逆襲 第2章 海賊島強襲
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです
陸上自衛隊第1任務団混成航空隊に所属するAH-64D[アパッチ・ロングボア]のパイロット榊原茂雄1等陸尉はヘリ搭載護衛艦[ふそう]のパイロット待機室にいた。
パイロット待機室にはAH-64D隊のパイロットと海自(海上自衛隊)のパイロットたちが詰めていた。
榊原は陸曹からの叩き上げの幹部であり、部下たちから父親のように慕われている。しかし、友人や嫁からは若い時から老け顔だからそう言われると、からかわれている。
パイロット待機室のドアが開き、OH-1[ニンジャ]の機長の佐木川3等陸佐が入ってきた。
「アパッチの出番だ。神谷陸将から出動命令が出た」
佐木川の言葉に、榊原が立ち上がった。
「さあ、ここで1発決めるぞ!!」
「ウィ~ス」
榊原の言葉にアパッチ隊のパイロットたちが苦笑を浮かべながら答える。
「なんだなんだ、その空気が抜けた風船みたいなリアクションは。もっと、盛り上がれ!俺たちの出番が回ってきたんだ。世界最強の戦闘ヘリで大暴れができるんだぞ」
彼が率いるAH-64Dはバルカン半島の派遣では4機しかなく、虎の子であったから、ここぞという時しか出番がない。
もともと、AH-64Dは日本でもわずか13機しか調達されなかったが、近年になってから調達予算が確保され、再調達されたが、まだまだ数は揃っていない。
「もう1度言うぞ、1発決めるぞ!!!」
「「「おおぉぉぉ!!」」」
榊原の言葉に彼の部下たちが声を上げた。
[ふそう]と同行していた輸送艦[しれとこ]の飛行甲板に迷彩柄のUH-60JA[ブラックホーク]が3機、エンジンを暖気しながら飛行準備に取りかかっていた。
UH-60JAは米軍のUH-60と同型の機体で、日本仕様に開発された機だ。陸自(陸上自衛隊)では[ロクマル]と呼称している。
3機のUH-60JAに特戦群(S)の1個小隊が乗り込む。
UH-60JAは2名のパイロットと2名のドアガンナー以外に10名の完全武装した隊員を乗せる事ができる。
特戦群(S)もこの作戦に参加する。
UH-60JA隊を指揮するのは栗多田1等陸尉だ。
「[しれとこ]コントロールより、ミカヅチ1(ワン)。発艦準備は完了したか?」
「こちらミカヅチ1。発艦準備完了」
「ラジャ。発艦を許可する」
管制官から発艦許可がおりると、メインローターの回転数を上げ、UH-60JA群が空に浮き上がり、[しれとこ]から離れていく。
巨大な[しれとこ]が見る見る小さくなっていく。
先導には[ふそう]から発艦したOH-1とAH-64Dがつく。
「ヤタガラスより、ミカヅチ隊。聞こえるか?」
OH-1から通信が入る。
「ミカヅチ1より、ヤタガラス。感度良好」
ちなみに、ヤタガラスがOH-1のコール・サインで、ミカヅチがUH-60JAのコール・サインだ。
「まず、ビックベア隊が着陸地点にいる敵を排除する。その後、Sをロープで降下させろ。気を抜くなよ。海上支援はあるが、海賊の数は3000人だ」
ビックベアはAH-64D隊のコール・サインだ。
「こちら、ミカヅチ1。ラジャ」
彼らにとってはいつも通りの作戦だ。訓練で何度もした事を実戦でするだけだ。しかし、実戦になると何かが違う。
栗多田は自機のガンナーに言った。
「海賊島に入ったら交戦許可内だが、一般人や拉致被害者がいる、発砲には注意しろ。よく狙って撃て」
「了解です」
「承知しています」
2人のドアガンナーが緊張した声で答える。
「目標視認!」
AH-64Dの前席に座る副操縦士兼射撃手の宮沢3尉が報告する。
「よし、じゃあ海賊狩りをするぞ。だが相手はよく見て撃てよ」
「了解です。ボス」
宮沢は前方監視カメラが捕らえた海賊島の港町を見た。
陸自が配備しているAH-64Dは最新型の前方監視カメラを装備している。
これは遠距離でも、人の顔がはっきりわかる。
宮沢はチェーンガンの安全装置を解除した。
「射撃準備完了」
宮沢からの報告に榊原は指揮官である佐木川に連絡した。
「ビックベア1より、ヤタガラス。目標を捕捉した。射撃許可を」
「許可する」
佐木川からの返答を受けると、榊原は、撃て、と命じた。
宮沢はヘルメットに取りつけられたIHADSS(統合ヘルメット表示照準システム)を目標に顔を向け、チェーンガンの発射ボタンを押した。
IHADSSは戦闘ヘリのパイロット特有の装備で、片眼にコンビナー・レンズと呼ばれる画像投影の円形眼鏡を装備する。これにより視線を目標に合わせる事で、自動的に兵装の照準を合わす事ができる。
機体機首の下部に搭載されている30ミリチェーンガンが火を噴いた。
30ミリ弾が木造の建物を粉々に粉砕し、そこにいた海賊たちをずたずたに引き裂いていく。
僚機のAH-64Dはヘルファイア対戦車ミサイル(AGM-114)を発射し、停泊している海賊船を攻撃する。
主力戦車の装甲を貫通させることができるヘルファイアミサイルの直撃を受ければ30メートルに満たない木造船は大破またはかなりの損害を受けるだろう。
発射されたヘルファイアミサイルが海賊船に命中すると、思った通りマストが折れ、かなりの損害を与えた。
海賊島までかなりの近距離まで近づくと宮沢はキョロキョロと首を回した。
戦闘機等と異なり、旋回式の機関砲を持つ戦闘ヘリはガンナーの視線と機関砲の動きがリンクしている。
宮沢は容赦なく海賊たちに機銃掃射を加える。
海賊島の港町はたちまち白煙が上がる。
「前にボスがサバの味噌煮にチャレンジした時みたいですね」
宮沢は軽口を叩く。
「あ~味噌煮が味噌焼きになった時だな・・・いい加減、忘れろ」
「ビックベア1より、ヤタガラス、降下地点、上陸地点を確保した」
「こちらヤタガラス、ラジャ。これより、Sを乗せたミカヅチ隊を突入させる。SBUも海上から突入する。上陸地点、降下地点の上空支援を頼む」
「ビックベア1、ラジャ」
「ビックベア2、ラジャ」
続いて3、4と了解の返事をする。
榊原は操縦桿を左に倒し、彼が操るAH-64Dは大きく左に旋回した。
特戦群の隊員を乗せた3機のブラックホークがそれぞれの降下ポイントでホバリングし、ロープが降ろされ、次々と特戦群の隊員たちが降下する。
アパッチの機銃掃射から生き残った海賊たちがそれぞれの得物を持って襲いかかるが、展開した特戦群の隊員たちによって制圧された。
彼らの手にはACOGとM203擲弾発射器を装着したM4A1がある。
海賊たちが固まっているところに、擲弾を撃ち込み、他には正確な照準で確実に仕留めていった。
ホバリング中のUH-60JAもドアガンである12.7ミリ重機関銃(ブローニングM2)が火を噴き、建物内に隠れている弓手を壁ごと粉砕する。
降下が完了すると、UH-60JAは上空援護につく。
海上からも2隻の高速型複合艇が現れ、海賊島に突入してきた。
乗っているのは特警隊の1個小隊だ。
彼らの手にはドットサイトとフォアグリップを取り付けたHK416である。
海賊島に上陸した特警隊もAH-64Dの支援を受けながら、海賊たちを制圧していく。
自衛隊と海賊たちが戦闘を行っている頃、先に海賊島に潜入していたアメリカ海軍特殊戦コマンドNavySEALsチーム0アルファ小隊は海賊島の中で一際大きい屋敷を包囲していた。
チーム0は完全な極秘部隊であり、主に要人の暗殺、拉致を主任務とする部隊だ。
「いいか、目的はバーバル海賊団団長バリー・ホルミノフの逮捕だ。国際テロリストの指導者のように殺したら意味がない」
突入班の指揮官であるカーター特務曹長が部下たちに最終確認した。
森林用の迷彩服を着たアルファ小隊の隊員たちは全員バラクラバを被っており、顔が、いっさいわからない。
「爆破!」
カーターの号令で、門にセットされたC4爆弾が爆発し、門を吹き飛ばす。
隊員たちがドットサイト、フォアグリップ、サプレッサーを装着したSCAR-Lを構え、屋敷内に突入した。
屋敷の庭には警備と思われる海賊たちの死体が倒れていた。
彼らの頭部には弾痕があった。
スナイパーが掃除してくれたようだ。
「庭の警備兵は始末したが、慎重に進め」
指揮官のマックス・ウォーカー大尉の声が無線に入った。
アルファ小隊は裏口と正面玄関から突入した。
数人の海賊が襲ってきたがSCAR-Lが火を噴き、仕留めていく。
海賊が床に倒れると隊員たちは彼らの頭部に1発撃ち込む。
これは確実に相手を殺害するための行動だ。
「1階クリア」
指揮官は静かに言った。
これまで射殺した海賊は3人。
「2階に行くぞ」
隊員たちは2階に繋がる階段をゆっくり昇っていくと、2階の廊下に背の高い男が立っていた。全身に影をまとったような不吉な姿だった。
色の薄い髪をもつ40代の男。右の目には黒い眼帯があり、左の目には狂気とも思える獣じみた光が漂っていた。
間違いない報告にあったバリー・ホルミノフであった。
「バリー・ホルミノフだな?」
カーターが威勢のある口調で告げる。
「・・・・・・」
眼帯の男は何も答えない。
「バリー・ホルミノフ!その剣を捨て、両膝をつき両手を上げろ!」
「・・・・・・・」
相変わらず何も答えない。
「何度も言わないぞ!」
「・・・・・死ね」
眼帯の男は小さくそう言うと持っていた剣を構えて、隊員に襲いかかった。
だが、予想できたことで、気の抜けた銃声が数回響き、眼帯の男の右肩と両足に弾丸が命中した。
「・・・うっぐ!?」
男は激痛により、剣を落とし、床に倒れた。
「お、おのれ」
眼帯の男は左目で隊員たちを睨む。
「目標と思われる者を確保した。抵抗したため発砲した。何人かこちらに来てくれ」
その後、この男がバーバル海賊団団長バリー・ホルミノフである事が確認され、ノインバス王国の裁判で死罪となり、周辺諸国の使者たちの前で公開処刑になった。
数時間後。
海賊島では、手枷と足枷をつけられた数1000人の海賊とその家族たちが小舟に乗せられ、沖にいる護送船に連行された。
島内には、ノインバス王国の兵士たちと黒い立検隊服に身を包んだ海自の立検隊員たちが監視等を行っていた。
立検隊員たちの手には89式5.56ミリ小銃(折曲式銃床)と立検隊にも配備されたばかりのMP5A5が光っている。
「どのくらい収容した?」
上陸している立検隊の1尉がノインバス王国軍の若い指揮官に尋ねた。
「ようやく半分ってところだな」
「そうか」
1尉は武装解除させられた海賊たちを見た。
みな若い。中には10代前半の少年や少女たちも多い。
「まあ、ソマリアやマラッカ海峡に出没する海賊にもあれぐらいの歳の子はいますね」
隣にいた海曹長の男が口を開いた。
「奴らと比べればこいつらはかなりマシだよ」
「同感です」
ソマリアやマラッカ海峡等の海賊は、AKやRPG等で武装していたが、近年ではどこから入手したかわからない対空兵器や旧式の武装ヘリ、または旧式の水雷艇、ミサイル艇等が使われている。しかも、それに付け加えてゲリラ戦であるから余計に質が悪い。
「これで1つ1件落着と言うべきだろうが、また1つ問題が増えるな・・・」
[やまと]のCICで制圧された海賊島の画像を眺めながら板垣はつぶやいた。
バーバル海賊団壊滅についてはじきに群島諸国全域に広まるだろう。群島諸国には複数の海賊団が存在する。海賊の被害に悩まされている各国の首脳部は間違いなく海賊対処の依頼がくるだろう。
さて、どうしたものか、と板垣は悩んだ。
「これでシーレーンの確保はできましたね。後はノインバス王国とマレーニア女王国から派遣される宮廷錬金術師たちの到着を待つだけですね」
若い幕僚が両手にコーヒーカップを持って少年のような笑みを浮かべて言った。
ただでさえ童顔であるから、より一層それが増す。
「すまんな。佐藤」
板垣は佐藤からコーヒーを受け取る。
今回、海賊団を排除したのは、食糧等を満載した船団の安全を確保するためだけではない。ノインバス王国とマレーニア女王国から派遣される宮廷錬金術師たちの安全確保もあった。
なぜ、宮廷錬金術師たちが派遣されるかと言うと、ノインバス王国で油田が発見されたのだ。
当然、自衛隊は大騒ぎになった。当然だろう、最大の懸案事項の燃料問題が解決するかも知れないからだ・・・が、冷静になって考えれば、大きな壁があった。
どうやって、各燃料に精製するのか、だ。
すぐには解決出来ない問題に幕僚たちは頭を抱えた。
精製用の設備が無い以上、豊富に原油があっても意味が無い。
そんな折、フレア王女が1人の人物を伴って板垣を訪ねて来た。
その人物の姿を見て、板垣たちは凍りついた。
見た目は12・3歳の少女だったが、その少女は人では無かった、頭に2本の角、[鬼]と日本で呼ばれる存在だったからだ。
少女は、そんな反応を特に気にする事無く、佐藤の前にトコトコと歩み寄った。
「サトー、私の事を忘れたのか?」
突然の言葉に、そこにいた全員が「どういう事だ?」という視線で佐藤を見た。
「ええと・・・確か兵器廠で会ったっけ・・・」
疑惑の視線に言い訳のように佐藤は答えた。
「クルシマと一緒に会って、錬金術の話をしたはず」
「そうだった・・・」
「コレ、げんゆから作ってみた、見て欲しい」
いきなり目の前に差し出された小瓶に入った液体、その特有の臭いに全員が、驚いた
「「「これって、ガソリン?」」」
「がそりん・・・なのか?もらった液体に似せて作ったが、これでいいのか?」
鬼の少女は、首を傾げて聞き返してきた。
ちなみにこの少女は、錬金術の修行中で、唯一精製できたのが、ガソリンのような、液体だったそうだ。
「父には話を通しています、宮廷錬金術師であれば、他のものも、作れるかもしれません」
フレアの言葉を板垣たちは唖然として聞いていた。
全員の脳裏にいったい、自分たちの悩みは何だったのか・・・という言葉が浮かんだ。
数日後、1人の男がフレア王女の紹介状を持って佐藤を訪ねてきた。
その男に佐藤は見覚えがあった。
「えーと、エルンストさんでしたっけ・・・」
「ええ、先日は大変興味深い話を聞かせて頂き、光栄でした」
思い出した、あの時来島にラペルリ奪還の立役者云々と紹介され、どっかの映画俳優のように佐藤を見ようと集った人々に、揉みくちゃにされ、質問攻めに合ってしまったのだった。
当の来島は、佐藤を犠牲にして、1人で色々と見て回っていたようだが、その時兵器廠で、新型の魔道砲を研究開発しているという、このエルンストという男と、その弟子の鬼の少女と知り合い、その時に錬金術の事を聞く事ができたのだった。
「あなた方の必要としている、燃料の精製に、是非協力させて頂きたいのです」
「それは、ありがたいのですが・・・なぜ私に・・・こういった事は、まず板垣司令官に話を通して頂かないと・・・」
「勿論です、これからお会いするつもりです。これは、アマネ殿にお渡ししようと思ったのですが、イタガキ提督の右腕の貴方にお渡しした方がよいと言われまして・・・」
そして1冊の古い本を手渡された。
「この世界各地に伝わる魔道砲の開発研究を記したものです。これからの戦いに役立てて下さい」
「・・・・・・」
確かに、魔道砲の威力は侮れない、[しれとこ]で犠牲になった5人は砲弾に付加された火魔法の威力で、遺体が1部炭化した状態だったという。
まさか、艦対艦の近接戦闘になると考慮していなかったとはいえ、失態だった。
戦術を根本から見直す必要もある。非常にありがたい贈り物といえる。
その来島だが、中央突破を具申した事で5人の犠牲者を出した事に責任を感じ、一時不安定な精神状態に陥ったときいている。
自分も来島の立場なら同じ事を言った、来島は独特の言動から誤解されがちだが、生真面目で責任感が強い、それだけに自分を許せないのだろう。
早く立ち直ってほしいが、こればかりは本人の気持ちしだいだ・・・
「ところで、1つお聞きしたいのだが・・・」
「はい?」
「アマネ殿は貴殿の部下と聞いていますが・・・個人的にも親しいとか・・・」
なんでそうなる?
それに来島は稲垣の部下であって、自分の部下ではない。確かに階級は自分が1つ上であるが、防大では彼女は先輩だ。
個人的に親しい?
色々と腐れ縁的に付き合いはあるが、それ以上でもそれ以下でもない。
しかし、なぜこの男は自分に嫉妬のこもった敵意のような視線を向けるのか・・・
「貴殿がアマネ殿の恋人との噂を聞いたのですが事実ですか?」
誰だ~!そんな噂をした奴は!!
「ち・・・違いますよ!!」
「まことか?」
「か…彼女は他に好きな人がいますよ・・・」
なんかこの人怖いぞ、と思った佐藤は逃げるために、咄嗟に嘘をついた。
「誰ですか?」
「[ノースダコタ]のユウリ艦長です」
さらに、大嘘をついてしまった。
この事で、佐藤は後日、来島に盛大に苦情を言われる事になる。
逆襲第2章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回からは1話づつ投稿させていただきます。
次回の投稿は9月3日までを予定しています。




