姿が見えた、車内からでも聞こえるぐらい母親が大声で怒鳴っている。

マオちゃんが大泣きしているのを俺は横目で見ていた。

しかしそれは世間体がどうのこうのというものではなく、普通に親が子を心配しての愛情表現だということがわかった。

だって抱きしめて頭を撫で始めたしね。


警察が未成年を連れまわすとどうなるかわかってるよねぇ?みたいな事を言ってきた、誘拐犯だと思われてるなこれ。

そうじゃないと言っても、聞く耳持たずだな。


数十分後、別の警察がやってきて、何やらコソコソ車外で話して俺を解放してくれた。


やれやれ、たぶんマオちゃんかあかりちゃんが事情を説明してくれたのかな?

周りを見渡してみたが、そのあかりちゃんはまだ事情聴取されてるのか姿が見えない。



母親とマオちゃんがこっちにやってきた。



マオちゃんの母親が土下座しそうな勢いだったので、思わず体をつかんでしまった。

震えてるな・・・。

子供が見つかって緊張の糸がきれたんだ。


こちらこそすぐに連絡しなくてすいませんと謝った。

どうかこれからも娘の友達でいてあげてくださいと手を握りしめて言われた。

いいおかーさんじゃないか。


「おかーさん!そんな事言わないで!アキラさんは優しいからそんな事言ったら断れないでしょ!!・・・アキラさん、短い間でしたが友達でいてくれてありがとうございました」


まだ涙の跡が残るその顔で、悲しそうに笑みを浮かべて来た。


「何いってるのマオちゃん!これからもマオちゃんとは友達だよ!」


「だめですよ・・・こんな私なんかとは友達やめたほうがいいですって、ふふふ」


何で笑ってるんだよ。


「いやだね!そっちが嫌でも俺友達だと思ってるから!!落ち着いたら電話してきて!落ち着いて良かったでしょうのお祝いでご飯おごってあげるから!!」


我ながらもっとマシなネーミングは浮かばなかったのかと言って後悔した。


「はぁぁ・・・アキラさんは優しすぎますよ・・・そりゃ、何人もの女の子に好かれますって・・・はぁぁぁ」


マオちゃんが溜息を繰り返している。

どこか諦めの表情だ。


「マオちゃん!!」


ん?この声は・・・。


「あ・・・ほのかちゃん!!!」


声のした方を見ると、やすなちゃんとほのかちゃんとあかりちゃんが立っていた。

マオちゃんがほのかちゃんに駆け寄っておもいきり抱きついた。

俺も近くへ歩み寄った。


すぐにマオちゃんが離れて、やすなちゃんに頭を下げた。


「ごめんなさい!本当にごめんなさい!!ほのかちゃんにもおねーさんにも物凄く迷惑を・・・あの!私が悪いんです!!私がほのかちゃんに助けてって・・・そういって・・・ところであなたは本当にほのかちゃんのおねーさんなんですか?」


「ちょっと!謝るならちゃんと謝りなさいよ!!ホントむかつくわねアンタ!!・・・おねーさんですけど何か!?」


「信じられません・・・こんな小さな子がおねーさんなんて・・・誰かに体が小さくなる薬でも飲まされましたか?」


「なにガキみたいな事言ってんの!!中学生だからって許さないからね!!!土下座!土下座しなさい土下座!!なに上から見下ろしてんの!!」


「おねぇちゃん・・・みっともないからやめてよ」


「何がみっともないの!!あんたがそんな事言える立場なの!?・・・てかアンタまで見下ろさないでよ!!!ほのか!!アンタも土下座しなさい!!」


やすなちゃんが喚き散らして怒っている。

その気持ちはわかるが、なんかもう怒る論点がずれている気がする。


「あかりちゃん!!一緒にこの子ぶっころそう!!私とあかりちゃんならやれるって!!」


おいおい、警察のいる前でその言葉はやばいって。

ほら、止めにきたじゃん。


「なんなの!!みんなで私の事見下ろしてなんなの!!!糞腹立つわ!!!この怒りをどこにぶつければいいの!!!アンタまじいつかぶっころすからね!!!二度と顔見せないでよ!!!」


マオちゃんにそう言い放つと警察に抱えられてパトカーに詰め込まれた。

あーあ。

あかりちゃんがそれを追いかけて、パトカーに一緒に乗り込んだ。



「こわ~い・・・ふふ、アキラさんは怖い女の子に好かれる傾向があるみたいですね・・・私は優しいので、甘えたくなったらいつでも私にご連絡くださいね」


マオちゃんも俺の事好きって事はそーいう事なんだよなぁ・・・。


「あぁ、そうさせてもらうよ・・・でも、やすなちゃんホントは優しい女の子なんだよ、普段は甘えん坊な普通の女の子なんだ」


「いやいやアキラ、おねぇちゃんいつもあんなだよ、アキラの前じゃ猫かぶってるんだって、まぁその猫もついに取れちゃったみたいだけどね」


そうなのか・・・。

やすなちゃんいつもあんななんだ。


「ほのかちゃん・・・短い間でしたが、友達でいてくれてありがとうございました」


俺に言った事と同じ事言ってるよ。


「何いってるのマオちゃん!これからもマオちゃんとは友達だよ!」


一字一句違わず俺と同じ事言ってるよ。


「あぁ・・・ほのかちゃんまで・・・お二人は本当にお優しいですね・・・こんな私をまだ友達だと思ってくれるんですか?」


「あたりまえだろ!」

「あたりまえでしょ!」


ほのかちゃんと顔を見合わて笑みを浮かべ合った。

よくみると涙の跡がある、やすなちゃんに怒られて泣いちゃったんだろうな。


「マオちゃん!落ち着いたら電話してきてよ!私とアキラとマオちゃんの3人で一緒にパーティしよ!」


ほのかちゃんがニコニコしながらそう言った。


「お!いいねそれ!!ちなみにそのパーティに名前をつけるとしたら?」


「え?・・・うぅん・・・マオちゃんを愛でる会!」


「いいね!!!二人でたくさんマオちゃんを可愛がろう!!!」


「うんうん!!そのチチ揉みまくるから覚悟しておいて!!!」


楽しそうにそう言って胸をもむしぐさをした。


「そ、それはちょっとご遠慮します・・・でも!私の事を可愛がってくれるという響きはともていいですね!!獄中でそれを楽しみにしながら、日々過ごそうと思います・・・」


獄中って。

マオちゃん逮捕されると思ってるのかな?

それだけ自分が悪い事したと思ってるのか。


カッターとか持って、危ない思想を持ってはいたが、全ては頭の中で考えていただけなんだから、なんちゃら未遂ですらない。


警察がマオちゃんの肩を叩いた。


「もう時間が来たみたいです・・・それでは失礼します・・・」


マオちゃんが悲しい表情で立ち去ろうとしたので。


「「まって!!」」


俺とほのかちゃんが同時にマオちゃんを呼び止めた。

顔を互いに見合わせ、何も言わなくても同じことを考えてるのがすぐにわかった。


「「マオちゃんまたね!!!」」


二人同時にそう叫んで手を振った。


マオちゃんの目から大量の涙がこぼれてきた。

悲しい表情のままだが、それは悲しい涙ではない事が俺達にわかる。


「はい!!まっ・・・まはぁぅぅ・・・あぁぁ・・・あはああっぅ・・・あくっ・・・くぅぅ・・・うぅぅぅ」


溢れ出てくる涙を両手で拭い、俺達に言葉を述べようと必死になっているが、嗚咽で言葉にならない。


「いいよマオちゃん、わかってるから、何が言いたいのかはわかってるから・・・手を振ってくれるだけでいいから」


「くっ・・あぁぁ・・・あふっ・・・あはああぁっ・・・あぁぁあ!!!」


マオちゃんが言葉にならない声を叫んで俺達に両手を荒々しく振って来た。


勢いよく振ったために左手首に巻かれていた包帯がほどけた。




その左手首に傷ひとつなく、それがただの中二病ファッションだった事が判明した。



__________________________



某所 家電量販店のテレビ




・・・先程お伝えした、女子中学生の行方不明のニュースですが・・・無事に見つかったということです。

よかったですねぇ、とくにケガも無く見つかったという事で・・・。



さて、こちらも同じく中学生、男子中学生のニュースなのですが。

その男子中学生がネットに相手の個人情報を抜き取るゲームアプリの作り方を載せていたということで・・・・・自分の力を誇示したかったと・・・






最後のニュースをアキラは見ていません。

なので、知らないままです。

マオちゃんもその事を最後まで黙っていましたので、つまりそれはそーいうことです。


アキラの携帯には異世界情報を書き留めたメモが入っていました。

設定を考える時に使っているんでしょうね、それを見られてしまったようです。


アキラはこのあとテレビやネットのニュースを見る暇もありません

なぜならこのあと3日間、二人に拘束される事となるのですからね


もちろんそれも書きます。


その3日の間にテレビはそのニュースをやらなくなり、ネットの記事もわざわざ検索しないと出ないレベルにまでなってしまったとさ。


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