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ドラゴンは寂しいと死んじゃいます ~レベッカたんのにいたんは人類最強の傭兵~  作者: 藤原ゴンザレス
第三章 筋肉ネバーダイ

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戦闘開始

 ベルと一緒にいたレベッカたちはソワソワしていた。

 悪意を持ったなにかがクリスタルレイクにいることを感じたのだ。

 みんなを幸せにしなければならない。

 それがドラゴンの本能だ。

 従って理由もなく他人を傷つけるような人がいるのは困るのだ。

 緑色のドラゴンの子どもがレベッカに言う。


「じょーおーさま。魔法、使お」


 レベッカはこくりとうなずく。


「あい。使いましょう」


 ピコピコと子ドラゴンたちの尻尾が揺れる。

 ベルは子ドラゴンたちの姿を見て鼻血を流している。


「では魔法をかけます!」


 レベッカはしゃきーんとした。


「「あい!」」


 一斉に返事しながら子ドラゴンたちが光る。

 レベッカたちドラゴンによる幸せの魔法である。

 この時点でヴェルダインにフラグが立っているのだがそれを本人は知らなかった。


 一方、アッシュは舞台からヴェルダインを見下ろした。

 やはり舞台に不似合いな殺気を放っている。

 敵の目的はアッシュかアイリーンだろう。

 アッシュはアイリーンに愛をささやくかのように耳打ちする。


「アイリーン……」


「あ、アッシュ。あの……そのな……近い」


 アイリーンは顔を真っ赤に……さすがのポンポコ村の住民でも顔を赤くしていた。

 アッシュはその意味を察することができずそのまま続けた。


「敵がいる」


 しょぼーん。

 アイリーンのテンションは駄々下がりだ。

 石があったら蹴りたい気分だ。

 そんな気持ちがボロボロのアイリーンは小声で返す。顔だけは無表情になって。


「わかった。それでどうする?」


「なんか……怒ってないか」


「怒ってなんかない」


「いや明らかに……」


「怒ってなんかないもん」


 『ないもん』である。

 絶対に怒っている。

 おかしいなと思いながらもアッシュは、それでもテロリストを優先する。

 アッシュはアイリーンに言った。


「今から舞台に引きずり出す」


「どうやって?」


「見てろ」


 アッシュはアイリーンを離すとテロリストであるヴェルダインを見た。

 神族に迎え入れられたヴェルダインは、まるで自分が王者でアッシュが挑戦者であるかのような優雅な態度を取った。

 だからアッシュはおどけながらヴェルダインに向け台詞を放つ。


「我々の愛の邪魔をするものがいるようだ! 結婚に異議があるものは前に出よ!」


 会場を笑いが包んだ。

 ヴェルダインは大笑いした。

 ああ、なんと小賢しい人間だ。

 神に逆らう愚か者には屈辱という罰を与えねばならない。

 ヴェルダインは席を立ち舞台に上がる。

 いいぞ付き合ってやろう。


「異議あり。花嫁は我がものだ」


 ヴェルダインは芝居に酔いしれる。

 舞台に付き合っているこの状況そのものがドラゴンの魔法の影響だとは気づかずに。

 だから自分自身が舞台に飲まれているとは気づかなかった。

 アッシュは上着を脱ぎ客席へ放った。


「きゃあッ!」と黄色い声がし、衣装の奪い合いが始まる。


「さあやろう」


 武器を持っていないアッシュは拳を構えた。

 それも武術的には間違っている構えだ。

 それは大きな構えだった。

 脇は開き、急所の集まる体の中心を相手に晒し、わざと不自然に胸を張り背筋を伸ばした。

 だが観客席からは大きく、強く、そして美しく見えた。

 ヴェルダインは笑う。

 アッシュの意図をわからずにその構えを嘲笑した。

 そしてゆっくりと剣を抜く。

 ヴェルダインの構えは脇を締めた小さく、柔らかく、そして素早く見えた。

 ヴェルダインは魔道士である。

 だが暗殺の専門家である彼は武術も体得していたのだ。

 ヴェルダインが構えると同時に客席から白い服を着た男たち数人が舞台に上がった。

 彼らは神族に仕える人間だ。


「おいおいおいおいおい! 加勢するぜ!」


 ボキリボキリと指を鳴らしながらアイザックが現れる。

 その手には騎士団の直剣が握られていた。

 クリスが「キャーッ♪」と裏から黄色い声を上げていた。


「俺も加勢するぜ」


 カルロスも加勢する。

 その手にはいつもの直剣ではなく、カトラスを持っていた。

 カルロスの本気スタイルである。


 これに観客はわいた。

 話の筋としてはいささか急展開すぎるが、それでも実に楽しかった。

 ドキドキワクワクの展開だった。


「おりゃああああああああああッ!」


 まず最初にアイザックが白い服の男たちに襲いかかる。

 フラストレーションが溜まっていたのだろう。

 アイザックは狂戦士と化していた。

 まずアイザックは慌てて剣を振るう男の剣をよけるとその腹にヒザ蹴りを入れる。

 カウンターで入った蹴りで男はその場にうずくまった。

 おそらくアッシュの次にこの戦闘のルールを理解したのはアイザックだろう。

 血を見せてはならない。

 なぜなら観客が楽しめないからだ。

 次にアイザックは剣をわざと別の男が持っている剣に思いっきりぶつけた。

 剣が刃こぼれした感触が手に伝わる。

 騎士団の訓練だったら殴られるだろう。

 騎士団の型なら肩か首を狙っているところだ。

 実戦においても同じ隙を狙うなら手首に切りつけるべきだ。

 そうすれば斬れずとも骨を折ることができた。

 一発で戦闘不能にできただろう。

 だがアイザックの選んだ選択肢は正解だった。

 予想外の動きに男は剣を落とした。

 派手なアクションにまたもや観客がわく。

 ぽかんとした表情の男の顔面をアイザックは拳で殴りつけた。

 男がふっ飛んだ。

 完全に舞台のアクションシーンである。

 そうこの舞台にはドラゴンの魔法がかかっていた。

 派手な動きで客の幸せをつかむ。

 するとその動きにボーナス補正がかかるようになっていたのだ。


 次はカルロスの番だった。

 カルロスは踊るように軽やかなステップを踏みながら移動する。

 それを裏から見ていたセシルが「キャーッ♪」と黄色い声を出した。

 カルロスはいつもの逃げ足の速い男とは違った。

 男二人が襲いかかってくる。

 彼らは計画が狂ったことを感じていた。

 ごく普通に襲いかかった。

 カルロスは素早かった。

 相手の振るってきた剣をいなすと一気に間合いを詰める。

 相手の懐に侵入する。

 そしてカルロスは腰のベルトをその奥のズボンの紐ごと切断した。

 ズボンがずり落ち、ズボンに足を引っかけた男が転倒する。

 もう一人も猛る草食動物の餌食になる。

 カルロスは男の足を踏んだ。

 そして男がつんのめって動きが止まった瞬間、つばの部分についている護拳(ガード)を男の顔面にねじ込む。

 男は派手にふっ飛び、カルロスの足の下には男が履いていた靴が置きざりにされた。

 観客は派手な演出に大喜びする。

 だが彼らは前座だ。

 次に控えるのは人類最強の傭兵と神族なのだ。

土曜日書く暇ないかも……

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