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ドラゴンは寂しいと死んじゃいます ~レベッカたんのにいたんは人類最強の傭兵~  作者: 藤原ゴンザレス
第四章 新大陸探索編

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海賊さんたちは暇を持て余している

 海賊たちはお行儀良くしていた。

 彼らは経験豊富な戦士だった。

 だからアッシュを見れば、オイタをすれば無残に皆殺しにされることはよくわかった。

 さらに村をうろついているガウェインを見て、逆らったら殺されるのもよくわかった。

 その横で買いものをするガウェインの嫁を見て、逆らったら一族郎党死ぬのもなんとなくわかった。

 女優を自称するきれいなお姉様にも全員で襲いかかっても一分もたないこともわかった。

 さらにカルロスを見て前よりもはるかに強くなっていることは一目でわかった。

 この村はレベルが高い。

 美形が多いとかそう言う意味ではない。

 単純に戦闘力が高いのだ。

 自分たちは精鋭だと思っていた海賊たちはすっかり自信を失っていた。

 戦力差がありすぎて喧嘩を売ろうという気にすらならないのだ。

 なので彼らは大人しく酒場にいた。

 そこでジョッキを拭いている優男がいる。

 アイザックだ。

 そのアイザックにすら勝てないという絶望的な事実がわかる程度には彼らは強かったのだ。

 酒場でオイタをしたら惨めにも全員ボコボコにされるだろう。

 なにせこの村の騎士団団長殿なのだ。

 普段、男がうんぬんとくだらない諍いを起こしている彼らも、絶対に勝てないとなれば話は別だ。

 それにこの酒場は妙に品がいい。

 ただ品がいいだけではない。

 それならば帝都の高級店のように嫌がらせの一つもしてやりたくなるものだ。

 だがこの酒場にはそれはない。

 この酒場が要求するのは身分や金ではない。

 紳士でいることなのだ。

 それでいながら妙に居心地がいい。

 店主の性格なのか店内の全てが清潔で、トイレまでも清掃が行き届いている。

 それもそのはず、この店は騎士団長が趣味で経営している店なのだ。

 しかも知り合いばかりの村でバーのマスターまでやっているのだ。

 友達相手の小さな商売相手に暴れて半殺しにされるのは格好良くない。

 ……と、彼らは思っていた。

 実際のところはアイザックの本業はバーのマスターである。

 副業が騎士団長なのだ。

 だがそれは常識的にありえないのだ。

 そんな変な店のせいか海賊たちも精一杯のオシャレをして行儀良く飲んでいる。

 なにせこの村にある酒場はここ一軒だけなのだ。

 出入禁止になるよりは大人しくしていた方がいい。


 さて、そんなアイザックの店の2階はカジノになっている。

 と言ってもテーブルと椅子があるだけだ。

 それでもサイコロ遊びや絵札合わせはできる。

 ギャンブルと言うと大金を賭けて豪遊する悪いイメージがあるが、実際は大人の社交としては古くからあるものである。

 対人戦で、奥が深く、やればやるほど上達し、会話も弾む。

 金額や手段を間違えなければ、スポーツの同好会などと同じで害よりも益の方が大きい。

 貴族なども愛好家が多いので2階をカジノとして開放しているのである。

 ただしルールは厳格だ。

 カジノと代官の認めるところ以外での賭博の禁止。

 いかさまは禁止。

 賭博で生計を立てるのも禁止。

 暴力行為も禁止。

 破ったら刑に加えてカジノに永久に出入禁止である。

 これらを理解しているため海賊たちも表面上は上品に遊んでいる。

 これは確かにうまく行っていた。

 実際、海賊たちも小遣い程度の金を賭けてまったりと博打で遊んでいた。

 だが面白くない。

 確かに暇つぶしはできているし、いかさまするよりは腕は上がった。

 だが海賊には刺激が足りなかったのだ。

 もっと暴れたかったのだ。

 もう一日中クリスタルレイクで健全に遊んでいるなんて耐えられなかったのだ。

 だから彼らはアッシュのケーキ屋へ向かった。


「アッシュの兄貴!」


 ほとんどの海賊にとって17歳のアッシュの方が年下だがそれは関係ない。

 この村で最強だから兄貴なのだ。

 アッシュはいつも通りのエプロン姿だった。

 肩にはレベッカがひっつき虫をしている。

 最近では甘えん坊に拍車がかかってしまっていた。

 そんな所に海賊たちが押し寄せたのだ。

 アッシュからすれば「はあ……」と返事するのが精一杯でる。

 そもそも、なにがなんだからわからない。


「アッシュの兄貴。探検に俺たちも連れてってくだせえ!!!」


 これは渡りに船だった。

 アッシュたちも探索の人手が圧倒的に足りないことを自覚していた。

 かと言ってオデットのようにエルフが本質を見る能力を持っているとしたら、悪魔の手を借りるわけにはいかない。

 戦闘能力のない村人を連れていくというわけにもいかない。

 だから海賊の手助けを断る理由はなかった。


「いいよ」


「ヒャッハー!!!」


 海賊たちは喜んだ。

 オデットは誰がなんと言おうが美形である。

 そんなのがたくさんいる村なのだ。

 目指さない手はない。

 村に着くまでは暴れることができるのだ。

 海賊たちは邪悪な目で喜んだ。

 だからアッシュは言った。


「でもエルフに迷惑をかけたら本気パンチな」


(首がもげるだろが!!!)


 全員が思った。

 暴れたら殺られると。

 だがそれでも自由恋愛は許されている。

 ワンチャンスはあるのだ。

 だから海賊たちは目を輝かせた。


「兄貴にどこまでもついていきます!」


 こうして探検隊メンバーのアテはできたのである。

 ちなみに彼らが心の底から後悔するまで数日の時間を要することになる。


 そしてアッシュの肩にひっついていたレベッカは思った。

 また幸せで満腹になる機会がやって来たのだと。



 同じ頃ノーマン共和国でも大騒ぎになっていた。

 なにせ新大陸の出現である。

 経済的にもビックチャンスなのだ。

 だが下見のために出した探検隊は消息を絶ってしまった。

 なにか危険な生き物が存在するに違いない。

 それは軍でも大騒ぎになっていた。

 結局、軍は危険な生物がいる陸路を放棄。

 海路から探索をすることを選択した。

 探索船は16門もの大砲を積んだ海軍の新型船である。

 クルーガーには真似のできない最強の軍艦である。

 民衆は沸き立った。

 新大陸はノーマンのものであると。

 新型船のクルーも世界で一番の技術力を持つという誇りを胸に旅だった。

 そして出港して三日後……

 幽霊船は新大陸を彷徨っていた。

 船には誰も乗っていなかった。

 船は街を目指して進んでいた。

 その街とは『旅立ちの街』。

 エルフの街である。

今回は説明回です。


明日はちょっと帰ってくるの遅いかも。

遅かったら投稿できないかもです。

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