第39話 宝の予感
道を進む。
どこに光源が存在するのか、何故か松明を必要としない程度の明るさがある。
上下左右の岩肌にその明かりが反射した様は幻想的ですらあるな。こういう状況でなきゃ風流でも感じて静かに観賞しながら歩きたいくらいだ。そういう点では惜しいと思う。
「どこまで続いてるんだろ? なんか結構歩いた気がするんだけど、まだまだって感じじゃん」
「道もいくつか分岐してるせいで、気を付けないと本当に何処を歩いているか迷うな」
「ね。でも香月くんのスーパーイケてる感じのパワーで目印置いてるしぃ。やっぱ一ダンジョンに一香月くんって感じっしょ。もう香月くんしか勝たんみたいな」
「……頼むから翻訳が必要な言語で喋るのは控えてくれ。理解に時間がかかる」
「は? 翻訳? オレってば外国語あんま話せないんだけど……。あ! そんなにグローバルに見えちゃう感じ?! 香月くんってばオレを喜ばせんのマジ得意じゃん!」
「……そうかそうか。じゃあもういいや」
結局俺の方が合わせなきゃダメなんだろうな。
相変わらずのお調子棚見の相手をこれ以上に積極的に続けるつもりは無いから、黙る事にする。
この奇妙な相方はそれでも一人で喋り続けるが。
(思えば、俺が黙ると会話するようには喋らないな。……いや、たまたまだろう)
それはさておき、現状でも武器を確認する必要がある。
この場合の武器とは剣とかそういうものだけを差すのでは当然無い。持てる力全ての事だ。
俺自身、まともに扱える武器がナイフなどの軽量な物くらいだ。いざとなったら大剣や斧や槍は棚見にくれてやる。その方が有意義というものだろう。
(今後重要になる俺の力とは、やはりこれだ)
その辺で拾った小石を別に色がついた石へと変える。奴らが追ってくることを警戒してルビーに変えるのは危険な為、こういう場所でも目立つ程度に色のみを変更している。
こんな細かい調整も出来るんだなと我ながら感心する。
色を変えた石は地面に戻す、こうする事で迷子になるのを防ぐのだ。
(こうなるとやはり俺の力は金属や石を変換する能力と考えていいだろう。ボロボロの剣も修復したのでは無く、変換したと考えるべきだ。それから考えるにこの能力の応用法は……)
「お! なんかまた広いとこに出たよ!」
棚見の言葉で思考を打ち切る。確かに今までと少し違う場所に来たな。
広さこそそう変わらないものの天井の高さがかなりある。そして何より目を引くのが、空間の中央の台座にポツンと置かれた箱だ。
「見てよ! やっぱオレってば冴えてるじゃん、この勘がピーンと宝箱のありかを探し当てちゃったぜ。香月くん、これで毎日肉が食えるぜ」
「肉って……そりゃ食べ物は重要だけどな。問題はその中身だろ? 値打ち物かもわからないし何より……」
「香月くーん! この宝箱鍵が掛かってて開きそうになーい!」
「いつの間に……。おいあんまり近づくなよ、罠が仕掛けられてる可能性だってあるんだから」
さっきまで俺の隣にいた男は、まるで瞬間移動でもしたかの如く箱の元へその移動していた。
人が大事な事話してたろうが。
仕方ないので俺もその箱の元へと。
そうしてたどり着いて、改めて観察する。
まずこの台座だが、これは確かに箱を置く為にわざわざ用意されてる感じがするな。やはり何者かがこの炭鉱に空間を作ったという訳だ。何の為か今のところわからないが。