変化と不変
「裕磨、藍依、帰ろうぜ。」
B組の教室まで来ると二人に声をかける。
「ごめん帝兎、私緋梨と遊ぶ約束したんだ。
先帰っててくれる?」
そっか、もう高校生…か。
中学生の頃は規則に忠実で寄り道なんて一切しなかったのに、そんな藍依が『寄り道』なんて言うと、しみじみ来るものがある。
「おう、気を付けろよ。」
「うん。」
藍依は子供みたいだ。
本人に言ったら怒られるけど、やっぱり子供みたいだと思う。
いつまでたっても変わらない。
本当なら、例え幼馴染みだって昔と何一つ変わらず接したりなんかしない。
なのに藍依は何一つ変わらない。
時が止まったとでも言うように。
「帝兎?」
「ん?」
裕磨に呼ばれ、思考回路を止めて我に返る。
「考え事?」
小さく頷く。
聞いてみるか。
お前の時間は動いてるんだろ?
「裕磨はさ、藍依の事好きか?」
裕磨の横顔が目を閉じる。
裕磨は、男でも惚れるくらい綺麗な顔をしている。
金髪が風に揺れて…。
青い瞳が俺を見る。
「うん。好きだよ。」
お伽噺や少女漫画に出てくる王子がもし実在するのならば、それはきっと裕磨のような存在だと思う。
絵にかいたような整った顔に強調されたサファイアにも似た深い瞳は、中世のヨーロッパにありそうな王族の服がよく似合う、理想の王子の像だ。
「そっか…。」
『俺も。』…なんて、裕磨には言わなくともわかる筈だ。
俺は充血したように真っ赤な瞳で、髪も黒くて面白味がない。
だから、裕磨と言う存在は架空から姿を表した俺の理想の姿なんだ。
少し長めの髪だって栄えるほどぴったりで、うっとおしさを感じない。
ハーフと言うだけでこんなにも変わるだろうか?
「負けないよ、帝兎。」
数歩先を歩いていた裕磨が振り替えって笑う。
赤い夕日に照らされて、裕磨の金色の髪に赤い輪郭が写る。
それがとても絵になる風景で、勝てる気なんてしなかった。
『負けない』だなんて自分で言っておきながら、夕日に照らされた帝兎を見て思う。
きっと勝てないんだろうと…。
黒々とした髪の下から覗く赤い瞳に少し見とれる。
俺とは正反対だ。
髪は漆黒の闇のよう、そこから覗く赤い瞳はひとつの灯火のように怪しい。
俺はそんな帝兎が羨ましい。
昔から金髪の髪のようにせいで虐められていた俺は、そんな帝兎の髪を羨ましく思った。
自分の髪は嫌いじゃない。
でも、帝兎の髪はもっと好きになれる。
俺の理想の姿だから。
「藍依、これ可愛くない?」
『たまには良いでしょ?』なんて言って、緋梨が買い物に連れ出してくれた。
「本当だっ!!」
買い物…か。
なんか楽しいな。
三人ではよく行くけれど、二人とも男の子だからあんまり女の子らしい物が売ってる所とか、あと服屋とか、二人が退屈しそうな所は行けないから…。
だからこうやって、女の子の緋梨と買い物に行けるのはすごく楽しい。
「緋梨、洋服も見に行こうよ!!」
「わかったってば藍依、焦らなくたってちゃんと見れるよ。」
「一杯買ったね〜。」
さすがに服は高かったから、アンティークの小物とポーチと髪飾りをいくつか買った。
「藍依。」
緋梨が急に真剣な顔つきになる。
「本題なんだけどさ。」
何でだろう。
緋梨のこんな真剣な顔なんて見たことないのに、今日はすごく楽しかったのに…。
緋梨のその言葉に、私は逃げ出したくなった。
男の子2人は赤眼と青眼です。
なんでって格好いいからでs)))
藍依の目はご想像にお任せしますが、時期出て来ると思われます。
あ、ちゃんと考えておかなきゃwwww