表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンは寂しいと死んじゃいます ~レベッカたんのにいたんは人類最強の傭兵~  作者: 藤原ゴンザレス
第五章 ドラゴンと新大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/254

入港

 コリンが元気になると、ドラゴンの力で港も元に戻っていた。

 アッシュの槍による穴も何もかも、何事もなかったかのように修復されていた。

 いやむしろ、かなりゴージャスに修理されていた。

 ドラゴンたちが想像したパステルカラーの桟橋に、楽しかった釣りのできるスペース、それに街には海水浴を楽しめる砂浜まで出現した。

 それは今すぐ観光地にしても文句が出ないほどの素晴らしいものだった。

 なにせ新大陸の空気は暑い。

 熱帯なのかもしれない。

 トロピカルフルーツに、綺麗な色の魚に、砂浜。

 それだけで観光地になる。

 と、現実逃避するほど、この事態は深刻だった。

 新たな怪獣登場と思われ攻撃される可能性もあったのだ。

 だからアイリーンたちは、「何も知らないよ」という顔をして停泊することにした。

 ところが街の人々は、コリンに跨り、槍を放つアッシュを目撃していた。

 アッシュが船から降りると、辺りは歓声に包まれた。


「救世主がやって来た!」


「救世主様だ!」


 人々は好き勝手なことを言っている。


「ようやくこの日が来た……」


 エルフの老婆が感慨深く言うのを見てアッシュは顔を赤くした。

 褒められ慣れていないので、恥ずかしかったのだ。

 傭兵時代なら恐怖の叫びが聞こえているはずのタイミングである。

 コリンはアイリーンたちにそっと言った。


「この辺では、みんな子どもの頃からドラゴンの伝説を聞いて育つんだ」


 そのわりにはコリンの姿を誰も知らなかった。

 アッシュはそれを疑問に思った。

 もちろん、それを聞いておかしいと思ったのは、アッシュだけではなかった。

 学者たちや瑠衣も疑問を持った。


「なぜ普段のドラゴンを知らないのでしょう?」


 瑠衣は首をかしげる。

 誰もその答えを知るものはいなかった。

 アッシュたちは、街に入るときに受けた歓声の通り、街の人たちに歓迎された。


「ドラゴンはどこだ?」と聞かれたので、コリンを指さしたら、「ナイスジョーク」と笑われた。

 コリンは笑われても尻尾を振っていた。

 細かいことは気にしない性質らしい。

 実際コリンは、他のドラゴンと比べても大人しかった。

 レベッカたちはコリンが気に入ったらしく、コリンによじ登っている。

 おかげでコリンはドラゴンまみれだ。

 遠くから見るとカラフルな毛玉である。

 すっかり仲良しなのだ。

 やりたい放題だが、コリンも尻尾を振っていた。

 コリンもようやくドラゴンの自覚ができてきたらしい。

 青龍に言わせれば、コリンでもまだ幼竜らしい。

 青龍以外、ちゃんとした大人のドラゴンに会うのはいつだろうか?

 きっと楽しい仲間に違いない。

 そうアッシュたちは心待ちにしている。


 アイリーンは、街の代表に会うことになった。

 アッシュを救世主だと思い込んでいる街の人たちは、非常に協力的で、宿の心配はしなくても良くなりそうだ。

 街が点在するので、地図の提供もしてもらえそうである。

 街の代表たちも、頭からアッシュを救世主だとは思ってないが、利用価値はあると踏んでいるだろう。

 アイリーンとしては楽な話し合いだ。

 最優先なのは、遺跡や丘などのランドマークを巡ってドラゴンを回収することである。

 それはコリンに案内してもらうことになっている。

 探索の許可が出るまでは、アイリーンはバカンスを楽しもうと思っている。

 なにせ、すでに宿内にショートカットを作った。

 いつでも行き来できるのだ。


 学者たちは、さっそく調査を始めた。

 ロメロたちは、まずは市場へ。

 安全に手に入る物から、優先して手に入れるつもりだった。

 物々交換の必要はなかった。

 なにせ学者たちも街を救った英雄の仲間と思われている。

 調査に必要な植物に夕飯分の食材まで、無料(ただ)でくれたのだ。

 ロメロたちは、羊皮紙に植物の概要や、スケッチやらを書込んでいく。

 貰った実を切り、中身までスケッチし、食し、種を分ける。

 学者たちでは食べきれないので、レベッカやドラゴンたち、それにコリン、悪魔たちも実を貰う。


「おいし~」


「あまーい♪」


「あら、これは美味ですわ♪」


 ドラゴンも悪魔も幸せそうな顔をしていた。

 アイザックとカルロスは情報収集をする。

 一緒に学者も付いてくる。


「おかしいですね……」


 学者が言った。


「なにがです?」


 カルロスが聞く。


「いえね。新大陸に来てからずっと思ってたんですが、言葉が普通に通じるんです。何百年も途絶してたら通じなくなっても仕方ないはずなんですよね。例えばノーマンの西部や、帝国でも北東の方だと、訛りが強すぎて共通語が通じませんよ」


「なるほど……でもなぜ?」


「想像もつきません」


 学者もわからないことだらけだ。


「だから面白いんですけどね」


 学者は最後にそうつけ加えた。

 一方、その時アッシュは罰掃除を喜んでやっていた。

 これでもカルロスの船は、クリスタルレイクでゴミを回収しているため、他の船より清潔だ。

 だがアッシュはそれだけでは満足しない。

 なにせ館の掃除は、幽霊メイドのメグに明け渡してしまった。

 館の掃除はできなくても、船なら掃除し放題なのだ。

 アッシュはモップがけをしていく。

 虫やネズミの存在は許さない。

 船員の私室にも入る。

 とは言っても現在は、夜勤者の仮眠室である。

 私物はほとんどない。

 だからアッシュは部屋を容赦なくキレイにする。

 寝具のシーツを取り替え、毛布も回収。ベッドもキレイにセッティングする。

 最後にカルロスの部屋に入る。

 カルロスの部屋には、資料が所狭しと置いてある。

 その全てにカルロスは目を通している。

 職を転々としているため勘違いされがちだが、カルロスは勤勉である。

 なにせカルロスは、僧侶も騎士も船長もちゃんと普通以上にこなしている。(特に船長は神がかっている)

 全てをこなすのには人の数倍の努力が必要である。

 その中の一つでも、毎年落第者が数多くいるような職種なのだ。

 アッシュは、資料や机はいじらないでおく。

 ゴミの回収と拭き掃除、それに仮眠用ベッドのシーツと毛布の回収だけをする。

 全ての区画をキレイにすると、アッシュは満足げに微笑んだ。

 そして次はデッキブラシを取ると甲板の掃除に乗り出した。

 アッシュの活躍はカルロスの想像以上の成果を上げた。

 なにせ甲板員が、「俺たちの仕事を奪わないでください」とカルロスに直談判をするくらいである。

 結局、アッシュの罰は一日で終了したのである。

 一日と言えども掃除ができて、アッシュはリフレッシュしたとのことである。

 アッシュもすぐに観光に戻ったという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ