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繧「繝輔ち繝シ繧ア繧「_Reincarnation-in-Sakura-no-mori

 満開の桜が舞う。


 この時期に大学に来たくなかった。マンモス大学なだけあって、入学式が終わって数日間は、サークルの勧誘やなんやらで学祭の様相を呈す。二回生の在太は暗い面持ちでごった返すキャンパスを早足で歩く。


「おっと」


 しかし、下を向きながらでかいリュックを背負って歩いているものだから、案の定人にぶつかる。リュックにつけた鈴が、涼しい音を鳴らす。


「すみません」


 面を上げると、黒髪を真っ直ぐ腰まで伸ばした男だった。華やかな顔なので、ロン毛でもあまり違和感がない。どこかで見たことのあるような気がした。こんなに目立ついでたちなら記憶に残りそうなものだが。芸能人だっただろうか。


「君、新入生? バンドメンバー募集してるんだ。一緒にどう?」


 男は満面の笑みで軽音サークルのビラを在太に渡してきた。


「あ、えっと……」


「もちろん初心者歓迎。楽器できなくても大丈夫だ……痛っ!!」


 後ろで呼び込みをしていた女が一目散にやってきて、男の頬をつねる。


「おい染谷。困っているじゃないか」


 健康的な褐色の肌にベリーショートが似合う、かっこいい女だった。こちらの女もどこかで見たような気がする。


「だってえ」


 男は唇を尖らせた。やけに距離が近いので恋人同士か何かなのだろうか。


「少年。こいつは押さえておくから早くいけ。早くしないと、運命に置いていかれるぞ」


 女は在太を突き飛ばす。そのひと押しで人混みから離れることができた。


「あ、ありがとうございます」


 群衆に埋もれてゆく中、女がこちらを向いて微笑んだのが見えた。


「だきちゃんの鬼ー!」


 男の声が、春空に遠く響いた。




 やっとのことでインドカレー同好会の露店に着くと、接客する四方田先輩が見えた。四方田先輩は在太に気づくと、ふわふわした笑顔で手を振った。相変わらず締まりのない雰囲気を纏っている。


「在太君!」


「手伝うことありますか?」


 四方田先輩はう〜ん、と唸ると、後方で鍋をかき回す沙羅先輩に視線をやった。


「沙羅さん、あります?」


「ないよ!」


 沙羅先輩は炊飯で忙しいのか、短く返した。長いポニーテールが、動くたびに波打っている。


「ここは人が足りているから、そうだなあ」


 四方田先輩は顎に手をやって悩んでいるが、体格がいいくせに全体的に緩いので、なぜか小動物のように見える。


「ボリ研の部室に行くと、いいことがあるんじゃないかな」




 かくして、俺柴田在太は、学生会館の地下最下層にあるボリウッド研究会の扉を叩くことになる。


 立て付けの悪い扉を開けると、私物でごちゃごちゃした部室の中、蛍光灯を反射してスキンヘッドが光る。


「お、在太。朗報だ。これから新入生が来るぞ」


 不動先輩はブルーレイの束を抱えている。形だけでも掃除しておこうという魂胆らしい。


「へえ」


「めちゃくちゃかわいい女の子らしいぞ。男だらけのボリ研に、初めての女の子が」


「それ大丈夫なんですか……」


 この男くさい部室を女子に見せるのか、どうせすぐ来なくなるぞ、と思いながら在太も掃除を手伝っていると、トントン、と戸を叩く音が聞こえた。


「失礼します。新歓で案内されたんですが……」


「どうぞー」


 耳に悪い音を立てて、ドアが開いた。


 栗色の巻き髪に、猫のように丸い瞳。小さくて華奢な体。


「……たま?」


 思わず在太は呟いていた。なぜだかこの名前がしっくりくるような気がしたのだ。


「在太!?」


 少女は幽霊でも見たような声をあげた。


 何かが、始まる予感がした。


 リュックにつけた鈴が、一人でに鳴ったような気がした。




 おわり

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