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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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逆襲 終章 自衛官になった理由

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です

 逆襲篇も終わりを迎えました。楽しんでいただき、ありがとうございます。

 

 見知らぬ星座が輝いている。

 久松率いる混成小隊はひさびさの村で身体を休めていた。

 深夜に目を覚ました笠谷は外に出ると、星を眺めていた。

「星を見ているんですか?」

 ふいに声をかけられ、笠谷は振り返った。

 そこには迷彩作業帽を被った久松の姿があった。

「ああ、そうだ」

「2佐も、星を見ると落ち着く質ですか?」

 笠谷は久松の顔を見た。

 久松は察したように微笑しながら、言った。

「空挺団にいた頃、こうやって星を眺めると心が癒されるんです」

「なるほど」

 笠谷は再び空を見る。

 久松は隣に来ると、同じように空を見上げた。

「久松2尉」

「はい」

 笠谷は空を見上げながら、青年幹部、世が世なら陸軍中尉の将校に尋ねた。

「なぜ、自衛隊に?」

「私は家庭的事情で防衛大学を選んだだけです。自衛隊にいれば身分は保証してくれますし、職も安定していますから・・・」

「確かにな」

 笠谷は納得した表情でうなずいた。

「2佐は、なぜ自衛官に?」

 久松が笠谷に顔を向ける。

「俺が自衛隊に入ろうと思ったのは、学生時代に沖縄に旅行に行った時、米軍戦闘機の演習を見たからだ。極限状態を体験したいという願望に取り付かれた・・・まあ、子供の好奇心みたいなものかな・・・」

「それでパイロットに」

 久松の言葉に笠谷はうなずいた。

「そうだ。今の自分にとっては戦闘機のパイロットが自分自身に誇れるものだと思っている」

 その時、流れ星が見えた。

「流れ星ですか。元の世界以来です」

 久松が笑みを浮かべて、つぶやいた。

「どんな世界でも、星空は見えるか・・・」

「そうですね。こうも考えられます。私たちがこの世界に来なければ、彼らと友人にはなれませんでした」

「悪い事ばかりでもないさ」

 久松の言葉に笠谷は同意した。

 地上、海上、空で行われる争いが幻に思えるぐらい星は輝いていた。



[ながと]のウイングで、佐藤は夜空を見上げていた。

 明日から始まる第2統合任務隊の演習にオブザーバーとして参加するように、水島司令に請われたためだった。

「佐藤2佐」

 コーヒーカップを両手に持って現れた人物を見て、佐藤は目が点になった。

「水島司令?」

「飲め、私はコーヒーが嫌いだから、上手く淹れられたかどうかわからんが、何、死ぬような事はない」

 とんでもない事を、言いながら手渡されたコーヒーカップを手に、佐藤は引きつった微笑を浮かべた。

「・・・ありがとうございます・・・いただきます」

「・・・・・・」

 急に不機嫌な表情になった、水島に内心焦った。

「・・・どうしました?」

「・・・また、茶柱が立ってる・・・いや、何でもない。こちらの事だ」

 とんでもなく不安になる事を言いながら、水島は、自分用の緑茶を1口すする。

「君に1言、礼を言っておこうと思ってな」

「?」

「君たちが、通信を傍受してくれなければ、我々はあのまま漂流し続けていただろう・・・そうなれば、2度と(あまね)多聞(たもん)に会えなかった・・・感謝している。ありがとう」

「・・・ええと・・・どうも・・・しかし、良かったのですか?」

「何がだ?」

「第2統合任務隊は、私たちの巻き添えで襲撃を受けて3人の戦死者を出してしまいました。それでも、我々と共に武力行使をすると・・・」

 事実、第1と第2の曹士たちの間で何件かのトラブルがあった事は聞いている。

「どうしても、納得できない者には退艦の許可を出した・・・40名とは、意外に少なかったと思っているくらいだ・・・それに、あれは私の考えの甘さが招いたと思っている。佐藤2佐が気に病む必要はない」

 夜風が2人の間を吹き抜けていく。

「・・・それに、今は前に進む事しか考えていない・・・後ろを振り返ったところで過去に戻れるわけではないしな・・・」

「・・・・・・」

 少し冷めかかったコーヒーは意外とうまかった。佐藤は、星を見上げた。

 その無数の瞬きは未来が1つではない事を物語っていた。


 逆襲終章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 逆襲篇はこれで終わりです。次回からは世界の真実篇になります。

 次回もよろしくお願いします。

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