平行世界 終章 希望
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ついに、平行世界の終章になりました。しかし、亡国のレギオンはまだまだ続きます。
昼頃、野営地に達した。ラペルリ連合王国軍の斥候兵たちは、そこが無人となっている事を確かめた。野営地の宿営天幕はだいたいが砲撃で吹き飛ばされ、辺りにばらばらに引き裂かれた焦げた死体が散乱している。だが、武器庫や食糧倉庫は破壊していない。
敵も慌てて撤退したのか、食糧も武器等は手つかずのまま放置されている。
周囲に敵がいないか確認するため、87式偵察警戒車(RCV)を出して、周囲を捜索したが、敵はいなかった。
そして、誰が言う事なく、勝利の喜びの声があがった。
その知らせは、すぐにアンネリたちに陸自経由で届いた。
アンネリたちも大喜びで勝利の声を上げた。
[やまと]のCICでミレニアム帝国軍が後退した事を知らされた板垣は何も言わず、ただうなずくだけであった。
「緒戦には勝利しましたね、司令官。しかし、これで良かったのでしょうか?」
佐藤は複雑な心境で言った。
板垣は振り返り、2人の幕僚を見た。
笠谷は何も言わないが、佐藤の気持ちも理解しているようだ。
板垣もわからないではない。だが、自分たちはすでに前を進んでしまった。もう後戻りはできない。
「佐藤。本来なら彼らは侵略軍に殺されるだけだった。それを考えたら武力介入もしかたない我々は国連軍なのだ」
板垣は無人航空機(UAV)から送られてくる画像に視線を戻し、小声でつぶやいた。
「鬼が出るか、蛇が出るか・・・」
同じ頃「あさひ」の艦長室に呼び出された来島の姿があった。
「理由を聞かせてもらえるかな?」
「何を?」とは聞かない。
稲垣の言いたい事はわかっている、あの救助要員に武装指示を出した件だ。
本来なら艦長か副長に意見具申を行うべきなのだが、彼女はそれを素っ飛ばし直接指示を出した。
しかも追加で警務隊(MP)にまで同様の要請を出している。
さすがにやり過ぎた行為であった。
「ジュネーブ条約、シーマンシップ・・・どちらでも構いませんが、救助活動をするのは結構です。ですが、こちらで我々の世界の常識が通用すると思いますか?」
「・・・・・・」
「結果的に救助した捕虜は、全員重傷でまともに動ける者はいませんでしたが、もし戦意を喪失していない者がいればどうなるでしょう・・・」
来島の表情からは一切の感情が消えていた。
「戦闘によって殉職する・・・これは我々の立場ではありうる事です、しかし上の判断ミスで隊員の命に危険が及ぶのは許容できません・・・勝手な行為については謝罪します、ですがお忘れにならないでください、ここは我々の世界ではありません」
表情と同じく口調も淡々としていたが来島はひどく真剣であった。
「・・・我々のなかで、この異常事態を一番理解しているのは君かもしれないな・・・」
終章をお読みいただきありがとうございます。平行世界はこれで終わりです。
次の巻はラペルリ奪還篇ですが、その前に、番外編とちょっとした説明があります。
では、次回もよろしくお願いします。