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第56話 生まれるチャンス

「ガアアアアアッ!!?」


 四頭の蛇の牙が同時にドラゴンへ噛みつき、その硬いはずの皮膚に食い込む。

 先ほどまでの勢いを完全に殺されたドラゴンは悶え苦しみ、けたたましい悲鳴を上げながらのたうち回っている。


(気休めだって言ってたのに、これって結構効いてるんじゃないか!)


 希望が見えた。少なくとも全く傷つけられない存在じゃない。


 これなら……!


 そう思ったのも束の間だった。


「うえ!? うっそ……」


 俺の近くまで走り抜けて肩で息をする棚見が、信じられないものを見るような声を出す。


 ドラゴンは何とか持ち直すと、怒りに身を任せ、その爪と尻尾を用いて蛇を砕いたのだ。

 砕け散って、かつて蛇だった石の塊が辺りに飛び散る。


(失敗したのか? 怒らせるだけ怒らせて……!)


 激情した様が見て取れる。何故なら、今までにない程の殺気を俺達へ向けているからだ。


「……何とか第二作戦の取っ掛かりには成功したわね」


「え?」


 どういう意味だ?

 意味が分からず困惑した俺は、周りの状況を把握する為に辺りを見る。

 すると……。


「光って、る……?」


 そう、砕け散った蛇の像の破片が仄かに光を放っているのだ。

 これは、まさか。


「言ったでしょ? 陣を張るって」


「飛び散った破片が陣を形成してるって事か」


 魔法の陣と聞いていたが、俺の想像していたのはドラゴンを取り囲むような光の壁的な物だ。

 確かに、どんな風に展開されるのかまでは聞いて無かった俺の落ち度でもあるのか。


「すげぇ……! ルシ姉さんってばチョーカッコイイじゃん!!」


 息が上がっていたはずの棚見はもう持ち直したばかりか、目の前の光景に興奮すらしていた。


「これくらいで感心していては、後でガッカリしてしまいかねないから控えなさい。あくまでも力を抑えるだけって言ったわよね。……ただ、少しのおまけはつけさせて貰ったけれど」


 おまけ?


 思えば、ドラゴンの怒りは変わらないが、妙に息が荒い気がする。

 若干震えているように見える、一体何をした?


「アレは覚えているでしょうね。祖先が使ったものと同じ毒を流し込まれた屈辱は……!」


 さっき蛇が嚙みついた時か!

 蛇の像の牙には毒が仕込まれていたんだ。


「ガ……ァ、ア……」


 ドラゴンの様子が更におかしくなり、痙攣しているかのように体が小刻みに震えている。


「効いているわね」


「倒せちゃえないの?」


「これで倒せるなら祖先も苦労はしなかったわ。でも、付け込むチャンスは充分に出来た」


 つまりこっからだ。こっから、俺達の本当の戦いが始まる……!

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