ラペルリ奪還 序章 ラペルリ援軍
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです
平行世界篇をお読みいただきありがとうございます。
今日から新章突入です。
主に陸上自衛隊がメインです。
では、お楽しみください。
突き抜けるような青空と群青の海とを分かつ水平線は、見る者の心を癒すように輝いている。
どこまでも広がるのどかで平和な光景だった。
自然の風と風魔法が帆に当たり、船を進めている。その船は1隻や2隻ではない。30隻の大船団である。
マストに掲げられている旗を見れば、この船団がマレーニア女王国海軍所属である事がわかる。
ノインバス王国からさらに東南に位置する島国で群島諸国の中では2番目に広大な国土を持ち、海軍力では群島諸国一である。
建国以来海上貿易を国益としてきたため、自然と海軍力が高まってきたのである。他国との交流にも力を入れていたため、外交力も高い。
軍事大国の1つに数えられている程だ。
「これは確かな情報か?」
「はっ!確かであります。将軍、斥候に出した高速船からの情報です」
褐色の肌に銀髪、見る人を怯ませるような鋭い赤い目。
女王国内に居住する種族の1つ、ダークエルフ族の特徴色濃いその男がこの部屋の主であり、陸軍ラペルリ連合王国援軍司令官でもある。
彼は、ガルド・ド・アリングである。
見た目は20代後半だが、実年齢は200歳をとうに越している。
女王国陸軍内でも稀代の戦術家と称されている。
「2個竜騎士団をたった3隻の船で全滅させたと・・・」
ガルドは副官に視線を上げた。
「信じられないのもご無理はありません。しかし、彼らの報告は確かなものです。竜騎士団撃退だけでなく、帝国軍前線部隊も後退しています」
ガルドは立ち上がり、背後の壁に張付けられているラペルリ連合王国の地図を見た。
竜はこの世界において最強の存在である。竜騎士ともなればなおさらだ。
ガルドは顎に手をあてて、考え込んだ。すでに受け入れられる許容量を超えている。
副官は黙り込んだ上官を見つめていた。
「真相がどうであれ、エルフたちに手を貸した軍勢がどこの国なのか、どのような魔法を使ったのか、情報収集に全力をあげろ」
ガルドは副官に振り向いて、言った。
「はっ」
副官は姿勢を正した。
「将軍。本国への報告はいかがしましょうか?」
副官の問いに、ガルドは再び顎を撫でた。
「いや、真相を明らかにしてない状況下で報告すれば混乱を招く。ただでさえ、ありえない内容なのだからな」
「はっ!」
副官は踵を揃えて肘を伸ばし右の拳を左胸に付ける女王国陸軍式の敬礼をした。
副官がさらに一礼して部屋を退出した後、ガルドは天を仰いだ。
当然見えるものは木造の天井だ。
「エルフたちが治める王国に援軍を送り、その援軍司令官にダークエルフを任命するとは・・・女王陛下も大胆な事をなさるものだ」
エルフとダークエルフは敵対関係にある。エルフを光とすればダークエルフは闇の存在である。こう言えば両者の関係がどういうものか言わずともわかる。
にもかかわらず、彼を司令官に抜擢したのには理由がある。1つは、彼が稀代の戦術家であるからだ。2つ目は、エルフに恩を売ることである。
「さて、彼らに手を貸した軍勢はいったい何者だろうな?」
ガルドはなんとも不気味な笑みを浮かべてつぶやいた。
謎の軍勢に多くは期待しない。せめて我々が来るまで敵を倒せばいい。後一週間もすればラペルリ連合王国援軍は到着する。
いや・・・到着して敵がいないのでは我々が来た意味がない。我々の出番もきちんと残しといて貰わねば困る。
「・・・さあ、軍勢よ。貴公等は何を望む」
ガルドはゆっくりと目を閉じた。
序章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
お手数ですが、感想を書いていただけると嬉しいです。
次回は7月19日までに投稿予定です。