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読書感想#1「忌談」(福澤徹三)

 書籍名:「忌談」

 著者:福澤徹三

 出版社:角川ホラー文庫


 ジャンル:怖い話


<あらすじ>


 怖い話が37話書かれている本。

 でも心霊に寄っているというよりは、冒頭にも書いてあったけれど「うわあ、怖いなあ、嫌だなあ」と思う話を超常現象の有無に関わらず収集されている。



<感想>


 裏表紙に「本書は心臓の弱い方にはお薦めしません」と書いてあるのもなかなかゾクっときた。


 要するに、おばけもUFOも出ないけど、なんだかゾッとする、怖いなぁと思う話が収録されている。


 37話と中くらいのボリュームだが、なかなかに一話一話のパンチが強いというか内容が重いというか、第三話目まで読んだだけでもうすでにズッシリとした重みを感じる読書体験だった。


 特に一話目の話と二話目の話のインパクトが強烈だった。

 出だしからこの重さの話をぶちこんでくるあたり、刺激に慣れきった現代人も怖がらせるような物々しい雰囲気がしている本だと思った。




<第1話の感想>

 とにかく表現が怖かった。もし自分がその場に居たら、その霧を見たら失神するしかないと思う。私が住んでいるのは田舎のほうなので、あまり(平成の頃の)都会とは違ってそういう事故が多くなかったから、余計に慣れてなくて、もしそこに私が居たら一生物のトラウマになるなと思って、想像したら怖かった。



<第2話の感想>

 水音の真実が明かされたら、嫌悪感と恐怖で「ウエッ」ってなった。もちろん怪談の本なので「ウエッ」というのは褒め言葉だ。そして、怪談の部分よりもキャバクラ嬢の生活の描写が生々しくてとても好きだった。


 普段自分とは関わり合いのない職業の人間の生活を覗き見できるというのは、とっても好奇心をそそられた。


 また、キャバ嬢のMさんという人物がアクセサリーに執着があるのは、なにか子供時代に貧しい思いをしたとかなのかな……とMさんの過去に想像をはせると、なんだかちょっぴり物悲しくもなった。



<第3話の感想>

 裏ロムという部品をパチンコ台に取り付けて、出玉がどのくらい出るか遠隔操作であやつる行為は風営法違反らしいんだけども、そういう技術があるのは凄いなぁと思った。


 怪談の部分もいいけど、むしろ、そういう細部のリアリティにキュンとした。


 なんとなく、自分が外部サイトで書いている猫耳ヒーローの話のスティーヴンというハッカーのキャラクターに「これ、もう二時間も打ってるのに全然ですよ。裏ロムつけてるんじゃないでしょうね?!」とキレさせるシーンを書きたいなぁと思った。



<第4話の感想>

 夜のお店で、『キャスト』は業界用語で『ホスト』を意味するっていうのが知らなかったので知れて良かった。

 店内は豪華だけどキッチンは狭くて息苦しいっていう描写が、リアルで好きだった。また、タローというのが水商売の隠語で「ゴから始まる嫌われ者の虫の名前」を表すことは全然知らなかったので、知れて良かった。



<第7話の感想>


 自分が書いた覚えがないものが置かれているというのは不気味でありつつも、なんとなく書かれている言葉がコミカルかつ不思議で面白いなと思った。



<第8話の感想>


 鳩が無事で良かった。異様な雰囲気で主人公を何度も怒鳴りつけてくる人と、その人が怒るきっかけの得体のしれない現象が何度も立て続けに起きるのが、怪談としてハラハラ感・ドキドキ感をすごく演出していて面白いなと思った。



<第9話>


 ホスクラでホストクラブを意味するというのが知らなかったので知れて良かった。やっぱり、危険なので知らない人間についていっては駄目だなと改めて思った。今までの九話で、一番リアルにありそうだなと思った。旨い話に飛びつかない、知らない人を信用しない、というのは大事だなと思う。

 また、知らない人が勧めた飲み物は異物が混入されているリスクがあるので受け取らないほうが良いなと思った。



<第10話>

 幸運の髪留めと思っていたものが、実は……という展開と、オチの凄まじい展開が面白かった。ちゃんと供養をしようとする主人公の真面目で怖がりな性格も面白かった。



<第11話の感想>


 めちゃくちゃ面白かった。社会の闇というか、アンダーグラウンドな感じのする話で、当時のVHSのビデオデッキ文化について思いをはせれて面白かった。女の子が映っているとあるビデオで行われたとんでもない行為。なんとなく、ホラー映画を観ている気分になってしまった。


 なんとなく、当時ならあり得るのかもと思わせる説得力があるのは、ブラウン管テレビやVHSのビデオデッキなどの描写が短いけれど丁寧だったからだと思う。


 怪談として最高に好きなタイプの話だった。ゾクゾクした。



<第12話の感想>


 何か得体のしれないモノに追いかけられるのがハラハラして面白かった。

 迷信かもしれないが、年配の方がわざわざ遺体安置の時にしたりする北枕の方角では寝ないだろう、という部分にジェネレーションギャップを感じて楽しかった。



<第14話の感想>


 Oさんのちょっと度の過ぎる健康管理方法について、Fさんの祖母が一席ぶったのが、なんだか新鮮でした。なるほど、このタイトルの引き寄せの法則というのは、この祖母のこの発言に繋がるのか……! と思いました。過ぎたるは及ばざるが如し、みたいなことなのかな……。



<第15話の感想>


 イロマクが色枕の略なのが面白かった。

 また、龍が如く8というゲームとかでも観たけど、やっぱりキャバ嬢に高額を注ぎ込んだお客さんがストーカーになったりする事件って、よくあるのかなぁと、なんとなく興味深かった。


 また、超能力が使えると言い張る人物への感想で、”お酒の味が本当に変えられるなら酒造メーカーにでも勤めたら良い”と後日に言う語り手が面白かった。確かに、と思って笑ってしまった。


 語り手のツッコミスキルが高くて面白かった。

 また、プロテーゼというのが医療用のシリコン制人工軟骨のことというのが知らなかった。顎とか鼻の整形に使うそうだ。



<第16話の感想>


 某カルト宗教団体が使っていた記憶改ざんの方法である「チオペンタールと電気ショック」。そして弱者を食い物にする吐き気のする貧困ビジネス。

 なかなかにえぐい内容だった。


 怪談というよりも、社会の闇をえぐり出すみたいな内容だな……と思って、好きだった。



<第17話の感想>


 デリドラ、という用語を初めて耳にした。

 デリから始まるそういうお店の女の子を送迎するドライバーの略らしい。



<第18話の感想>


 硝酸ストリキニーネという主に動物の安楽死に使われる錠剤のことを初めて知った。とても不気味な話で、かなり面白かった。


 でも、MさんからすればEさんの言動は本当に迷惑極まりないと思う。やっぱり夜のお店関係で働いている人は危険な環境で働いているんだな……と思ったのと、「知らない人が勧めてくる錠剤・薬品・飲み物・食べ物は絶対拒絶する」のが防犯上、大事だなと思った。


 でも、Eさんの家の奥にゴミが散乱してるのとか、すごく雰囲気が出てて、良かった。



<第29話の感想>


 怖いおにいさん達と客がご遺体の安置室に向かう理由が凄まじすぎて「うわあああああ!」となりました。

 人間の闇を感じました。いや、野生動物でも死骸とそういう行動というか行為をしようとする鳥とか居るって聞いたことがありますが……怖い……。



<第31話の感想>

 スカリフィケーション(皮膚に傷をつけて模様を浮かび上がらせるタトゥーみたいなやつ)とかダーマルパンチ(耳とかに大きなピアス穴を開けるやつ)とかトレパネーション(頭蓋骨に穴を開けるやつ)とかアンピュテーション(体の一部を切除するやつ)など初めて聞いた。とっても痛そう!



<第34話の感想>


 下水油とか人毛醤油とか、怖いなぁと思いました。

 今の中国は豊かだろうからそんなものは多分今はそこまで社会問題になっていないとは思うけど、当時(平成)の頃の中国では下水油という下水を元に作った油とか、人毛で作った醤油とかが社会問題になってたんだなと思うと怖いなと思いました。

 でもとても刺激的で恐怖を感じたので、創作意欲がわきました。


 というか、その下水油とか人毛醤油よりも「ヤバイ」とあるカラオケボックスのご飯の話が、吐き気がしました。これぞ怪談……! 普通に法律違反ですよ店長さーん――!


 フィクションであって欲しいとここまで願った怪談は初めてです。



<第35話の感想>


 警察のことをヒネって言うのは方言なんだろうか。

 なかなかハードでえぐい内容だった。

 でも海と不良と怪異のたぐいが物語に出てくるのがとても新鮮で、ワクワクした。怪異の謎がお年寄りの人の話で全然具体的に明かされない所も怖いなと思った。詳しく知りたいけど、知ることができないというのは想像の余地があって、余計に心がざわざわする。



<全体の感想>


 怖かった。そして、怪談というのは物語の細部や時代背景や語り手などの人物設定(?)にあたる部分が丁寧だと余計に面白く感じるんだなぁと勉強になった。


 怖かった。

 とても面白かった。そして確かにとても残酷描写にあふれたシーンがいくつもあるので、裏表紙の「本書は心臓の弱い方にはお薦めしません」というのはあながち間違いでもないなと思った。


 普段は竹書房怪談文庫を読むけど、角川ホラー文庫も面白いんだなぁー! と思った。好き。



 濃厚な忌談がたっぷり37話つまった面白い本だった。

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