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BuSvic;Vobamtio  作者: 皆麻 兎
Episode5 事件の真相を知って得るものとは
17/29

#15 変化する日常

再び、海見視点に戻ります。

『重罪人は…己が嘲笑った者の手によって、全てを失うだろう』

『お前は奴らに加担せず、中立を守れ』

自分が知恵の神ミーミルだと自覚し始めてから、謎の声が響く夢を見ていた。

最初は声が響いても起きた途端に忘れていたが、何度も見続けたせいなのか、最近はこんな台詞を述べている夢だと認識できるようになっていたのである。

『お前は…他の者が知る事ができない真実を、唯一知る事ができる者だ、ミーミル』


「…っ…!!!」

明け方、私は汗をたくさんかいた状態で目覚める。

 夢…。しかも、あれは…

意識がはっきりしてきた私は、夢を見ていた事を悟った。それは、今までうろ覚えにしか聴こえなかった台詞がはっきりと聴こえた夢。そして、今まで聴いた事のない新たな台詞(ことば)を耳にした夢だったのである。



「おはようございます、海見。…寝不足とかですか?」

「おはよう、武人。…うん、当たり」

この日、目を細めながら登校していた私は、下駄箱の所で武人と顔を合わせた。

 変な時間に目が覚めちゃったから、あれから眠れなかったんだよねー…

革靴を下駄箱にしまい、上履きを取り出しながらそんな事を思う。

「のわっ!!」

頭がボーッとして周囲を見回していなかったせいで、私は横から歩いてきた人物に真正面から衝突してしまう。

「ご…ごめんなさい…!!」

それによって完全に目が覚めた私は、ぶつかった人物に対して謝罪をする。

「…気をつけろよ」

黒いYシャツの上に長いコート型の白衣を来た教師は、私に一言告げると、すぐにその場を去っていった。

顔は一瞬しか見ることができなかったが、肌が白く、黒くて長い髪の毛を一つに結んでいるのだけは気がつく事ができたのである。

「大丈夫ですか?海見」

「ねぇ、武人。あの先生って…」

「長い白衣…。あぁ、あれが迫田(はこた)先生みたいですね」

武人に尋ねようとしたが、彼はすぐにあの先生がどんな人間なのか気がついたようだ。

「確かー…文化祭が終わった後かな?保健教諭が産休を取る事になったから、代わりに来たっていう校医です。…そうか、海見はまだ顔を見かけた事なかったんでしたね」

「そうね。それに、学校にいる間で保健室の恩恵にあずかった事は、ほとんどないもの」

“だから、知らないはずだ”とも付け足して言おうとしたが、それ以上は言わなかった。


「その教師、女子生徒に人気があるみたいね?」

昼休み中、望琉がそんな形で話を切り出してきた。

「ふーん…そうなんだ!」

「まぁ、どんな人間が教師をやっていようが、私達には関わりのない事だけど」

「そうですね…。今は兎に角、海見がこの世界を脱出する術を見つけなくては…」

彼女の切り出しに私が答え、武人も加わっていた。

ちなみに今は、フェンリルがいる警備員室でお昼を食べている。警備員のおじさんは大抵、学食か付近のコンビニやファミレスでお昼を済ましているため、ほぼもぬけのからとなる。そのため、教室では話せない事も話せるのだ。

「私のように普通に往来が可能な者は、”ミッドヴェルガの出入り口風景を頭の中で想像すれば、自動で空間転移できる”けど…それはやってみたの?」

望琉の問いに、私は出入り口周囲を思い浮かべながら、口を開く。

「…うん。フレイに協力してもらって、ミッドヴェルガ入り口があるユグドラシルの風景を見せてもらった後に試したけど…駄目だった」

「そうですか…」

私の返答に、武人が少し残念そうな声を漏らす。

「ちなみに、この世界にいる人間達が少しブレて見える事って…皆はある?」

『いや?普通の人間と同じように見えるぞ?』

フェンリルを始めとし、他の二人も同じような答えだった。

 …私の魂だけ、この世界に同化しちゃっているという事なのかなぁ…?それとも…

私は、お弁当のおかずを見つめながら、考え込む。

「…武人やフェンリルは、帰る事ができるの?」

すると、不意に思いついたのか、望琉が武人(ミドガルズオルム)やフェンリルに問いかける。

「帰ろうと思えば帰れますが…」

『…まだ時期じゃねぇって事さ!』

苦笑いを浮かべる武人。

私はフェンリルの言葉を聞き取る事ができたが、聞き取れない望琉は首を傾げたまま、彼らを見つめていた。

「話がだいぶ飛びますが…例の殺人鬼、未だ捕まっていないんですよね…」

微妙な雰囲気になっているのを察したのか、武人が別の話題を持ち出してきた。

「猟奇殺人鬼…ね。人間は、やたらと事件とかを大げさに伝えたがるけど、あれってやはり、いいかんじがしないわ」

「それだけ、この世界は平和を持てましているって事だよ!それよりも…」

望琉の皮肉じみた言い回しを却下した私は、考えていた仮説を話す。

「被害者のやられ方からして…あれは、ただの人間じゃなさそうね」

『事件??…海見、何の事だ??』

「…ああ、フェンリル兄さんは知りませんよね。実は…」

事件について知らないフェンリルに、武人が説明していた。

「被害者はー…確か、血を少し抜かれている上に、四肢の至る所に噛み付かれたような痕があるらしいけど…。確かに、人間の仕業とは思えないわよね」

「しかも、男女無差別みたいだから…余計に怖いな」

武人がフェンリルに説明している間、望琉や私は事件の事をそれぞれ呟いていた。

 何とか、犯人が捕まえられればなぁ…。でも、この世界にだって殺人鬼を捕まえる”警察”って組織があるし…

私は、そんな事を考えていた。

「あ…!」

すると、予鈴の音が警備員室のスピーカーから響いてくる。

「予鈴ですね…。仕方ありません、続きはまた今度にしましょう!」

音を聞いた武人に続き、私たちも出していたお弁当やら水筒やらを急いでしまう。

『またなー!』

フェンリルが見送る中、私達は急いで教室へと戻るのであった。



「うーん…相変わらず、望琉は何やらせても様になってるね」

「…そう?」

午後の授業が始まり、教室で5限目を終えた後になる6限目の授業は体育だった。

男女別々なので武人とは一緒ではないが、体育の授業を受ける度に、私は望琉のスポーツ万能ぶりを垣間見るのであった。

ちなみに、今日の授業内容はバレーボール。レシーバーを務めていた望琉は、現役バレー部員である女子生徒に負けず劣らずの腕前を見せている。

それと比べて、自分は――――――――

「黒智さんは、アンダーハンドパスもトスも、変な方向いっちゃうわよね」

「…ごめんなさい」

他の女子生徒から、こんな風に言われてしまう始末だ。

 本当は授業さぼりたかったけど…あまり休むと、”成績”下げられちゃうからなぁ…

不満感を覚えながら、私はコートの端っこに立つ。6人で1チーム制であり、2クラス合同で授業を行っているので、1クラス2チームずつといった組み合わせだ。ちなみに、私と望琉は別々のチームのため、この後は彼女がいるチームと隣クラスのもう1チームがこれから試合をする事になっている。

ただし、授業の一環でやっている試合で、かつバレー部員もたくさんいる訳ではないので、初心者が集まったまったりとした試合観戦になりそうだ。

 あれ?あんなギャルっぽい子達、隣クラスにいたっけ…?

試合開始の合図の後、ふと私の目に見慣れない4人の女子生徒が見えた。

校則が緩いこの学校では、多少の茶髪は認めてられてはいるが、だいぶブリーチよりな髪色をし、4人とも肌が白い。特別美人ではないが、独特のオーラを感じた。

 アスガルドの神ではなさそうだけど…

雰囲気からして、神々ではない事はわかったが、それ以上の事はわからなかった。

 あー…それにしても、今日は寝不足だから、すごい眠いなぁ…

試合を見つめながら、私は眠たそうに目を細めていた。

寝不足である事に加え、15時頃はお昼食べた関係で眠くなりやすい時間帯でもある。そのため、私の眠気はピークを迎えていた。

「海見…っ!!」

「え…?」

すると突然、私の名前を呼ぶ望琉の声が聞こえた。

「ぶっ!!?」

声のした方へ振り向こうとした刹那、おでこ辺りに衝撃が走る。

「わわっ…」

感触からして、自分にぶつかってきたのは、バレーで使っているボールだろう。

激突した勢いで、私はふらつく。すると、そんな自分の体を、誰かが受け止めてくれた。

「すまん!!大丈夫かい、あんた!?」

「あ…。は…い」

この時、軽い立ちくらみを起こしていた私は、少ししゃがれた声で答える。

ふらつく私を受け止めてくれたのは、先ほど視界に入っていた隣クラスにいる女子生徒の一人だった。

「先生!!この子、ボールぶつけてつらそうだから、保健室連れて行ってあげてもいいですかー??」

少し訛りのある標準語で話すその女子生徒は、体育教師に向かって、声を張り上げる。

その後、何やら教師と話をしていたようだが、ふらついていた私はそんな彼らの会話を聞く余裕はなかった。

しかし、その女子生徒が私の肩を軽くたたく事で我に返る。

「じゃあ、保健室に行こう!…だから、勝乃!!ぶつけたあんたが、責任持って保健室にこの子連れて行けな!!」

そう言い放った女子生徒の視線の先には、違う女子生徒がいたのである。


「さっきは、ごめん…。フレイヤさん…だっけ?彼女のアタックを上手く受け止められなくって…」

保健室へ向かっている間、私にボールをぶつけてしまった女子生徒は、申し訳なさそうな表情(かお)をしながら話していた。

「いや…。私も、あそこでボーッとしていなければ、飛んできたボールを避ける事もできただろうし…」

私も、自分にだって非があるのはわかっていたので、彼女責める気は毛頭なかった。

 …まぁ、おでこにあたったのは痛かったけどね…。まぁ、たんこぶになっちゃうのは仕方ないか…

そんな事を思いながら、話題を変えようと口を再び開く。

「私こそ、つきあわせちゃってごめん。…えっと…?」

「あ…私は、富士見勝乃。宜しくね!」

「黒智海見です」

お互いに名乗りあう事で、少しだけ場が和んだ。

「それにしても、黒智さんのクラスは、スポーツできそうな人が多くて羨ましいなぁ…!特に…えと、先ほど貴女の名前を呼んでいた…」

「ああ、望琉の事?」

「そう!彼女、スポーツ万能だって噂で聞いていたけど…予想以上の実力で、ビックリしちゃったな!」

その色白な女子生徒は、望琉の事を口にしていた。

 彼女の場合、スポーツ万能が事実でも鼻にかけたりしないから…。多分、同性にもモテるんだろうなぁ…

私は歩きながら、ふとそんな事を考えていた。


「失礼しまーす!」

保健室のドアをノックした後、声を張り上げた富士見さんはドアを開けた。

「まだ、授業中だが…。ああ、成程」

中には、登校時にぶつかった迫田(はこた)先生が突っ立っていた。

先生は、授業中に入ってきた生徒を注意しようとしていたようだが、私を見るなり何故来たのかを察したようだ。

「おでこをぶつけたという事は…バレーボールとかか?」

「あたり!…先生ってば、傷見ただけで何が原因かわかるの?」

「まぁ、半分適当ではあるがな」

その後、私のおでこからこめかみ辺りに、先生が湿布を貼ってくれた。

手を動かしながら、先生と富士見さんが会話をする。私は貼ってもらっている立場なので、成り行きをずっと見守っていた。

「…さて、これでいいだろう」

そう言って作業を終えた保健教師。

しかし、「もう行ってもいいぞ」と言われたにも関わらず、私は先生の顔をジッと見つめていた。

 そういえば、この男性(ひと)

過去に一度見た事があるような気がした私は、どこで会ったのかを思い出そうとする。

「はっ…!」

考え事をしていた私だったが、どうやら彼らには自分が呆けているのだと思い込んでいたらしく、気がつくと無表情をしたままの迫田(はこた)先生が私の頬を右手でつまんでいた。

そうされてようやく、我に返ったのである。

「もう授業に戻っていいと言ったのだが…聞こえなかったのか?」

「え・・・?あ、いえ!!聞こえていましたっ…!!」

何故か顔が近くにあったために驚いた私は、すぐさまその場で立ち上がった。

そして慌ててドアの手すりに手をかけた私は、その瞬間に思い出した事を口にする。

「そういえば…迫田(はこた)先生。もしかして、この前の文化祭で、お会いしませんでしたか…?」

「なに…?」

私の問いかけを聞いた先生は、少しだけ眉間にしわを寄せる。

元々強面の教師だったため、それだけでも怒っているように見えて少し怖かった。本人は、別に怒っている訳ではないと思うが―――――――――

「文化祭の時に、廊下で誰かとぶつかった気がしたんですよ…。だから多分、見かけたとしたらその時だったと思うのですが…」

私もうろ覚え程度だったため、少しおどおどしながら話を続ける。

しかし、先生は即答せずに少しだけ考え込んでしまう。そのため、短い沈黙が続いた。

「…いや。他人の空似ではないかと」

「そうですか…。わかりました!じゃあ、失礼します!!…行こう、富士見さん」

「え、ええ…」

私に声をかけられた事で我に返った富士見さんは、私の後を続いて保健室を後にした。

ドアを閉めるために向き直った際、一瞬だけ迫田(はこた)先生が動揺で固まっている表情が垣間見えたのであった。



そして、その翌朝――――――――

「おはよう、フレイヤ。…今日は学校休みなのに、朝っぱらからどうしたの…?」

その日は、携帯電話の着信音で目が覚めた。

電話をかけてきたのは、先日、アスガルドからこの世界にやってきたフレイヤである。

『あんた、ミドガルズオルム…じゃなかった。九頭竜武人って奴の連絡先知っているわよね!!?』

「う、うん…。知っているよ?」

電話越しで聴こえるフレイヤの声が、どこか切羽詰まっているようなかんじがする。

『今すぐ、そいつを連れて病院に来てくれない!!?』

「えっと…フレイヤ、何が会ったの・・・?」

美と豊穣の女神である彼女がこんなにも動揺しているのが、私にとっては不思議でたまらなかった。

 よほどの事が起きたのだろうか…?

そんな事を考えながら、彼女の返答を待つ。

『…最近起きているっていう、猟奇殺人事件あるじゃない?あれで、ノルンの一人であるスクルドが襲われて、怪我をしたの』

「えっ…」

その台詞(ことば)を聞いた私は、目を見開いて驚く。

『兎に角、詳しい事は会ったら話すわ』

今述べた彼女の台詞(ことば)で、電話は終わる。

他人事と思っていたその事件が、全くの無関係ではなくなった瞬間であった。


いかがでしたでしょうか。

今回は新しい神も出る事はなく、新章のプロローグみたいなかんじの回でしたね★

また、久しぶりに日本人らしい名前を書けた気がします。

結末が決まっている章ではありますが、今後の途中経過をどう書こうかはいろいろ試行錯誤中。

とりあえず、冒頭に出てきた台詞を言ったのが誰か…ってのは、種明かしするのはもう少し後になりそうです。


次回ですが…

何故、スクルドが襲われたのか!?それについて描かれます。

ちなみに、北欧の神々はギリシャ神話の神々のように不死身ではありません。だからバルドルも殺された訳ですし、スクルドみたいに怪我をする事もあります。次回は、犯人は誰だろう?って話になると思います。


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します★

(ただし、明らかに不快感を感じさせる感想は削除させて戴きますので、ご了承ください)


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