闖入者~イケメンと金持ちは何でも許される~
「ふふっすいません 突然過ぎました 順を追ってお話しますね」
「あ、あぁ、そうして頂けると有難い」
一世一代のマヌケ面を晒していた俺は、どうしても理解できない現実を整理する事を諦め本多脩を名乗る人物の話に耳を傾けることにした
「池田さん、あなた何か困ってる事ありませんか?」
なんだこの人は、色々と確信犯だなおい
さっきまで淳が話していた賢もかなりの天然だったがこの本多脩なる人物も大物だった 色んな意味で
初対面の人間にわけのわからないことを言われどう接するべきか悩んだ結果、どうせ気にするような人でもないだろうと思い、俺は普段友人たちと接するのと変わらない感じで応対することにした
「いやまぁ特別困ってる事はないけど唯一あるとしたら、ご覧の通りって感じだ」
もう自分の顔に関しては色々慣れてるつもりではあったが遭遇したことがないパターンだった
「そうですよね、実は私もあなたが顔で悩まれているのと近い状況で頭の悪さで悩 んでいるんです」
本多脩はやれやれと言いたげなポーズで息を吐きながら口にした
ほう 面白い 何故かわからんが今まで言われたどんな悪口よりもバカにされてる気がするぞ とりあえず黙って聞いてみることにする
「実は私、この大学に父の金で入学したんです、えぇそれはもうたんまりと ホン トはランクを5つほど下げた大学にも受かるか分からなかったんですがね とこ ろが父がお金を積みすぎましてね 成績を上乗せしすぎた結果私主席合格扱いに なってしまったんですよ」
ほう ツッコミどころが多すぎて色んなものを堪えるので精いっぱいだ 既に斜めにぶっ飛んでしまいそうな話をしておきながらまだ肝心のさっきのアレを何も言ってないんだからな
「そこでですね とりあえず私が困った時のために、本来本大学の首席合格であっ た方について調べさせて頂いたところ、池田淳さん、あなたが主席だったためあ なたのその頭の中をお借りさせて頂けないかなと あ、中だけですけどね」
ほう なるほどね 今の説明で分かったことは こいつが俺をブサイクだと認識している事と、こいつが色んな意味でぶっ飛んだ野郎だってことぐらいだ
「それで俺がハイそうですかってなると思います?」
「まだ説明の途中なんで最後まで続けますね、まぁそこでですね、タダでお借り するのもなんですしお金だと色々跡が残るのでここは私の素敵な顔と交換はいか がなものかと思いまして」
「いやいやいやいや」
そうじゃない 本多さん そうじゃないでしょ?
「ちょっ、ちょっと本多さん、待ってもらえます?」
「はい?」
「あの確認してもいいですか?」
「えぇお答えできることでしたらなんなりと」
「まずあなたはお父様のお金でO大学に入学した、と?」
「はい、私では到底普通に入学できませんでしたので」
わーお 倍率二ケタを超えるこの大学、このご時世でまさか献金による裏口入学なんてもんがあったとはね 息子さん思いの良いお父様なことで
「で、成績の水増しをしたらうっかり主席になってしまった、と?」
「どうやらその様です 他にも賄賂を贈っている方は多くおられるので点数の水増 し制の様ですね」
HAHAHA なんてうっかりなんだお父様 そして天下のO大学がこんな有様では世も末だな 今更ながら来てしまった事を後悔してるよ
「そして本来は俺が成績トップでその知識をあなたに貸せと?あなたの顔と交換 で?」
「ずっとではないですけどね、テストとか発表の時とか必要なときだけです」
我ながら自分の成績の良さに驚いたね それより何よりこの男のさも当然みたいな顔に驚いたね
「どうやって?」
「え?」
「だからどうやってそんなものを貸し借りするんですかってことだよ! 何から何 まで仮にぜーーんぶ本当だとしたとしてもその顔だの知識だの借りるってのは無 理がありすぎるだろ!」
ふぅ やっとこれをツッコめた
「あーなるほど そんな事ですか、ハイ、こちらの端末をもって頂き念じて頂ける と入れ替わります」
先ほどまでとなんら変わらず、さも当然といった顔で近未来的見た目の端末をポケットから無造作に取り出した
「ちなみに私が念じればお互いの頭が丸ごと、逆にあなたが念じれば顔が丸ごと入 れ替わります 逆の効果や拒否権はないです 戻るときも使った方が念じるまで 戻りません」
凄く怖いこと色々言ったぞコイツ 自分で言ってる事の意味わかってるのか?
「こんなもの・・・」
「信じられませんか?」
そりゃそうだろ そんなトンデモ話
「では今は充電切れなので明日にでもお使いください、もちろんお試し中に私から 無断であなたの頭をお借りする事はありませんのでご安心を」
そう言って本多脩は連絡先を手渡し去ろうとした
「充電は単三電池二本で出来ますので ではでは 良いお返事お待ちしてます」
突如訪れた闖入者は俺が呆気にとられながら機械をまじまじと見ている間に用事を済ませ去っていってしまった
「何気に電池って高いんだよなぁ」
本多には色々と言ったものの正直なところ俺はもうこの話に乗る気満々でいた
別にさっきの話から読み取れる危険性が分からないほどバカなわけでも、意味不明すぎる謎の機械の能力を鵜呑みに信じているわけでも無かった
ただちょっと、自分の好奇心が
いや そんな綺麗なものでは無く、ただただ邪な心を持たずにはいられなかったのだ
それ程には俺は年相応の男子大学生で
それ程には朝の出来事が俺にダメージを追わせており
それ程には彼の話は魅力的で
それ程には彼はイケメンで
それ程には俺はブサイクだった