読書感想#8「現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか」(印南敦史)
書籍名:「現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか」
著者:印南敦史
出版社:光文社新書
ジャンル:読書人口減少に着目するよりも大事なことを伝える本
<印象的だった言葉>
読書人口が減っているとか、本が売れないとよく嘆かれる時代だけれど、そこにはまだ確かに本屋に人は居るし古本屋の本も売れているし図書館におもむく人も居る。注目すべきは本が売れないこと・読書人口の減少ではなく、「書店にも図書館にもまだ人が居ること」に着目すべきだ、という主旨のお話が印象的でした。
また、昔読んだ児童書などのことを思い出して、本が好きだった頃のことを思い出して欲しいという話や、”なぜなら本来、読書とは楽しいものだから。”という言葉が、印象的でした。
<第1章の感想>
読書を大げさにとらえている人が多いという話が、なるほど……と思いました。読書から「利益や即時的な効能」を求める人が多いようだけれど、スマホ検索で出てくる情報と違って、読書はすぐに効くことが書いてあるとは限らない。
けれど、本質的な部分はすこしずつ心の奥に染みていく。それが教養と呼ばれるのかもしれないことと、「すぐに役に立たないかもしれないけど、長期的には何かの役に立つかもしれない。立たないかもしれない。でも浪費行為としての読書があっていい。つまり、楽しむためだけの読書があってもいい(※要約)」というような主旨の視点は、確かになんでもすぐに成果を求めてしまう私みたいな人にとっては、大事な話でした。
スマホやパソコンで観れるYouTubeには英語圏でも日本語でも教育系のチャンネルがたくさんあったり、自由に使える文章生成AIなどはとても便利でとても役立つものだけれど(GeminiとGrokが私は好き)、読書をする時間もあったほうが良いなと個人的に思いました。
それは、著者が言うように、将来的に役に立つと思うからです。
昔どこかで聞いたのですが、「すぐに手に入れられる効率的な付け焼き刃的なものは、長くは役に立たない。すぐには意味のないように思える時間のかかること(※読書とか英語勉強とか運動習慣とか)は、すぐには役に立たないけど、将来的にとても自分を助けてくれる」みたいな話があったように思います。
また、「本の”正しい読み方”なんてものはない。本を読むときのお作法みたいなものは無い(※要約)」という話が、とても良いなと思いました。私は本に文字を書いたりマーカーを引くのが物凄く嫌いなのですが、それ以外の読み方は本のお作法とやらには反していそうな読み方をします。
読みたい所だけ読んだり、途中で本を読むのを止めたり、巻数がめちゃくちゃな順番で読んだりします(本屋に売っていた本が、最初の巻が無かった時は特に)。
私は嫌いですが、マーカーを引いたり文字を書き込んだりする方も居ると思います。図書館の本にそんなことをしては当然だめですが、あなたが買った本なら、あなたのものなんだからどう扱おうとその人の自由かなと思います(中古で売れなくはなりますが)。
それに最初のページから最後のページまで舐めるように丁寧にじっくりと一言一句見逃さずに読む必要なんて全然ないのだと思えました。
イギリスの哲学者のフランシス・ベーコン(※芸術家のほうじゃない)が、言ったという言葉が本のなかで引用されていましたが、確かに本にはいろいろな種類があるのだなと思いました。
ある人にとっては、
・Aという本はとても素晴らしい本で何度も繰り返し、噛み砕き飲み込むようにして読みたい本
・Bという本は斜め読みする程度でいいかなという本
・Cという本はぜんぜんつまらなくて読む価値を感じられない本
・Dという本は一生大切にしたい本
というふうに、本とひとくちに言っても、いろんな本があるのだなと思いました。
本によって読み方を変えて良いのだ。それに合わない本があってもいいのだ。それで良いのだ、と思えました。
また、人のやり方にケチをつけたがる人というのはどこにでも居るものだから気にしなくて良いという趣旨の話も、ためになりました。
私はボーカル無しのジャズみたいな(歌詞のない)音楽か、自分が分からない外国語の音楽(K-POPとか)を聴きながら本を読むのが好きなので(日本語だと読んでる本の文字と歌詞がぶつかって集中できない)、これからも特に周囲の目を気にすることなく(というか読書してる場所が家の中なので気にするも何も無いのですが)、自分主体で楽しく読めるようにしたいです。
<第4章の感想>
良書を選ばなくては、とか、具体的に役立つ本を読まなくてはという強迫観念を持たないほうが良いというような話がためになりました。
人生は短いのだから、読みたい本を読めば良いという話。
とても新鮮な意見に聞こえました。
また、本に期待しすぎないという作者の印南敦史さんの態度は、なんとなく他者やもの・ことに期待しすぎないほうが良いという考えにも通じているような気がしました。
期待するから裏切られたと感じる。
他者に期待なんてしないほうが良い。他者は自分に何もしてくれないものだと思ったほうが生きやすいなと感じます。
ちょっとドライな考え方に聞こえるかもしれませんが、でも「この本を読書したからって得られるものは何もないかもしれない。でも読む」という姿勢なら、何か得られたときはとても嬉しく感じて満足するだろうし、何も手に入れられなくても「まあ、そんなもんか」と思えるなと思いました。
すぐに結果や成果を求めてしまうよりも、気長な態度でいたほうがたくさん本が読めるので、結果的にはたくさんのものを得られるかもしれないし、焦らないほうが良いんだなと思いました。
<良かったなと思うところ>
・読書は、皆のもの。頭の良い人がしている高尚な行為ではなく、「読書は本来、日常生活の一部」で、ベッドでごろごろしたり、歯を磨いたり、お米やパンを食べたりするのと同じくらい、本来は日常的な行為であるはず。
・否定も肯定もせずに自分の「今」を認める
・本を読むのにルールとかはない
・しっくりこない本を無理して読まない。何年も後になった時に、今の自分とは違う未来の自分はその本を気に入るかもしれないし、気に入らないかもしれない。でもとにかく、無理してまで「名作だから読まなきゃ……」とか思わない。合わないものは合わない。無理をしない。
・好きに読んだら良い。乱読はなにも悪いことじゃない。
・知的好奇心を大切にしよう。
・読書からなにかを得ようと思いすぎないこと。ただ楽しもう
・読書を習慣化しよう
・あまり肩肘張らずに、気楽に本を読もう
・読んだ内容を忘れるのはよくあることで当たり前。
・一発で丸暗記できる人は極めて特殊な例なので、「一発で丸暗記! これで読んだ内容を忘れない!」とか「内容を完全に一発で理解する天才的読書術」みたいな扇情的なタイトルの本は気にしなくて良い
・読むスピードはゆっくりでも(早くても)なんでもいい。読書スピードを人と比べるのをやめよう。
<全体の感想>
純粋に楽しんで本を読もうという姿勢は、なにかと読書を形式張った形にしてしまったり(「こう読まなきゃだめだよ」とか言ってみたり)、読書を特別なモノへと高尚化してしまう現代人にとって視点を転換するような本だなぁと思いました。
また、作者の印南敦史さんが書評などで生計を立てていることについて、良いなぁ、夢があるなぁと思いました。
読んで、書いて、読んで、書いてを繰り返す生活とか羨ましすぎます。めちゃくちゃ充実してて楽しそう。私も(書評かどうかは分かりませんが)いつか読んで、書いてのサイクルを繰り返して口を糊することができるようになりたいものだなぁ! と思いました。
また、エバンジェリストというのが、ITのことなどを一般人にわかりやすく説明する仕事に就いている人のことだというのを初めて知りました。
Googleのチーフ・エバンジェリスト、などという使い方をするようです。エバンジェリストはevangelistと綴ります。
Geminiいわく、昔はエバンジェリストというのはキリスト教伝道師のことだったそうですが、転じてITの難しくて複雑な用語や内容などを、社外の人々にわかりやすく伝えるお仕事をする人のことを、エバンジェリストと呼ぶそうです! そんな仕事があるとは! 驚きでした。
「読書を習慣化したい、かつて本を読むのが好きだった人」に主にお勧めしたい本でした。