完結篇 前篇 第6章 スーレア海峡海戦
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
今回の章は、意外な艦隊が主役になっています。お楽しみください。
スーレア海峡。
海の女神スーレアの名を持つ海峡に大小合わせて10数隻からなる艦隊が布陣していた。
そのマストには、マレーニア女王国海軍の海軍旗が翻っている。
ミレニアム帝国の艦隊が出動したとの情報を受け、レギオン・クーパーの艦隊の援護のための出撃だった。
「霧が濃くなってきました。視界が全くききません」
「目視による敵影確認は、ほぼ無理か。もっとも敵も条件は同じだが」
副官の報告に、彼はうなずいた。
「提督、本当に霧は晴れるのですか?」
「晴れる」
彼は断言した。彼は長年の経験から知っているのだ。
「特別顧問官殿、甲板は少し寒いでしょう。艦橋で待機されては?」
彼の視線の先にはデジタル迷彩服姿の第1統合任務艦隊から派遣されてきた幕僚の姿があった。
「お気遣い感謝します。しかし大丈夫ですので」
くしゃみをしそうになるのを、彼は必死で抑えていた。
艦隊は、旗艦を最先頭に凸陣形を敷いていた。
「霧が晴れれば、竜騎士団が攻撃を仕掛けて来る可能性がある。注意しろ」
竜騎士団の自殺攻撃で、レギオン・クーパーの戦闘艦が撃沈された。
これは、群島諸国連合軍にとっても衝撃だった。
だが、彼は逆に竜騎士団の焦燥感のようなものを感じていた。
2度もあっさり撃退されたのだ、世界最強という誇りも自信も揺らいでいるだろう。
亡命して来た竜騎士たちの話から、この攻撃が皇帝軍からの指示によるものだと聞いた軍首脳部は、自国民を使い捨てる作戦に激怒していたが、彼はむしろ、そんな戦術もあるのかと逆に感心してしまった。もちろん、真似ようとは思わないが。
ミレニアム帝国に潜入している間諜からの情報で、竜騎士団では逃亡、離反が相次いでいるらしい。
当然だ、次は自分かもしれないと考えれば、逃げたくもなるだろう。
情報では戦死、離反等により残存する竜騎士は30騎を切っているという。
それだけに、残った竜騎士も失地回復のために決死の攻撃をかけてくると予想される。
レギオン・クーパーの艦隊には、まともに戦いを挑んでも無駄とわかっているだけに、この艦隊は格好の獲物だろう。
確かに今までは、そうだった・・・
提督の口許に浮かんだ冷笑に、幕僚は世の中似たような癖をもつ人がいるものだ・・・と思った。
彼の脳裏に[魔女]の仇名をもつ[あさひ]の砲雷長が浮かぶ。
そして、このマレーニア女王国最強といわれるマレーニア機動艦隊司令官ティベリオ・コストナー。エルフと人族のハーフと聞いたが、外見は完全に人であった。
黒髪黒眼のため、日本人に近いように感じられる。見た目は20代後半なのだが、エルフの血を引いているという事は、実年齢は板垣司令官より年上だったとしても不思議はないだろう。
朝日が昇るのと同時に、徐々に霧が薄れ始めた。
見張り員が、望遠鏡を手に四方へ注意を向ける。
「艦影確認!海峡出口を封鎖するように、陣を敷いています!数、およそ30隻!!」
「識別旗は?」
「ミレニアム帝国海軍旗!あっ!あれは・・・!!」
「どうした?」
「艦隊旗を確認!ミレニアム帝国海軍第1艦隊です!!」
ティベリオも望遠鏡を手に確認をする。
鉄甲艦10隻を中心とした大艦隊だ。
「ここに来てようやく出てきたか・・・相手にとって不足なし!艦隊旗を掲げよ!!」
ティベリオ提督の指示でスルスルと艦隊旗が上がる。
アドリアナ女王より下賜された、彼個人の艦隊旗だ。これを確認した敵艦隊は、さぞかし慌てているだろう。
ティベリオ・コストナー・・・[マレーニアの海神]の異名を持つ提督。その名を聞く者の反応は二通りに別れる。海神として敬意を持つ者、海の悪魔として恐れる者。
陸軍のガルド・ド・アリング将軍と並ぶ海軍の将だ。
「本艦隊後方上空に敵影確認!!ミレニアム帝国竜騎士団と思われます。数、20騎!!」
「キスカと同じ手か・・・芸の無い・・・例の手筈通り、紡錘陣形に変更!対空戦闘用意!!」
「旗艦を中心に紡錘陣に変更!!対空戦闘用意!!」
軍用犬を思わせる、精悍な風貌のコボルト族の旗艦艦長が復唱する。
手旗信号で命令が伝達されると、艦隊は一糸乱れぬ動きで陣形を変更した。
「使用砲弾、三式弾改!!装填せよ!!」
三式弾改とは、旧日本海軍で使用されていた対空用の榴散弾を手本に、エルンストが開発した兵器である。
本家の三式弾は米航空機に対して効果は今ひとつであったのだが・・・
「突撃!!蛮族どもの軍艦を海の藻屑に変えてやれ!!」
「「「おう!!」」」
レギオン・クーパーの艦隊に散々叩きのめされた竜騎士団だが、相手がただの群島諸国の艦隊であれば、無敵だと彼らは信じ込んでいた。
大型艦の船腹から大砲がこちらに砲口を向けているのが見えたが、構わずに突っ込んでいく。
発射の詠唱を終えるのには、まだ時間がかかるはずであった。
それに、空中を自在に飛び回る竜に、砲弾を当てるなど不可能だ。
竜騎士は、自分たちの優位を疑いもしなかった。
聞いた事のない砲撃音とともに、一斉斉射を受けるまでは。
「なっ!!?うわぁぁぁぁ!!!」
先頭をきって突っ込んだ竜騎士団団長の目前で、突然、発射された砲弾が爆散した。
飛散した砲弾の鉄片の中に飛び込む形になった彼は、騎竜ごと身体をズタズタに引き裂かれた。
「団長!?」
誰かの叫び声は、絶命し海へ墜落した彼には届かなかった。
爆散に巻き込まれ、半数を失った竜騎士団だが、すぐに距離を取って態勢を立て直した。
「散開せよ、波状攻撃をかける!!」
竜騎士の誇りにかけて、これ以上不様な醜態を晒すわけにはいかなかった。
「次弾装填!!」
砲術士たちが、砲身後部から砲弾と炸薬を装填する。
マレーニア機動艦隊は、搭載している大砲を全て魔道砲から、火薬式の大砲に換装していた。
これにより、発射のための詠唱がなくなったことで、装填、発射までの時間が大幅に短縮できる。
それに、砲弾の装填方法を前部装填式から後部装填式に変えることで、効率を上げた。
さらに、これまでは1発撃つたびに台座ごと後退する砲台を、いちいち元に戻していたのを、砲身のみを スライドさせて、砲撃時の衝撃を逃がすようにしているのが、大きな 変更点だ。
砲身は反動で元の位置に戻る。この、新型大砲を開発製造したのはマレーニアの女性錬金術師ルクティアである。
「装填完了!!」
砲術隊長からの報告に、ティベリオはうなずく。
「撃ち方始め!!」
艦長の号令と共に大砲が、火を吹く。
撃ち出された砲弾が、再び爆散し、不幸な竜騎士の命を奪っていった。
「4騎が本艦後方より接近中!!」
見張り員が叫ぶ。
「・・・頭を使ったな、しかし、詰めが甘い」
後方を、見ることなくティベリオは冷笑を浮かべていた。
(似すぎなんですけど・・・この人、来島3佐と・・・)
幕僚は、心の中でつぶやいた。
「突撃艦に攻撃命令!!」
手旗信号に後方の小型艦が、素早く展開する。
「ガトリング式対空速射砲撃ち方始め!!」
ダダダダダッ・・・!!
大砲を搭載できない小型艦には、米軍の銃器愛好家からヒントを得て、製作されたという多銃身機関砲が搭載されている。
それが、火球を吐くために至近距離で静止した竜に火を吹いた。
CIWSほどではないとはいえ、その火力は竜の鱗を貫くには十分だった。
「嘘だ!!こんな事があってたまるか!!」
自らも、銃弾に貫かれ海に墜ちる竜騎士の最期の叫びだった。
「無敵だの、最強だのと言われるものは、いずれそれを越える存在に倒される・・・全ては歴史が証明しているだろう」
竜騎士団、全騎撃墜という武勲をたてた提督は、竜と騎士が沈んだ海面を冷ややかな目で眺めていた。
もっとも彼自身、竜騎士団に勝てるとは思っていなかった・・・数ヶ月前までは。
それを変えたのは、レギオン・クーパーの艦隊の戦いを直に目で見てからだった。
ケ”号作戦の時、彼はフソウに乗艦していたが、正直驚嘆した。
60騎を超える竜騎士を撃砕した驚異の戦闘力。そして、それをたった1隻の戦闘艦が総括指揮を執ったという。
アサヒという戦闘艦に乗艦するべきだったと、残念に思ったほどだ。
しかし、ただレギオン・クーパーの戦闘力に驚いているだけの他の観戦武官と異なり、彼は、これまでの自分たちの戦術を根本から見直す事を考えた。
彼らの持つ魔道兵器を保有する事は無理だが、現存する兵器を改良する事で対空戦闘の能力の底上げを図る事は不可能ではないのではと考えたのだ。
動き回る標的に砲弾を当てようとする必要はない。
向こうから砲弾に飛び込んでくるように仕向ければいい。
避けようがないほどの、砲弾の壁を作ればいいのではと考えたのだ。
女王からの許しをもらい、エルンストの協力で自衛隊や米軍から助力を得る事ができたのだった。
「さて、前座の余興は終わりだ。ここからが我々の本領だからな」
そう言ってティベリオは前方の艦隊を見据える。
その鋭い眼光は、獲物を狙う肉食獣のそれであった。
信じられない光景に、彼らは末端の兵から各艦の指揮官まで呆然としていた。
レギオン・クーパーの艦隊に壊滅させられたとはいえ、竜騎士団は、この世界においては無敵のはずだった。
それが、蛮族の艦隊を傷1つ付ける事もできずに、全滅させられた。
たとえ、それが海の悪魔と呼ばれる男の率いる艦隊だとしてもだ。
「総員、戦闘用意!!」
ただ1人、艦隊司令官コンラート・フォン・コッセルだけは、落ち着きを保っていた。
あの、カミカゼ攻撃で[レイク・エリー]を撃沈したパトリシアの実兄である。
「ここで、我らが敗退すれば、蛮族どもに神聖なる帝国の地が蹂躙されることとなろう。断じてそれは許すわけにはいかない。我が艦隊の全力をもって、マレーニア艦隊を撃滅する!」
冷静な司令官に、乗員たちは冷静さを取り戻した。
艦対艦ならまだこちらに分がある。何しろ敵艦隊はこちらの半数以下なのだ。
「全艦、複縦陣形をとれ!!敵艦隊を2方向からの砲撃により殲滅する!!」
コンラートの命令が伝達され、艦隊が海峡線に沿うように動き始めた。
「かかった・・・」
冷笑を深くした、ティベリオのつぶやきを聞いた幕僚だが、彼の言う意味がわからなかった。
「旗艦を先頭に単縦陣!!敵艦隊の中央に突入する!使用砲弾を徹甲弾に変更!砲撃準備!!」
コンラートは、迫り来る敵艦を見据えていた。
(パトリシア・・・)
妹は、先のラペルリ侵攻作戦で、レギオン・クーパーの戦闘艦を撃沈し戦死した。
皇帝軍からは、名誉の戦死として称賛され、コッセル家は名誉臣民として1等臣民に叙された。
しかし・・・表向きの報告とは別に、コンラートは妹が自ら志願したとはいえ自殺攻撃により、命を散らした事を知っていた。
老いて病に伏せっていた父は、妹の訃報の数日後に他界した。母は、悲しみのあまり父の後を追うように自ら命を絶った。
(なぜ、自殺攻撃など・・・)
パトリシアが、レギオン・クーパーの艦隊に激しい憎悪を抱いていた事は知っていた。
だからこそ、旧知のサブリナに妹の事を気遣ってくれるよう頼んだのだ。
彼女の事だ、パトリシアに思いとどまるよう説得してくれたであろうことは、想像できる。
サブリナはその攻撃の後、残りの竜騎士を率いて姿をくらましたという。当然だ、あんな使い捨てのような攻撃など、戦闘ではない。
コンラートは、それまで抱いていた皇帝に対する忠誠心にひびが入った事を感じていた。
しかし、それでも離反する事ができなかったのは、愛する妹の名誉を汚したくなかったからだ。
「魔道砲発射用意!!」
帝国でも選りすぐりの砲術士たちが、詠唱を開始する。
砲撃の詠唱に併せて、砲弾に破壊力を増す火魔法の力を纏わせる。直撃すれば1発で敵艦を撃沈する事も不可能では無い。
「弓兵隊、配置完了しました!」
甲板にいる、兵士を射るための弓兵も矢を番えて準備を整えている。
双方の艦隊が交錯する時が戦闘開始だ。
敵艦隊は、恐ろしく高性能な魔道砲を搭載しているようだが、数ではこちらが勝っている。そして、機動艦隊の名が示す通り、機動性を重視しているため、敵艦隊の船体は防御力が劣る軽戦闘艦が主力である。
ある程度の損害は覚悟の上で、敵艦隊の両舷から砲撃を加えれば殲滅できるはずだ。
この時、上空から双方の艦隊の動きを見ることができれば、2つに別れて進むミレニアム帝国艦隊の中央を逆進するマレーニア女王国艦隊という構図になる。
どちらも、砲を搭載しているのは船腹であるから、すれ違いながらの砲撃になる。
そうなれば、両舷からの砲撃を受けるマレーニア女王国艦隊の方が不利なのだが。
突然、足元から妙な違和感が伝わってきた。
「!!?。舵を切れ!!」
咄嗟にコンラートは操舵手に命令した。
最先頭だった旗艦は辛うじて難を逃れたが、転舵の遅れた次艦以下は暗礁に乗り上げたかのように、立ち往生した。
中には、立ち往生した前の艦に衝突する艦もあった。
「何が起こった!?」
「わかりません!!」
「・・・!!そうか・・・引き潮!!」
スーレア海峡の別名は[魔女の海峡]。帝国本土のある大陸と群島諸国との最短距離にありながら潮流が読みにくく、さらに潮位の干満の差が大きく大型船にとって航行するのに危険が伴う海峡だった。
船は大型になるほど、喫水線が深くなる。干潮時にこの海峡を通過するのは不可能。
マレーニア女王国艦隊が通過している海峡中央部が唯一の安全航路なのだ。
「最初からこれが狙いだったのか」
コンラートは、臍を噛む思いだった。
ティベリオがなぜ海神と称されるのか。知勇兼備の名将、それ以上に海というものを知り尽くしているのだ。
海そのものが、彼の味方となって自分たちに襲い掛かってきた。そんな錯覚を覚えた。
「・・・すごい・・・」
目前の光景に幕僚は、思わず声をもらした。
こちらを挟み撃ちにする形で、迫って来ていた敵艦隊の半数以上が、あっと言う間に操船不能の状態に砲撃を交える事無く追い込まれたのだ。
急激に潮位が下ったために、海底に船底を取られて立ち往生した艦はまだいい方だ。
中には、後続の艦に追突された衝撃で船腹に穴が開き、そこから海水が流れ込んだため斜めに傾いた艦、横転した拍子に魔道砲が暴発したのか爆発をする艦、海に投げ出された兵士たちを道連れに転覆する艦等、地獄絵図と言ってよかった。
「撃ち方始め!!」
「撃てぇぇぇ!!」
そこに、無慈悲とも言うべき砲撃命令が下る。
ズウゥゥゥゥン!!!
旗艦以下、両舷の砲門が火を吹く。
貫通性を高めた徹甲弾が、次々と指揮系統が混乱したミレニアム艦隊に着弾、爆発する。
辛うじて、航行可能だった艦も次々と撃沈、航行不能に追い込まれていった。
「コンラート提督、このままでは!!」
副官の悲痛な叫び声に、コンラートは目を伏せた。
旗艦も砲撃で、直撃は免れたものの、破損した船腹から海水が流入したのか、徐々に傾いている。
何とかマストに捕まって、転倒を防いでいるコンラートの前で、悲鳴を上げながら甲板を滑り落ち、海に投げ出される兵士たち。
もはや、継戦は不可能だった。
「艦隊旗を降ろし、降伏旗を掲げよ・・・降伏する」
自分には、もう家族はいない。しかし、部下たちには故郷に守るべき家族がいる。
これ以上の、無駄な抵抗で待つ者がいる部下たちの命を無駄に散らすわけにはいかなかった。
「ミレニアム帝国軍旗艦のメインマストに降伏旗を確認!!」
見張り員の報告にティベリオはうなずいた。
「全艦、砲撃中止。旗艦に軍使を送れ・・・それと、もうあまり時間がない。生存している兵士を、こちらに収容せよ」
「了解しました」
艦長が、部下たちに指示をだす。
突撃艦や、小舟が忙しく救助活動をするなか、ティベリオはコンラートと面会していた。
「・・・私の処遇は好きにしてくれていい。しかし、部下たちには寛大な処遇を要求する」
コンラートは、怯む事無く部下の助命を要求する。
「コンラート提督、我々は総司令官イタガキ提督の聯合艦隊の一員として行動している。イタガキ提督の名誉にかけて、貴公らの身柄の安全は保障する」
「・・・完敗だった・・・祖国を思う気持ちは、貴公らと我らと何ら変わる事は無いはずなのだが・・・」
小さく嘆息しながら、コンラートはつぶやいた。
ただ、そう言いながら彼にはわかっていた。自分たちは、レギオン・クーパー(皇帝軍)を信じられなくなっている、しかし彼らはレギオン・クーパー(日米合同軍)と信頼関係を築き上げた。
それは、2つのレギオン・クーパーの自分たちに対する対応の違いを見ればわかる。
皇帝軍は、被支配の存在としてしか自分たちを見ていないが、もう1つのほうは、共に生きる存在として彼らを見ている。
それが、勝敗を別ったのだろうと・・・
夕日に染まるスーレア海峡を眺めながら、幕僚は小さく息をついた。
この世界の海軍の戦いを目の当たりにするという貴重な体験ができた。
佐藤や来島なら、ぜひとも見たかっただろうと思えば、オブザーバーとして参加する事ができたのは幸運かもしれない。
「特別顧問官殿、これより本艦隊はグラング・バー島に帰投します」
「わかりました」
収容できる人数が限られているため、全ての兵士の遺体を収容する事ができない。
多くの兵たちの亡骸が波間を漂っている。
やるせない表情で、幕僚はそれを眺めていた。
「・・・海に生きる者は、海に還る・・・彼らは、スーレアの許に還った・・・いずれは、私も・・・そういう事です」
ティベリオは、静かに言った。
「・・・海に還る・・・ですか・・・」
潮が満ちてきたスーレアの海に幕僚は、挙手の敬礼をした。
海に還った軍人たちに敬意を捧げて・・・
彼ができるせめてもの手向けだった。
スーレア海峡海戦は、1つの潮流を起こした。
この世界の海軍が、レギオン・クーパーの力に頼らず最強の竜騎士団と艦隊に勝利した。
この潮流は巨大な波となって、ミレニアム帝国を揺るがす事になる。
完結篇前篇第6章をお読みいただき、ありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は今月17日を予定しています。