平行世界 序章 決定
みなさん。おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
高井高雄です。
平行世界の序章は加筆修正いたしました。
「そうですか」
薄暗い石造りの室内で女性の声がした。
「1つの国が滅んだのですね」
長く綺麗な金髪に白い肌、緑の瞳。
絶世の美女とはまさしくこの事を言うのだろう。
しかし、彼女は人間ではない。人としてはありえない物があるからだ。
彼女の背中には鳥の翼があるからだ。
「彼らの行いは目に余るものがあります!」
側近の者が言った。
「そうですね」
彼女は目を伏せた。
3ヶ月前、世界の1つに、突如として現れたレギオン・クーパー(異世界からの軍勢)は魔道兵器を駆使し、300年に渡って繁栄したバルティニア神聖帝国に侵攻した。
彼らは、完璧すぎる策略で、わずか3ヶ月という信じられない早さでバルティニア帝国軍が構築した鉄壁の防衛線を破り、帝都を3日で落とした。
彼らの驚くべき兵器の前には、その世界のいかなる軍隊でも打ち破る事は難しいだろう。
「彼らに対抗するには、彼らと同程度の力、あるいはそれ以上の力を持つ軍隊でなければ勝てません」
「いや、しかし、それは・・・」
「貴公は、その世界の軍事力で彼らに勝てると思っているのか?あいつらの魔道兵器を知っているだろう?」
彼女は視線を落とし、数枚の書類に目を通した。
火を噴く鉄の怪物。
馬を使わず、自走する馬車。
兵が1人1人装備している杖。
兵が装備している杖はさまざまあるが能力は同じである。それは鉄でできたものもあれば木製のものがある。
しかし、その杖が火を噴くと連発音と共に敵兵士たちが次々と絶命していく。
「ジュウキの前では、この世界の軍事力では太刀打ちできませんか?」
「はい、残念ながら」
彼女は1つ心配事を述べた。
「ここで、新たにレギオン・クーパーを召喚して、彼らも同じ道を歩む可能性は、ありますか?」
彼女の言葉に側近たちは顔を見合わせた。
「確かに、その可能性もあります。しかし、ここで、何もせず、彼らに好き勝手やらせては、その世界は破滅します」
「そうです。ようやく、ここまで繁栄したのに、滅んでしまったら、我々の苦労が水の泡です」
その表情は苦渋に満ちていた、それでも彼女は決然とした表情で顔をあげた。
「わかりました。父上には私から話しをつけましょう。例の件を実行にうつします」
彼女の言葉に側近たちは頭を下げた。
側近たちを退出させた後、彼女は侍女に飲み物を頼んだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
侍女がコップを差し出すと、彼女は受け取った。
爽やかな味が口に広がる飲み物は彼女の心を落ち着かせるのに十分だった。
気分が落ち着いたところで、彼女は侍女に話かけた。
「私は、これから大罪を犯すの」
「・・・・・・」
「1つの世界を救うために、1つの世界の均衡を・・・いえ、滅ぼすかもしれない。こんな事が許されると思う?」
彼女の言葉に侍女は黙って聞いていたが、やがて口を開いた。
「私にはわかりません。しかし、姫様は偉大な方です。いつも正しい事をなさってきました。今度もそうです。だから、あまり思いつめないでください。姫様が正しい、と思う事をなさってください」
侍女の言葉に彼女はうなずいた。
「ありがとう。貴女が私の侍女で本当によかったわ」
「もったいなきお言葉」
侍女が頭を下げる。
読んでいただきありがとうございます。
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