第40話 そこにあったのは……?
そしてこの箱。古ぼけているが、それでもまだ丈夫さを保っていそうな印象がある。
大きさは俺の両手で抱える必要があるくらいか……、結構大きいな。
そしてその箱には棚見の言ったように何かをはめ込むような穴が開いている。おそらくそれをセットしなければ開かない仕組みだろう。
「いっそ壊す? ああでもそれじゃあ中身もダメになっちゃうか。じゃあこれ事運んで教会の人に頼んで見るとか? こんな珍しそうなもん、興味持ってくれそうじゃん。じゃあ指輪の中に……」
「まあ待て。下手に動かすこと自体がまずいかもしれん。こういう場合、迂闊な行動が死に繋がるもんだ」
「ああそっか。確かにそういう漫画とか見たことあるかも。で、そういう場合は結局キチンと鍵使わないとなんだよね。う~ん……ん? 香月くんさぁ……」
「どうした? 悪いが俺は鍵なんて持って……」
「あの宝石見せて。もしかしてだけどぉ……もしかしてみたいな?」
何を言っているのか要領を得ないが、言われた通りルビーらしき宝石を取り出す。
しかしこの石、この空間だと余計に綺麗に見えるな。どこか幻想的と言うか……今はどうでもいい事か。
「で、これがどうした?」
「ちょっと借りるぜ。あ、それと一応オレの後ろに下がってね」
「ん、ああ……」
言われた通りに石を手渡すと、俺は棚見から微妙な距離を取った。
「そんじゃま……、とりあえずやってみますか!」
棚見はそう言うと、石を持った腕を大きく上に振りかぶる。そしてそのまま勢いよく――石を箱の穴にはめ込んだのだ。
(何!? いや、そうか! あの穴の大きさと形状から考えればその可能性は十分にあった)
俺は石をただの特殊な石としか考えていなかったようだ。
思えば、あの女達がこちらを殺そうとしてまで手に入れようとしていた事を考えればこれ自体が鍵だとも簡単に結びつく。
(こいつ、柔軟じゃないか。それとも陽キャ特有の柔らかさがあるとでも言うのか……)
陽キャの生態を今まで理解しようともしていなかった俺だ、その可能性も持つべきかもしれん。
穴にはまった石は、まるで最初からそう作られていたかのように違和感無く固着しているように見える。
台座の方は変化が無い……こちらは本当にただの台座のようだな。
「ビ~ンゴ! じゃあお楽しみタイムの始まり始まり……だったらいいけど危ないかもだし慎重に」
さっき俺の言った罠の可能性も考慮してか、慎重に上蓋に手を伸ばしてゆっくりと開き始めた。
さて、鬼が出るか蛇が出るか……いや、どっちも出るのは勘弁願いたいけれど。
それでもポジティブにものを考え切れないのが、どうしようもない俺の性だ。
「そ~……」
時間を掛け、少しずつ警戒をしながら蓋を上へと開いてゆく。
やがてこれ以上に開けなる程に上蓋が角度を持つ。
すかさず棚見は距離を取り、俺と共に静寂を選ぶ。
十秒、二十秒……刻一刻と流れる時間を体感で引き延ばしながら、やがて棚見は口を開いた。
「……そろそろいいんじゃない?」
「そうだな……」
顔を見合わせた後、忍び足で箱に近づく。
二人して覗き込んだその先にあった物、それは――。