第37話 一休み、フラストレーション
「ほぇ~広いね。どうなってんのココ?」
「それに妙に明るい。どこから光源が……」
飛び込んだ先の空間はそれなりに広かった。
岩肌の壁は、ここがあの炭鉱と地続きである事を如実に語っていた。
しかしそれにしては神秘的な雰囲気とでも言えばいいのか、炭鉱特有の空気の湿り気と言うかそういうものを感じない。とても澄んでいて呼吸に優しい。
身が清められそうな、そんな気さえする。
「埃っぽさもほっとんどないじゃん。何か不思議だねココ」
「一体誰が何の為にあんな仕掛けを……。自然に出来たなんていうのは無しにして欲しいもんだ」
先ほどまでの光は放たないものの、それでも美しさに陰りの見えないルビーを見る。
この空間に入るための鍵だったのだろう。いくらここがファンタジー世界でも、これが自然由来の仕掛けな訳が無い。誰かが意図的にこんなものを作ったんだ。
「さっきのお姉さん達の目的ってココだったワケなん?」
「そうかもな。少なくともこの宝石が鍵だって事は知っていたはずだ」
「ということは~……、この先にお宝があるとか! やっば、テンションアゲアゲになって来た! ねね、このままゴーしようぜ!」
「テンション上がるのは勝手だが、目的を見失うなよ? こんなわけのわからない宝石一つに踊らされて死ぬなんて俺はごめんだ」
「もう分かってるって。じゃあとりま……飯にしよ! ほらほら」
指輪からシートを取り出すと、この空間の真ん中にわざわざ陣取るように広げた。
はたから見れば無防備のように思えるだろう。俺も思う。
ただ怪しい気配的なものは感じない、気がする。
どのみち一旦休憩しないと体が持ちそうにない以上、栄養補給の余裕がある時は身を任せるべきという考えは理解できる。
シートの上に広げたのは、今朝宿で買っておいたサンドイッチだ。
旅の関係上いつでも魚が釣れるわけでもないのだから、水分と食料だけは余裕を持って常備しておく必要がある。
同じく宿で手に入れた水の入った水筒も加えて、喉と腹を乱すことにしよう。
「じゃあいっただっきまーす!」
「いただきます……」
◇◇◇
目つきの鋭いエルフの女性、ソラレは過去最高に苛立ちが募っていた。
目的とする赤い宝石があと一歩のところで再び遠ざかり、かと思えばこの炭鉱跡に大量にばらまかれていたからだ。
無論、本物は一つだけ。しかしこの大量に転がっている宝石が彼女の判断を逆なでして仕方がなかったのだ。
「くそ! どれだ、どれが本物なんだ!? ……あのガキ共がっ、どこまで人をコケにすれば気が済むんだ!!」
ソラレは焦燥に駆られ、いつもの強気な立ち振る舞いも忘れてしまっていた。
そんな彼女の苛立ちにあてられて、自らの冷静な判断力に自信を持つルシオロもこの状況に辟易していた。
「いい加減になさいソラレ……。貴女のその姿を見るとこっちまで嫌気が刺すわ」
「なんだと? そもそもお前がどこかで落とさなければ……」