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三章プロローグ 神族  

 館の中を子ドラゴンたちが走り回っている。

 アッシュとアイザックはそんな状況で黙々と料理を作っている。

 新しい掃除用具をもらった幽霊のメイドのメグもニコニコとしながら館を掃除している。

 アイザックは芋をむいているとふと疑問が頭によぎった。


「アッシュさん。ふと思ったんですが」


「うん、どうした?」


「いやね、悪魔にとって人間ってのはどういう存在なんですか? 家畜? それともこの芋みたいなもんですかね?」


 アッシュは不思議そうな顔でアイザックの方を見た。


「ずいぶん難しい話をするんだな。考えたこともなかった」


「いやだって要するに俺たちって食料ですよね? そのわりには肩入れしてくるなあと」


「別に俺たちの肉を食うわけじゃないだろ」


「まあ、そうなんですが……要するに悪魔から見て人間ってのはどういう生き物なのかなあと」


「人間から見た豚みたいな?」


「そうそう。そういう感じです」


「どうだろう? そういう意味ではドラゴンも同じだろうな」


「ドラゴンはあまりなにも考えてないと思いますけど」


 そう言うとアイザックはドラゴンたちを見た。

 楽しそうに尻尾を振りながら遊んでいる。


「だな」


「うーん。難しいお話ですねえ」


 突然、瑠衣がその場に出現し話に割り込んだ。


「もう驚きませんからね」


「あら残念です」


 瑠衣はニコニコと笑っている。


「それで我々悪魔から見た人間という話ですね」


「そうそう。悪魔から見た人間ってのはどういう存在なんですか?」


「そうですね。悪魔にもいろいろおりますので全員がというわけではありませんが、主に二つの考え方がございます」


「こないだの芋虫みたいな悪魔と瑠衣さんたちですか?」


 アッシュが聞くと瑠衣がニコニコと微笑みながら答える。


「ええ、そうです。この間の悪魔は人間を支配すべき対象として認識してます。悪魔が積極的に介入して管理しないと絶滅してしまうと考えているのです」


「なんとなく理解できました。それで瑠衣さんたちは?」


「なるべくありのままで人間が望む形での交流、具体的には契約の範囲内での交流がしたいと思ってます」


「どちらも人間が滅ぶのは嫌だと……」


「ええ、死活問題ですから。人間上がりの少数は人間を欲望のままに支配したいと望んでいるようですがそれは例外です。彼らは砦の下に封印されているようです」


「……」


 アッシュは思った。

 「そういや最近砦壊したよね」と。


「アイザック」


「考えるのはやめましょう」


「ご心配には及びません。はぐれ悪魔は復活した可能性はございますが、今のところは出現の情報はございません」


 よかったと二人は安堵した。

 結構無鉄砲である。


「それで瑠衣さんは人間をどう思っているんですか?」


 アッシュが聞くと瑠衣は珍しく真顔になった。


「パートナーだと思っております。昔のように持ちつ持たれつ、お互いのためにお互いが必要な関係になればと思っております」


「ドラゴンは?」


 アイザックが聞く。

 アッシュだと少し言い出しにくい質問だ。


「どう考えてもドラゴンが望んでいるのは『家族』かと」


 アイザックもアッシュも納得した。

 かつてドラゴンは一緒にいてくれる生け贄を要求したくらいだ。

 とにかくドラゴンは人間に構って欲しいのだ。


「なんとなくわかりました。他には……例えば別の種族の話とか……」


「うーん……そうですねえ。精霊とかは人間には依存しておりませんし……ああ、そうそう神族がおりましたね」


「神族?」


「天使とかと呼ばれている悪魔です」


「哲学的ですね」


「ええまあ。もともと同じ存在なのですが教会の分類的にあっちは神族で私たちは悪魔らしいです」


「うっわ! やばい情報じゃないですか!」


「ええ、それで彼ら神族ですが、人間を『家畜』だと思ってます」


「へ?」


 アッシュは「そんなもんだろうなあ」と納得していたがアイザックが聞き返す。


「ええ。彼ら神族は人間は絶対神から与えられた家畜なので自由に扱って良いと解釈してます」


「あー! だから神話でどうでもいい理由で町を焼いたりするんですね」


 アッシュは実に納得したという顔をしていた。

 だが高度な教育を受けているアイザックは顔が真っ青である。


「え? マジっすか?」


 驚きすぎて言語中枢がバグを起こしていてチンピラの兄ちゃんのような返ししかできていない。


「はい。神族は悪魔でも人間基準で見た目が美しいものたちのことですからね。中身はちやほやされすぎて醜悪なものが多いのです」


「鳥とかってことですか?」


「ええ。人間の姿で背中に羽が生えているとか剣の化身とかただ大きい人間の姿とか……人間にとって都合のいい姿です」


「辛辣ですね」


「私たち悪魔の望みはどの勢力でも人類の発展と繁栄です。それを邪魔するものは敵です」


「邪魔?」


「ええ、絶対神を理由にして人間を縛るのが神族です。会ったこともないくせに。彼らはいつか自分たちに牙を向けられるのを恐れているのです」


「会ったこと……ないんですか……?」


 アイザックの顔は真っ青だ。

 宗教的背景とかそういうものがひっくり返りそうになっている。


「存在は否定しません。創造神とか絶対神というものに会ったという記録も手段もないだけで」


「手段がないんですか……? 昔戦われたのでは? というか地獄はあるのでは?」


「はい。絶対神には会ったことありませんから戦ったこともございません。人間のお話は面白いように脚色されていくものなので元々は創作かと。地獄は存在しますが、ここじゃない空間と言うだけで名付けたのも人間です」


 実にドライである。

 伊達に永い時を生きていない。


「えっと……魂を食べるんですよね」


「いいえ。食べるのは不幸です。でも魔術の中には魂と引き替えに使うものがあるので魂は存在はするのだろうというのが通説です」


「我々は死んだらどうなるんでしょうか?」


「私も死んだことはないのでわかりかねます」


 それは経験を元にした実に説得力のある話だった。

 悪魔にもわからないものはわからないのだ。


「やばい。悩みが増えた……」


「うーんアイザック。この話はアイリーンたちまでね。村の外では絶対話しちゃダメな」


「わかってますよ。こんなの誰が信じるっていうんです? うっわー。どうしよう……」


「ただ、補足いたしますと私たちはいわゆる神に近い存在は知っております」


「あーそっかー」


 アッシュは気づいた。


「え? なんですアッシュさん!」


「ドラゴンでしょ? ねえ瑠衣さん」


「はい。無償で奇跡を起こし。人間が大好きで愛に満ちている……人間の望む神の姿かと」


 瑠衣は微笑む。

 それは慈愛を含んだ笑みだった。

 アッシュたちのシャレにならない話の最中もドラゴンたちは無邪気に遊んでいた。

えーっと、ドラゴンの姿は待ってください。(これ以上言えないのよ!)

実はあまり容姿に言及がないのは連載はじめる前の予定では見る人によって違うという仕掛けだったんです。

それで皇帝がレベッカを見て恐怖で気絶する的な展開を考えていたんですが、いろいろと(よい方に)作品の事情が変わったので結局没になりました。

なので容姿を描写します。

それに従って前のところも直します。

お待ちください。


つか時間がなーい!

仕事が終わらないでゴザル!(『この腐れ無能が!』って言っちゃダメよ。)

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