表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パトロン  作者:
1/1

できぞこないのおはなし

少しの間、眠っていた

せっかくキレイにとかしたはずの髪はぐちゃぐちゃで、のどはカラカラになっていた。身体は沼に沈んだように重い

いつもそうだ。事が終わるといつもすぐに眠ってしまうのだ

さっきまで相手をしていたオジサンはとっくに服を着てタバコを吸っていた

「ねー、オジサン」

こちらを振り向きもしない。

「ねー!おじさん!」

「煩い」

神経質な声が返ってきた。それがたまらなく嬉しい。

「今日の分、置いておくぞ」

「はぁい」

オジサンの手元をチラッと見る。いち、にい、さん、しい、ご、いつも通り。

「オジサンいつもたくさんくれるけどさぁ、お金持ちなの?」

「そうだよ」

無表情でタバコをくわえたままで言う。

「オジサンお医者さんだからさ」

「どこ診てるの?」

「オンナのコのからだ」

にたぁっと笑う。めがねの奥にある瞳は真っ暗で周りの風景だけを無機質に映していた

「お医者さんがじょしこーせーとこんなことしていいのー?」

「見てるもんが見てるもんだから、こうやってお前さんみたいなので処理してんの」

無表情に戻ったオジサンはそっぽを向いた

「お前さん学校は?」

「ここから近い女子高だよ」

一応名門というようにはなっている。しかし蓋を開けてみればただのゴミの吹き溜まり。どいつもこいつもパトロンつけてはケバいだけのブランド品を買い漁り、学校内でマウンティング。中でも外でもやってることは変わらない

「女の園なんぞ見たくもねぇや」

「みーんな馬鹿ばっかり」

「お前さんもその馬鹿の1人か」

「そうよ」

オジサンは人の不幸をよく嗤う

「オジサン彼女いないのー?」

「いたらこんなことしねぇよ馬鹿」

頭をコンコンとノックされる

「じゃあお前さんはどうなんだよ?」

「うちは男女交際禁止。秘密にしてようが垂れ込む奴なんて腐るほどいるよ」

先月、他校に彼氏がいる事がバレてハブられている子の事を思い出した。その後援交、飲酒、ヤクのデマ流されて彼氏と別れたらしい

「金もらってヤるのはいいのに、愛が伴うとダメなのか」

「みんな羨ましいんだよ。みんなさびしい」

「お前さんも?」

無言でうなずいた

「本当は客をつなぎとめとく為の売り文句とか?」

「違うよぉ」

「だったらお前さんはこんな事から足洗った方がいいぞ」

オジサンの顔が近づいた。オジサンの顔が好きだ。甘いタバコの匂いも好きだ

「だったら私のさびしさは誰が埋めてくれるの?オジサンはどうなの?埋めてくれないでしょ。埋めてくれるなら私と結婚してよ。今すぐに」

「…」

オジサンはため息をついてベッドから立ち上がる。掛けてあったジャケットを羽織りドアに手をかけた

「ホテル代置いておくから」

「はーい」

まだ時間はある。もう一眠りしよう

「寂しくなったら連絡しろよ」

「あはは、どっちがお客さんかわかんないね」

オジサンは静かにドアを開けるとすっと出ていった。

「愛してるって言ってよ」

閉ざされたドアに言ったところで意味がない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ