逃げ道
「森川のくせに、なに直樹くんに見られてんの?うぜぇ。」
「いつもいつも、なんで平然としてられるわけ?
いつんなったら登校拒否してくれんの?」
「つーか、クラスにいらない。邪魔。」
トイレに連れ込んだと思いきやこれだ。
何もトイレじゃなくてもクラスでもどこでもいいじゃん、とか思ったけど、よく考えたらクラスでこんなことやったら武井くんに見られるよね。それを避けてるから女子はこんなとこ、つまり、男子が入れない場所に連れ込んでんだろうけど。
「おい、聞いてんのかよ。」
「聞いてるよ。
だから何?って話なんだけど。」
そう言って腕を組めば、明らかにイラつくのがわかる。
「あんたらの意見なんて興味ない。
次の授業、遅れたら先生に感づかれるんじゃない?」
そうトドメまでさしてしまう。
あー、馬鹿らし。
こんな風に、自分気にしてませんアピールをする自分自身が。
それに何よりもムカつく。
あんたらの意見なんて興味ない。
まぁ、嘘、だよね。
興味ないわけじゃないし、むしろ気になる。
人間誰しも、みんなに嫌われたいなんて願望を持つやつなんていない。
どちらかといえば好かれたいはず。
そんなの私だってそうだ。
でも、いつも冷たくものを言ってしまい、誤解されて、、、それでも治らないんだから中々よね、私って。
「まじあんた神経おかしんじゃない?」
「もうめんどくさい。行こ。」
「こんな女に関わってるとろくな目にあわないよ。」
だったら最初から絡んでこないでよ!
彼女たちが消えたのを確認した途端、唇を噛みしめる。
悔しい。
ただ泣きそうになるだけの自分が、悔しい。
悔しがってることしかできない、自分が悔しい。
「森川、さん。」
いつの間にかトイレに来ていたのか、同じクラスの女子の一人が近くまで寄ってくる。
「大丈夫?何かされなかった?」
「うん、大丈夫だよ。」
「そっか。辛かったら相談乗るから、遠慮なく言ってね。
じゃあまた。」
辛かったら、、、、、?
消えていく彼女の背中に全てを吐きたくなる。
今、現在辛い。
辛くないわけないでしょ!?
クラスでは話しかけない、でも誰もいないとこでは心配してくれる。
最初は話しかけてくれて嬉しかった。
でも、だんだんイラついてきた。
なんだ、この子誰にでもよく思われたいだけじゃんってね。
仮にいじめがばれたとしても、この子には逃げ道があるんだ。
影で心配して話しかけてたっていう逃げ道が。