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異世界トリップ!?

……遅くなり(?)ました。

「……う……?」


 俺――神浄(しんじょう)(しゅう)は、全身から感じる鈍い痛みに目を開いた。見えたのは青空。次いで周囲を取り囲む様にブロックで組まれた壁。どこかに寝かされてる?


「い、痛う……何がどうなったん、だ?」


 痛みに朦朧とする頭を押さえ、体を起こそうとして――



 全身に激痛が走った。



「っが、あああああああぁぁぁぁぁっ!?」


 痛い、痛い、痛え!?

 全身が針の筵に置かれてるかの様にジクジク疼き、その場を転げ回る。と言っても今いる場所が狭いのか、壁に頭をぶつけたりして転げ回る、と言える物ではなかったが。


「あっ……が、ぁ……い、痛い痛い痛い!」


 声をあげても痛みは治まらない。俺はそれから、実に10分以上痛みに悶える羽目になった。


 ✟✞✟✞

「……う、あ……ぁ~、痛くなく、なった?」


 そう呟きながら、俺はやっとの思いで体を起こした。痛みで頭がボーッとしている。何がどうなったんだ……?

 一度頭を振って意識をハッキリさせ、辺りをキョロキョロ見回してみる。が、ここがどこかの路地裏、と言う事しか分からない。


「……どこだよここ?」


 ……そもそも、と言うかそれ以前に見覚えすら無い。

 とりあえず記憶を辿ってみる。確か俺は……――下校中、一緒に帰っていた親友の柚崎(ゆざき)由楽(ゆら)が自分を突き飛ばしてきて、倒れ込みながらも振り返った視線の先で――由楽の足元に、金色に光る青い円が出現しているのに頭の奥で警鐘が鳴って。由楽(ゆら)に手を伸ばしたものの――由楽(ゆら)の体が突然消え、手が空をきった、

 ……その後は?


「……あれ」


 記憶がそこで切れている。数秒間記憶を甦らせようとウンウン唸ってみたが、まるで効果無し。俺の頭に浮かんできたイメージは、由楽(ゆら)が消え、(さく)も消え、そして自分まで――と言う、断片的な物。

 ……とてつもない悪寒が俺の背筋を走って、一瞬ブルリと体を震わせる。


 とそこで、ふと焦点が自分の体にあった(考え事で焦点が定まっていなかったのだ)――のだけれど。のだけれどね?


「……な、何だこの服!?」


 端的に言うならば、『魔法使いのローブ』的な感じに服が変わっていた。半袖長ズボンの上下に黒い長外套。あれーおかしいなー、俺こんな服は持ってないし第一制服を着てた筈なんだけどなー!? と服をまさぐってみるも本物だし、何故か()()()()()()()()()()()()感じがした。

 どう言う事でしょう? と普段なら由楽(ゆら)に問うのだが、生憎彼はいないし、それ以前に(さく)の姿も見当たらない。急に襲ってきた不安を取り合えず押し潰すと、俺はとにかくこの路地裏から出る為立ち上がった。


 ✟✞✟✞

 あっちへフラフラ、こっちへフラフラしつつも何とか大通りらしきところまで来て、


「……マジでどこだよここ……?」


 本日何度目でしょう、この台詞。

 目前に凄い大都市が広がっていた。大半が煉瓦作りで赤茶系統の建物で、高さは4階程度。道は石畳で整備されていてゴミ1つ無い。


 ――いやそれはそれで目新しい物だったのだが、俺の視線は別の物に釘付けだった。丁度広場的な所に出てきたらしいのだが。


「ま、魔法!?」


 そこにいる人達が凄かった。大体俺と似た様な服装をした人が火やら水やらを出現させて相手にけしかけていたり、サーフボード(?)みたいな板に乗って空を飛び回っていたり。……これ明らかに魔法ですよね?


「……何だろう、俺は本当に中2病になったんだろうか」


 ちなみに一応反論しておくが、俺は中2病じゃない。由楽(ゆら)は俺が中2病者だと言う発言をよくするが、俺自身は普通にマトモだ(少なくともそのつもり)。


「地球……じゃ、無いのか? まさかの異世界トリップ? いやまさかなぁ……」


 口に出た言葉に頭を振る。流石に早計……だと思いたい。


 異世界トリップの可能性を本当に真剣に検討しなければならなくなったが、とにもかくにも情報が必要だろう。そう思った俺は周囲を見回し、近くで『居酒屋フール』と書かれている店を見つけた――って、ちょっと待て。

 『自分の目を疑う』って言う事があるらしいが、まさにそうだった。確かに、その店の看板には……『居酒屋フール』と書かれている。うん、それは間違いない。だけど、だけどさ……。


 その店、正確には『()()()()()()() ()()()()()()』……って、書かれてるんだぜ……?


 俺の英語の点数はどちらかと言うと良い方で、唯一……は、違うか、由楽(ゆら)に誇れる所であるが、少なくとも英語じゃないぞ? これ……なのに読めるって、どういう事なんだ?

 おかしい状況に薄ら寒気を感じながら、それでも元々の目的を達するため、お店の入り口付近に立っていた俺と同じ位の身長で赤髪黒目のおじさんに声をかけてみる。


「あのぉ~スイマセン」

「あいよ、どうした兄ちゃん?」


 言葉は通じるらしい。そう安心しかけ、逆に問いかけられてハタと気付く。この場合、どう問いかければ良いのだこれ。流石にここどこはおかしいし……。一瞬停止しかけて、おじさんの視線で我に返る。

 ええい、どうとでもなれ。アドリブで押し通してやる。

 えーと、こう言うのって、どこかで情報を集めるのがいいよな……。


「あ、あの……ここら辺に図書館的な物がある場所ってどこですか」

「うん? 兄ちゃん、この国に来たの最近かい?」


 ……うん、どうやら日本じゃないらしい。国って言ってる時点で日本じゃない。……分かってたけどね、魔法が普通に飛び交ってる時点でそう思ったけどね!


「え、ええまぁ。色々見て回ってるんですよ」

「へぇ~、その年で旅を? シッカリしてんなあ。国立図書館ならこの大通りを真っ直ぐ行って突き当たって左だ。ちょい入り組んでるから人に聞きつつ行くと良い」

「突き当たり左……分かった、有り難うなおじさん!」

「おう! 1つ言っとくと、俺はまだおじさんじゃね~ぞ~!」


 良い()()()()である。と言う認識を刻みつつその国立図書館へ向かう。


 実に15分以上かかって(おじさんの忠告通り()()()どころかとても入り組んでいたのだ)着いたそこは、流石国立と言うべきか立派な造りだった。ここなら何でもありそうだ、と思いつつ中に入ろうとして、入り口で呼び止められる。


「入館される場合は名前を書いていって下さい」

「あ、は、はい……」


 名前? と首を傾げつつ受付のお姉さんに渡されたペンと、ノートを見て、


「……」

「どうしました?」

「いっ、いや何でもないです!」


 疑問そうなお姉さんに慌てて笑みを返し、もう一度ノートを覗き込む。

 ――……どうしようこれ。全てが英語または外国語(さっきの『居酒屋フール』と同じ様に読めるけど英語じゃない言語)表記なのに俺だけ漢字って……やっぱり不自然?


 ……しかたない、こうなったら中2時代本気で中二病になりかけた時の黒歴史ノートの内容を解放して……。

 てな訳で。


『アウローラ・ローレライ』


 と英語で書いて、受付のお姉さんに返す。


「アウローラ・ローレライさん、ですね。黒髪って事は東の方から来たんですか?」

「ま、まぁ……そんな所です」

「へぇ~……あっと、中に入って良いですよ」


 と許可を得たので受付を通過する。図書館内には何人かチラホラ見受けられたが、その人等の視線を避けるように本棚の奥にまで移動する。誰も見ていないのを確認してから、


「……マジでどう言う状況に陥ってんの俺?」


 壁に背中を預け頭を抱え込んだ。魔法があったり、この場所は少なくとも絶対日本じゃない。マジで異世界トリップしたんですか俺?

 唸っていた俺だったが、とりあえず落胆するのはどこか分かってからにしよう……と、若干諦め混じりに溜め息をついたのだった。


 ✟✞✟✞

「ふぁ~……日本じゃないけど地球じゃないとは断定出来ないのかよ……」


 あれから3時間、数十冊の本やら地図やらを読み漁ったのだが――地球じゃないと言う断定は出来なかった。少なくとも惑星で、どこかの大陸と言う事は分かるのだが、大陸の形が違う。別世界と断定するには条件が足りなかった。


「……駄目だ、分からん」


 結局的に思考放棄。もう、何が何だか。由楽(ゆら)がいればな~、と再度無い物ねだり。今までは『どこか分かるまで』と思っていたが、いざ分かっても……いや多分分かってないんだけど、ここはこれまで俺が暮らしていた現代日本では無い。魔法を見た時点で予兆はあったが、改めて誤解がない程俺に突きつけられる。


 理解した途端、震えがだんだん襲ってきて部屋の隅でガタガタと震える。このまま、戻れないんじゃないか、と思ってしまい、頭をブンブン振る。その考えに呑まれちゃ駄目だ。


 とにかくともかく、何か別の事を考えようと机に積んでいた本の1冊を抜き取って、そのはずみにバランスが崩れ上から本がバラバラ降ってきて頭を打つ羽目になる。


「痛っ! ……あーあ、やっちまった」


 その場に散乱した本に苦い顔をしつつ片付けようと手に取って、


「……ん?」


 1冊の本の題名に視線が吸い寄せられる。


『初級魔法教本』


「……やってみっか」


 どうせする事無いし。何が出来るか分からないし。魔法ってやってみたかったし!

 若干強引な思考転換だと俺も思ったが、今はここがどこか忘れよう。何かしてないと頭がおかしくなりそうだったのだ。


 ✟✞✟✞

 『初級魔法教本』以外の本を元の場所に(と言っても場所が分からなかったので適当だが)直し、俺は『初級魔法教本』を借りて外に出た。てっきり外国人(と言う事で良い筈)の俺には貸し出しは駄目です、とか言われるかと思ったが、別に国の外に持ち出さないなら良いらしく、受付の人に借りますと言えばそれでOKらしい。大分大雑把だなと聞けば、全ての本に専用の魔法がかけてあって、国のどこにどの本があるのか分かる様になっているらしい。流石魔法、何でもありだなおい。国外に持ち出すと場所が特定できなくなるので、大事な物だと追っ手がかかるとか。


 キョロキョロ街を見ながら歩く事数分、俺は草ボウボウの空き地に出た。


「お、お~……ここなら草ん中入っちまえば見えないし、いいか」


 そう思い、草をかき分け通りから見えない所まで入り込む。ちょっと草を抜いて座れる様にしてから、俺はまず一番簡単とされるらしい、炎を生み出す魔法を使ってみる事にした。


「……えーと、まず『陣を描く』、と」


 『初級魔法教本』を捲り、ちょっと読みにくい部分もありながら地面に簡易的な陣を描いていく。本当は紙やら金属板などに描いたり刻み込むらしいが、生憎そんな物は持ち合わせていない。そこらで拾った石で地面にガリガリと描きつつ、『初級魔法教本』と見比べるのを繰り返す。


 約3分後、やっと描き終えた陣を立って見下ろす。直径1m弱(大きくしないと分かりにくかったからだ)の円の中に五望星やら難しい式句を並べた陣は、確かに魔法陣と見えなくもない。が、これくらいの魔法陣は中2の頃にやった事あるんだけどなぁ(由楽(ゆら)には絶対言えないが)。本当にこんなので出来るのか?


 まあ、論より証拠だし。


 『初級魔法教本』の次のページを捲り、そこに書かれている文を読み上げる。


「んで次は……『魔力を流し込む』? ……いやちょっと待て、俺そもそも魔力があるのか自体定かじゃないんだけど」


 若干焦って『初級魔法教本』を捲り続けるも、この本には魔力についての細かい説明は載っておらず、『両手を陣の上に置き体外へ吐き出す様に魔力を流し込む』としか書いていない。

 そう言えば、図書館で読んだ本の中に、『魔力は千差万別あるものの皆体の奥底に存在する物』と書いてあった様な……。だとしたら、別世界人である俺は魔法使えないって事じゃないの?


「ええ~……ここまできて絵に描いた餅とか、勘弁してくれよ……」


 そう呟きつつ、()()を陣の上についた時だった。

 ボッ!


「……え?」


 突然発生した音声に、発生源を振り返ると――陣の上に、サッカーボール大の火球が。

 数秒まじまじと見つめ、そっと反対の手を差し出してみる。


「……熱っ! ……ほ、本当に出来た……」


 掌に感じた熱量に、本当に自分が魔法を使えた、と言う自覚が出てきてガッツポーズ。大袈裟かもしれないが、生まれてこの方、魔法なんざ使ったのはこれが初である。分かってほしい。


「よし……他のもやってみようか」


 ✟✞✟✞

 1回コツを覚えると早いもので、陣を描いては発動を繰り返し、1時間後には『初級魔法教本』に載っていた下級魔法なら全て発動できる様になっていた。お陰で俺の周囲の地面は陣で埋め尽くされ、近くには引っこ抜いた草が山になっていると言う状態である。集中力って凄いね、うん。いや、好きこそ物の上手なれ、か?


「ふ~……やっぱりこんだけ短期間に魔法連発すると、流石に疲れた感じがあるなぁ」


 足を投げ出した状態で、魔力消費による疲労感をやり過ごす。

 魔力を消費すると、使った魔力分だけ疲労感が出るらしい。俺は1時間の間に20個以上もの魔法を使用したが、精々数分走った程度ぐらいにしか疲労を感じなかった。つまり魔力をそんなに使用していないと言う事。体力は多い方だと自負している(剣道部で鍛えてるし)が、魔力なんてここに来てから初めて知ったってのに、なんで多いのだろうか俺は。普通の初心者なら、1時間に3~4個発動させると魔力が尽きてしまうらしいが……それに、普通魔法陣に両手で触れないと、魔力がちゃんと流し込めないとか『初級魔法教本』には書いてあったのに、俺片手ついただけで発動したぞ? どう言う事だってばよ?


「分からない事が多すぎるって……」


 ブツクサ呟きつつ、地面に寝っ転がって晴天(帰宅途中だったから夕方の筈なんだけど……まだ空が青い=昼過ぎと言う状態になっている)の空を見上げた。


 ――時だった。


「……ん?」


 ちょうど背骨の辺りに、何か固い物が当たっている感覚。何だろうと起き上がり、一旦ローブを外して内側を見ると、ポケットが大量に。ワオ、色々入りそう、と思って、そのポケット群の中に唯一膨らんでいる物を発見。これがさっきの固い物か、と取り出して、


「……え」


 その取り出した物は――スマートフォンだった。

 俺が元々居た場所で使っていた物――でも今は、存在していると不釣り合いな物。


「な、何でこれがここに……」


 ここが魔法が横行しておらず、科学が発達した世界なら持ってても良いだろうけど……魔法が発達したここじゃ、あってはならない上に第一服装が変更されているならここにあるのはおかしい筈――。


「……それよりこれ、使えるのか?」


 ……まぁ、ここにこれがある理由はとりあえず置いといて。

 俺はスマホの電源を入れ、何の気なしに電話帳を開いた。俺は数人の電話番号しか登録していないが、思いきり異世界なここで通じるか試す為(多分十中八九無理だろうけど)だったのだが……。


「……あれ?」


 表記されている名前の殆どがグレーアウトしている。それに触れても、『電波が届いておりません』とブブッと言うバイブ音と共に表示されるのみ。普通の表記のままなのは――、


 『柚崎(ゆざき)由楽(ゆら)』と『坂城(さかき)(さく)』。


「……え、これ、2人には電話出来んのか!?」


 まさかの!? と思いつつ由楽(ゆら)の方をタップ。出てきたウィンドウから通話をタッチして耳に当てるが――、


「……出ねえじゃん……」


 電波自体は(どう言う仕組みか知らないが)通じているみたいなのだが、『只今おかけになった電話番号は……』とお馴染みの音声がかかってしまう。

 肩を落としつつ、今度は(さく)の方に電話をかけて。2コールの後、


『……しゅー君!』

「よ、よう……(さく)か?」


 本当に繋がり、5時間弱ぶりの(さく)の声に、若干戸惑ってしまった((さく)にかけるの自体久し振りなのだ)のだった。


はい、以上です。

いや~、合作って疲れる……自分がこう、と思ってるストーリーとは違う方向性になってたりすると修正するのに時間がかかるので、投稿も必然的に遅くなるって言う。大変だぁ。

次回は……うん、咲に掛けた後の電話シーンが修正出来てからですね。他のサイドが先かもしれません。

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