弐の陣 公園を統べる者
朝の光はやけに柔らかい。 七草町の公園は休日になると均される。 砂場、ブランコ、すべり台、ベンチ。 ここは戦場であり、社交場であり、避難所だ。
ハナはハヤトの帽子を被せ直し、靴紐を確認する。 よし。最低限の装備は整った。
——だが。
空気が、違う。
公園の中央、日陰のベンチ。 淡い色味のトート。ロゴは小さく、主張しない。 足元は白。服はシンプルなのに、なぜか整っている。
その女——ユキ。
周囲に人だかりがあるわけじゃない。 むしろ、点在している。 だが全員、彼女の半径にいる。
「それ、可愛いね。どこで買ったの?」 「えー、ネットだよ。ほら、ここ」
スマホが差し出される。 説明は短い。リンクも短い。 ——無駄がない。
ハナは直感する。
(あ、これ……バズった後の人だ)
インフルエンサー。 だが声高じゃない。 『みんな一緒』を装わない。
——ちょっと、皆と違う。
「ママ〜、あそぼー」
ハヤトが走り出す。 止める間もない。
縮地。
ユキは、いつの間にかそこにいる。
「こんにちは〜。同い年かな?」
娘が横にいる。 年齢、即一致。
「……そう、です」
——入った。
サイドワインダーで
ボールを近くのママさんに投げようとしたのに…
封じられた!?
必殺技 縮地「インナーケーブル」
それは会話でも、視線でもない。 “前提”を一気に繋ぐ技だ。
ー早い
間合いを詰められた
「この公園、日陰がいいよね」 「その靴、砂入りにくいやつだ」 「今日、人少なくて助かる〜」
全部、正解。 全部、否定できない。
気付けば——
「LINE交換しとく?」
交換している。
連撃に次ぐ連撃いつの間に……
「ハナちゃんさ、話しやすい」
——名前も、もう知っている。
公園内フィールド効果、発動。 【強制共感】【自然肯定】【距離感無効】
ハナの防御は、すべてすり抜けた。
「また来よっか」
それは提案ではない。 予定の確定だ。
ブランコが揺れる。 子供たちは笑う。
ハナはベンチに腰掛け、空を見上げる。
(悪くない)
悪くない、はずだ
だが、逃げ場もない。
公園の端。 視線の先。
——ケバい影が、腕を組んで見ている。
サナエ。
ラスボスは、まだ動かない。
この戦いは、 まだ始まったばかりだ。




