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ドラゴンは寂しいと死んじゃいます ~レベッカたんのにいたんは人類最強の傭兵~  作者: 藤原ゴンザレス
第五章 ドラゴンと新大陸

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治療

 港を壊滅させた二人は、沖に停泊している船に戻った。

 蒼いドラゴンだったコリンは、船に降りると緑色のふわふわもこもこの姿に戻った。

 ベルが鼻血を出して倒れたのは……言うまでもない。

 そんなコリンは、尻尾をふりふりしていた。

 レベッカも、コリンを見て尻尾をふりふりする。

 でも二人とも動かなかった。

 なぜなら、アッシュ、それにコリンはお説教されていたのだった。


「アッシュさん。怪獣を倒しに行くのはいいです。でも港を巨大な穴にすることはないでしょ!」


 カルロスは年長者としてアッシュを注意していた。

 そう顔のせいで忘れがちだが、カルロスはアッシュより年上である。

 アッシュは頭を掻いて「てへ」と可愛いポーズをする。

 残念ながら、アッシュは熊のような巨体なので、全く可愛くない。

 レベッカも真似して可愛いポーズを取る。

 レベッカの方は可愛らしかった。

 港は壊滅した。

 コリンに乗ったアッシュが放った槍によって、かつて港だったそこには、ぽっかりと巨大な穴が空いていた。

 海水が流れ込み、深部までは見えないが、相当な深さがありそうだ。

 復興には相当な時間が掛かるだろう。

「なんかテンション上がっちゃって」と主犯アッシュ、及び従犯コリンは言った。


 クリスタルレイクの住民なら誰もが知っている。

 ドラゴンのテンションが上がったときは、とてつもない事が起こる。

 だからこの注意に意味はない。

 だが一応お説教の一つもしておかなければならなかった。

 港を壊された住民に言い訳するために。


「というわけで、アッシュさんには罰として一週間、船の清掃と調理をしてもらいます」


 カルロスが罰を発表すると、アッシュは目を輝かせた。

 アッシュは掃除も調理も好きである。なんの罰にもなっていない。

 次はコリンである。

 コリンには瑠衣が教育的指導をする。


「えっと、コリンさんでしたね。ご自分がどれほど危険なことをされたのか、ご理解されていますか?」


 コリンは「なにが危険なの?」という顔をした。


「……えっと、ドラゴンは我々悪魔……それと天使に触れると生命力を吸い取られて消滅してしまうのはご存じでしょうか?」


「ドラゴン? ボクはドラゴンじゃないよ」


 そう言うとコリンはニコニコした。

 心の底からわかっていないらしい。


「……では、いったいどの種族で」


「わからないよ。犬人だと思ってたけど、違うみたい。でも、そこの子たち、ボクと似てるね。どこの種族?」


 コリンはレベッカやドラゴンちゃんたちを見て言った。

 その言葉に瑠衣は冷や汗を流している。

 瑠衣はアッシュたちへ視線を移す。

 珍しく助けを求めている。


「青龍君。なにかわかる?」


 アッシュが青竜を呼んだ。

 するとドラゴンちゃんたちに混じって遊んでいた青龍が、コリンに近づいていく。


「あとちょっとで成体のドラゴンだな」


 石化する前は成体だった青龍が言った。

 コリンは首をかしげる。


「ボク、ドラゴンなの?」


 ふわふわの尻尾がピンと上がる。


「うむ。お主はドラゴンだ。ふむ、消えかけてるぞ。ごっそり幸せを吸い取られたようだな。よく見ろ、手が透けている」


 コリンは自分の手を見た。

 本当に透けていた。


「うわわわわわ」


 口を開けて呆然としていた。

 自覚したせいか、次第にコリンの体まで透けていく。

 アッシュも瑠衣もこれには慌てた。

 知らなかったこととはいえ、コリンはかなり危険な状態だったのだ。

 だが青龍は慌てずに、ドラゴンちゃんたちに指示を出す。


「みんな。魔力を分けてあげるぞ」


「あーい♪」


 レベッカがコリンの周りをグルグルと回る。

 その後をドラゴンたちもついていく。

 コリンを囲んで輪になったドラゴンたちが踊る。


「楽しいの♪ 楽しいの♪ 新しいお友だち楽しいの♪」


 レベッカたちは手をチョコチョコと動かした。

 演奏がないのでちょっと寂しい。

 レベッカたちも苦戦しているようだった。

 それを見てアッシュはカルロスに言った。


「すまん。オデット呼んでくる」


 アッシュは猛然と走りショートカットに飛び込む。

 アッシュはクリスタルレイクに出ると、広場で演奏をしていたオデットを捕まえ小脇に抱える。

 暇なとき……というよりは仕事があるとき以外は、オデットは広場で演奏をしているのだ。

 するとオデットの演奏を聴きにきていたアイリーンが追いかけてくる。


「アッシュ、ちょ、ちょっと待て、なにがあった?」


 アッシュは足を止めると慌てて説明する。


「新しいドラゴンだ。消えかかってて、今、レベッカたちが治療してるんだけど、オデットの力が必要なんだ」


 オデットはわけがわからず、口をパクパクさせていた。


「私も行く!」


 アイリーンもアッシュに付いていく。

 とは言っても、アイリーンを待つ余裕は、今のアッシュにはなかった。

 アッシュはアイリーンに構わず全力で走り、ショートカットに飛び込む。

 船に出るとアッシュは小脇に抱えたオデットを降ろす。

 そこではレベッカたちが、真剣な顔をして踊っていた。

 なんだか苦戦しているようだ。


「すまんオデット、演奏してくれ!」


 アッシュが頼むと、それまで呆然としていたオデットは我に返った。

 すぐに広場で演奏していた弦楽器を使えるようにする。


「レベッカちゃん! 楽しそうな曲でいいよね?」


「あい!」


 レベッカはしゃきーんとする。


「みんな! 打楽器ないから、その辺の樽とかを適当に叩いて!」


 オデットはそう言うと演奏を始める。

 アッシュや海賊たちは一瞬、顔を見合わせると、慌ててそのへんの樽を叩いた。

 アッシュも樽を担いで叩く。

 叩く物がないものは手拍子をする。

 不思議と最初はバラバラだったリズムが合ってくる。

 オデットは即興で曲を演奏する。

 その最中に、アイリーンはようやく到着する。

 アイリーンは見た。

 船中が音楽に包まれていた。

 アッシュたちがリズムを作り、それをオデットがまとめる。

 作り出された音楽でドラゴンたちは歌って踊る。

 ドラゴンの輪の中に、オデットと同じくらいの大きさのドラゴンがいた。

 目をキラキラさせながら尻尾を右側に寄せて振っている。

 瑠衣がアイリーンに気づいて歩いてくる。


「楽しいですね」


 ただ一言、瑠衣は言った。

 アイリーンは返事する必要はないと思った。

 なにせ瑠衣は心から安心した顔をしていたからだ。

 真ん中のドラゴン、コリンも踊り始めた。

 レベッカたちに比べるとワンテンポ遅れている。

 どうやら鈍くさい子らしい。

 アイリーンはそれを見てクスクスと笑った。

 ドラゴンたちと踊っていると、コリンが光っていく。

 楽しければ、ドラゴンが滅びることはないのだ。

 さながらそれはドラゴンのコンサートのようだった。

 コンサートはコリンが治ってもしばらく続いた。

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