第43話 逆転の状況
目の前に立つのはあのエルフの二人組だった。
「あらら? エルフのお姉さんじゃん。そんなカッカしちゃってさ、せっかくのキレイな顔なんだからスマイルスマイル~。そうすりゃ男の子が放っておかないって」
「そのふざけた口も、今となっては苛立たしさも感じんな……やっと引導を渡せると思えばなァ!」
棚見の軽口に苛立たないとか言いながら、その実あからさまに口元が引きつってる。
これはキレてるって証拠だろ。引導を渡せるのも嬉しいが、煽られた事は流すつもりはないようだ。
しかしどうやってここに? 入り口は隠されていたはず、今は箱に収まったルビーが無い限りここにはこれないっていうのに。
チラリと後ろの台座の上の箱を見る……やはり動いてはいない。別の手段があったとでもいうのか。
長髪の女が俺の顔を覗き込んで来た。
「不思議そうな顔をしているわね坊や。そんなに私たちがここに来た事が意外かしら? ふふ、いえ意外でしょうね。私達だって偶然ここに来れただけだもの」
「……何?」
「まさか石の力を使わずとも道が開くなんて、本当にどういう理由か……教えてくれるかしら?」
この長髪のエルフ。俺達が何かしたからここに来れたと思っているな。
実際心当たりはあるが。
(箱が開いた時か? それともさっき光った時か? どっちにしろ招かれざる客が来てしまった。……人のことは言えないけれど)
違うと言えばあっちと棚見は来たかった側で、俺は別に来たくて来た訳じゃない側って事だろうが。三対一か……、いや棚見は味方だけど。
どう切り抜ける? 流石にあちらは臨戦態勢だ。特に短髪の女は俺の能力で散々振りましたから相当にご立腹な様子。
ただでさえ釣り目がさらにきつく睨みつけてくる。
悩んでいる時、棚見が一歩俺の前へと出た。どうするつもりだ?
「理由を教えてあげたら、オレ達帰してくれるワケ? ……じゃなさそうだねやっぱ。仕方がない、腹をくくった! よーし教えてあげようじゃん」
(な、何だ? 一体何をするつもりだ本当に?)
意図の読めない行動に出る棚見に混乱するが、ここで俺まで動けば事態がさらにややこしくなりかねない。様子見に徹して隙を伺うことにする。
「はっ! ここまで追いつめた以上、わざわざ貴様らの口から聞かずとも石を取り上げて……」
「ちょっと静かにしなさい」
「何? 一体何のつもりだ! どうせ戯れ言をほざいて逃げる隙を伺ってるだけだろう!」
俺はその通りだけれども。
「石石って言うけれどね貴女、もうそれ自体は問題じゃないのよ。……あそこにある祭壇が見えないの?」
「……!? 箱が開いている!!? ということはまさか……ッ!」
「そういうことだぜお姉さん。きっとお宝ちゃんがなくなったら鍵も必要ないって事なんじゃないの?」