表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/254

最終話 未来

 気が付くとウォーデンは暗闇にいた。

 暗闇をやみくもに歩く。なにもない闇。

 しばらく歩くと光が見える。ランプを持った女がいた。


「罪人よ。ともに参りましょう」


 ウォーデンはその顔に見覚えがあった。

 前皇帝が契約で縛り飼っていた悪魔だ。名を……伽奈と言ったか。


「なぜお前がここにいる?」


「私もまた罪人だからです。

私は皇帝との盟約のままにドラゴンライダーの両親を殺しました」


「ここはどこだ!?」


「死と生の境界。

あなたはあまりにも大きい憎しみを抱えた存在。

このままでは永遠にここを彷徨うことになるでしょう」


「どうして、お前はここに来ることができた?」


「カラスは死をつかさどる。

私は死をつかさどる魔王としてここに来ることができるのです。

もう戻ることはかないませんが」


「お前は……男と逃げたのではないのか?

どうして舞い戻った?」


 伽奈は目を閉じ、そして声を震わせた。


「……楽しい日々でした。愛する人と一緒にいられた。

でもそれも終わりです。

私は使命を果たさねばなりません」


「使命?」


「あなたを向こうへ送ることです」


「向こう?」


「ええ、あの光の向こうへ」


 伽奈が指をさす。突如として光が現れる。


「あれが死。なのか?」


「ええ、私もその先がどうなっているのかは知りませんが」


「そうか……お前の言葉は死を与えるんだったか。

お前が話しているということは……俺はもう死んでいるのだな」


 ウォーデンはとっくにあきらめていた。

 完全敗北だった。

 もう抵抗する気はない。


「ええ、あなたは死にました。

では行きましょう。

次は人間に生まれたいものです」


「人間は……案外つまらないぞ」


「それでも人間になってあの人と……」


 二人は光を目指して歩いて行った。


    ◇◇◇


 数年後。


「お姉ちゃん! 待って!」


 母親似で元気いっぱいの男の子が走る。

 先を歩いていた気の強そうな女の子が足を止める。


「もう、暗くなって帰ったらアッシュおじさんに怒られるよ!

またアイザックパパに『人類史上最強の男になるんだ!』って訓練させられるよ。

いいの? 二人とも怖いよ。

特にうちのアイザックパパ」


 気の強そうな女の子が腰に手を当てて言う。


「パパよりアイザックおじさんの方がよほど怖い……あと瑠衣お姉ちゃんも怖いなあ」


「瑠衣ちゃんは絶対に怒らせないようにしないとね……」


 気の強そうな女の子は遠い目をした。

 二人が話していると、前からドラゴンとほわほわとした女の子がやって来る。


「あーみんないたー。

カルロスパパが探してるよー」


「えー! 本当に。……レベッカお姉ちゃん。

うちのパパ、怒ってる?」


 男の子はドラゴンを「レベッカお姉ちゃん」と呼んだ。


「えへへへへー、暗くならなきゃ大丈夫だよ。一緒に帰ろうね」


「うん、お姉ちゃんたちも一緒に帰ろう」


 男の子は二人の女の子の手を取ると、みんなでドラゴンの背に飛び乗る。


「じゃあ飛ぶよ」


「うん!」


 夕陽で染まる空にはドラゴンが飛び交う。

 街道では悪魔たちがパトロールをする。

 クリスタルレイク。

 そこは新大陸の玄関口にしてドラゴンと悪魔、そして人間が暮らす街。

 ドラゴンライダーは命を紡ぐ。

 ドラゴンは希望を。

 悪魔は楽しみを。


「あ、ママ! それにパパも!」


 子どもが手を振る。その先にいたのは大男と優しい顔の女。

 自信に満ちた表情のドラゴンライダーとその妻がいた。


「にいたーん! おねえちゃーん!」


 レベッカはニコニコした。

 世界は今日も幸せだった。


<完>

今まで応援ありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

https://www.es-novel.jp/newbooks/#doranii05


ドラさび最終巻 7/16発売です!


すでに今日13日に並んでいる書店もあるそうです。

書籍版には特別編アッシュの結婚が掲載されております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ