ラペルリ奪還 終章 ミレニアムの正体
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ラペルリ奪還篇も終章をむかえました。楽しんでいただきありがとうございます。亡国のレギオンはまだまだ続きます。
[しれとこ]の通用甲板で月を見ながら久松は思った。
何も変わらない、艦隊が異世界に飛ばされる前までそう思ってた。
バルカン半島に行っても何も起こらない。そう楽観的に彼は考えていた。しかし、それは違った。すべてが変わったのだ。
そんな事を考えていると、ふと高校時代の友人に言われた言葉が頭の中に過ぎった。
なぜ、戦争に行く、今までどうりの平和維持活動(PKO)で十分なんじゃないのか?と友人に聞かれた。
友人の問いにその時の久松は何も答えることができなかった。だが、今は違うと言える。
戦争をしたい者なんて誰もいない。そこで戦争があり、目の前で殺されそうだった人を助けるために戦っただけである。結果として激戦となっただけだ。
そして、高井の問いかけにいまだ答えが見つからないでいる。
心地いい夜風が頬を撫でる。
まるで夜が彼の心を癒やすかのようだった。
「クマツ様。何をなさっているのですか?」
背後からかけられた声に久松は振り返った。そこにはクリスカの姿があった。
ラペルリ連合王国から寄越された協力者たちの1人だ。
「いや、月を見ていたんだ」
久松は微笑みながら答える。
クリスカは久松の隣に立ち、月を見上げる。
「月がお好きなんですか?クマツ様」
「そうでもないんだけど、元の世界じゃ月明かりだけの夜は陸自だとなかなか見れないんだよ」
「聞きました。クマツ様のお国では夜でも昼と変わらないぐらい明るいんですね」
クリスカが微笑みながら言った。
「そう」
久松は月明かりに照らされたパスメニア港が見える。
いかに巨大な航空母艦と言えど、個室を与えられるのは特別な立場にある者だ。例えば、板垣のような司令官、艦長クラス、そして幕僚たちである。
お世辞にも広いとは言えない笠谷の個室に1人の来訪者がいた。
首席幕僚の佐藤だ。
彼の手には科員食堂に設置されている自動販売機で売られているノン・アルコールビールを2本持っていた。
缶ビールを開けて2人で乾杯すると一口飲む。
その後、少しの取り留めのない話の中で佐藤が笠谷の外出時の話を持ち出した。
「昨日はよかったですねェ、可愛い女の子とデートできて・・・」
「は?」
別に隠す事でもない事なのだが、どうやら海自の女性自衛官のなかで噂が広まりつつあるらしい。
「第2部長は可愛い娘とデートだというのに、私は休暇返上で仕事ですからね」
「・・・・・・」
佐藤も笠谷と日時は異なるが、上陸申請を出していたはずと記憶している。
「[あさひ]の稲垣艦長からどうしても・・・と、頼まれましてね・・・」
稲垣艦長から打診されたのは、来島3佐のパスメニア市街にある、軍艦の造船廠と兵器廠の視察と言うより見学に同行してほしい、というものだった。
もちろん断ってもよいが、その場合は直接断りをいれてくれと言われて、仕方なく同意したとのことだった。
「しかし、最新テクノロジーの塊のイージス艦の砲雷長の彼女が我々の世界と多少は異なるとはいえ、レベル的には中世の軍艦や兵器を見てどうするんです、歴史好きには堪らないとはおもいますが」
「さあ、そこがあの人が変人と言われる所以ですが、ただあの人は普通の人が見えないものを見てますからねぇ、何かあるんだとは思いますが、人を巻き込むのは勘弁してほしいです」
「お疲れ様です」
本当に心から笠谷は言った。
「笠谷2佐。ミレニアムって意味知ってます?」
佐藤の唐突の質問に笠谷は、急にどうしました、と言いたげな表情で顔を上げた。
「ミレニアムって、1000年紀っていう意味なんですよ。どうしてそんな国名にしたんでしょうね」
佐藤が真顔で言うので、笠谷が、そんなの彼らに聞いてください、と言おうとした時、ふと何か思い出した。
「もしかしたらその意味が彼らの正体なのかもしれません」
「どういう事です?」
佐藤が首を傾げる。
「1000年王国の栄光を持ちヨーロッパ全土を支配下に置き、さらに戦火を拡大し、英国、旧ソ連、米国に戦争を挑んだ大国。半世紀以上前の独裁国家」
「ま、まさか!?」
佐藤が絶叫するが、笠谷はノン・アルコールビールを一口飲んで言った。
「ヒトラーの第3帝国・・・ナチス・ドイツだ」
ラペルリ奪還終章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
ラペルリ奪還篇はこれで終わりです。次回は救出編になります。米海軍が出てきます。しかし、その前に番外編ですので、ご了承ください。
次回もよろしくお願いします。